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この異世界でも、ヤンデレに死ぬほど愛される なろう版  作者: 緋色の雨
第三章

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エピソード 3ー4 ……事後

 聖域にある泉のほとり。

 芝の上でおこなわれた、美少女二人の思いに応える狂宴は長くは続かなかった。


『いえ、あの……柚希くん? 狂宴は長くは続かなかったって……あれから二時間くらい経っていますわよ……?』

 ログウィンドウにメディアねぇのメッセージが表示される。

 それはともかく、狂宴が長く続かなかった理由について話そう。

 端的に説明すると、フェミニストの追加効果に、重大な欠点があったからだ。

 女性に危害を及ぼす考えすらなくなり、女性を傷つけないでおこうという考えに支配される。それがどういう結果を招くのか……

 イジワルをしない俺は、いまのローズやクラウディアにとって物足りなかったらしい。

 そんな訳で、狂宴は長くは続かなかった。



 そして――俺の目の前には、息も絶え絶えなアルミスが横たわっている。

 アルミスは俺の一撃で死んだ訳ではなく、衰弱していただけだったようだ。そうして身体の形を取り戻したのが少し前、らしいのだが……

 ちょうどその頃、俺の行動に物足りなさを感じていたローズとクラウディアは、フェミニストのランクを下げるべきだと話し合っていたらしい。


 そんなときに復活したものだから……アルミスは二人の餌食になった。

 もちろん、女神の眷属ではない二人に、アルミスに危害を与える術はない。けれど、フェミニストのスキルを所持していても、性的に虐めることが出来るように…………

 という訳で、俺は晴れてバッドステータスのスキルランクを下げる果実をゲットし、スキルダウン。俺の前の前には息も絶え絶えなアルミスが横たわっている。

 ――と言うことらしい。


 なお、さっきから伝聞なのは、フェミニストのランクがSSSになってからの記憶が曖昧で、あまり覚えていないからだ

 初めての体験で確証は持てないけれど、フェミニストの効果が俺の意志に影響を及ぼしている状態のときの記憶が曖昧になっていたのじゃないかと思っている。


 ……もっとも、メディアねぇに伝えた言葉なんかをハッキリ覚えている辺り、俺の推論は間違っている可能性があるけどな。

『え、柚希くん、その辺詳しくお願いします』

『だが断る』

『そんなぁ……。あぁでも、言いなりじゃない柚希くんの方がやっぱり素敵で……いえ、やっぱり教えて欲しいですわっ』

 ログウィンドウになにやら怒濤のごとくにメッセージが流れ始めるがスルー。自分の意志がメディアねぇに伝わらないように、意識的にブロックした。


 そうして、俺はステータスウィンドウを開き、バッドステータスの項目を確認した。

 フェミニスト:SSSとなっていた部分が、フェミニスト:Sとなっている。俺の意識が戻っているから大丈夫とは思っていたけど、無事にちゃんと下がっているようで安心した。

 もっとも、下がったのは2ランク。熟練度が蓄積しているのが、SSSの時でも同じだったとしたら、いまはSからSSに上がる寸前と言うことになる。

 このままなにもしなくても安心――とはいかないだろう。


 とはいえ、しばらく安心なのも事実。

 なので、いま考えなければいけないのは……と、俺は足下に視線を向けた。俺の足下では、アルミスが相変わらず、息も絶え絶えでぐったりとしている。


「……しかし、どうやったらこんな風になるんだ?」

「私達が飲まされた紅茶の残りを飲ませたんだよ?」

「……なるほど」

 感覚が何十倍にも引き上げられる秘薬入りの紅茶。それを飲まされた状況で、ローズやクラウディアの仕返しという名の拷問を受けた。

 さすがの精霊様も耐えられなかった……と。


 俺の目的は果たしたのだけれど、相手は仮にも王都にある聖域を守護する女神の眷属。どうしたものかと考えていると、少し離れたところで気絶していたフィーミアが身じろぎをした。


「うぅ……ん、ここ、は……? はっ! 皆様、大丈夫ですか!?」

 さすがは王女殿下付きのメイドと言うべきか、意識を取り戻すなり、俺達の探すように視線を巡らせた。もっとも、その振る舞いが凜々しかったのは、だらしない顔でぐったりとしているアルミスを見つけるまで、だったが。


「……ええっと、あの、精霊様は一体?」

「あぁ、色々あって撃退した。いまぐったりしてるのは、ローズとクラウディアが仕返しをしたからだ」

「……仕返し、ですか?」

「自分達が飲まされた紅茶を飲ませたらしい」

「ええっと……でも、危害は加えられないはずでは?」

「……性的なあれこれは、危害に入らないんだ」

「そ、そぉですか……」

 顔を引きつらせながらも、その後のことは追求してこなかった。さすが王女殿下付きのメイド……いや、関係ないかもしれないけど。


「ひとまず、アルミスをどうするか。フィーミアさんはどう思いますか?」

「えっと……それは、その……一度、国王陛下にご相談するべきかもしれません」

「……それには及ばぬ」

 困惑するフィーミアの声に応えるように、アルミスがむくりと起き上がった。俺はローズ達に危険が及ばないように警戒をした。


「そのように警戒せずとも良い……ユズキ様」

「……ユズキ様?」

 いきなりどうしたんだろうと、俺達は顔を見合わせた。


「最初は、なぜお主が我にダメージを与えられたのか分からなかった。けれど、落ち着いて考えれば、その答えは明らかじゃ。お主は、女神メディアの祝福を受けておるのじゃろ?」

「あぁ……まぁ、な」


 俺の動きが急に良くなったことから判断したのだろう。そのときに女神メディアの祝福を使用したのは事実なので、一応は頷いておく。

 実際には『女神メディアに見初められた』や『女神メディアの寵愛を受けた』なんてとんでもない称号まで持ってるんだけど……バレてなさそうだから黙っておこう。


「……ア、アルミス様、いま、なんと?」

 フィーミアが、目を見開いてアルミスに問いかけた。

「うん? ユズキ様が、女神メディア様の祝福を受けておると申したのじゃ」

「それは……本当なのですか?」

「うむ、疑いようのない事実じゃ」

 あまりおおっぴらにしたくはなかったけれど……アルミスを打ち倒した時点で、いずれはバレていただろう。こうなっては仕方がないと、俺は否定も肯定もしなかった。


「取り敢えず、アルミスが俺達に危害を加えないって言うのなら問題はないな。目的も果たしたことだし、王城に戻ろうか」

 ローズ達に向かって声を掛ける。


「そうだね」

「はい、ご主人様」

「かしこまりました」

「うむ、そうだな」

 ローズ、クラウディア、フィーミア。

 そしてアルミスまでもが同意する……って、いやいやいや。


「なんでアルミスまでついてくるつもりなんだよ」

「うん? 我は女神様の眷属だ。であれば、女神様の祝福を受けるユズキ様に付き従うのは当然ではないか」

「それっぽいことを言ってもダメだ」

 だって、フィーミアが凄く焦った顔をしている。

 そんな顔をしなくても、アルミスを連れていったりしないから安心しろ――と言うことで、俺は「アルミスを連れていくことは出来ないぞ」ときっぱりと言い切った。


「なんだと、どうしてだ?」

「どうしてもこうしても……アルミスはこの聖域の守護者なんだろ? なのに、アルミスが聖域を離れたら、大変なことになるじゃないか」

「問題ないぞ。ここが聖域なのではなく、我のいるところこそが聖域じゃからな」

 ……だったら問題ないのかな? なんて思ったりはしない。

 フィーミアは顔が真っ青だし、アルミスとセットで聖域をお持ち帰りなんてした日には、ブラッド家が反逆の罪に問われかねない。

 だが、ヤンデレ化しているアルミスは一歩も引き下がらない。


「ユズキお兄さんがダメって言ったら、ダメなんだよ」

 見かねたローズが口を挟んでくれた。

「しかしだな……」

「アルミス、またおしおきされたいの?」

「ひぅっ!? い、嫌なのじゃ! あんな責めはもう……うぅ、嫌なのじゃ!」

 ……なにやらトラウマになっているらしい。一体なにがおこなわれたのか……知りたいような、知りたくないような。


「取り敢えず、機会があったらまた来るから」

 泣きじゃくるアルミスがなんだか子供にしか見えなくて、可哀想になった俺は、そんな風にフォローを入れた。


「――ほ、本当じゃな!?」

「ああ。しょっちゅうは来ないと思うけど、また来るよ」

 試練で手に入る果実は、一人につき一度しか効果がないらしい。だけど、他にも色々と聞きたいことがあるし、もう一度くらいは来るつもりだ。

 そして、そのときは意識があるときに三人で――いやいや、そうじゃなくて。アルミスの持っている、感覚を何倍にも引き上げる秘薬の作り方を――でもなく。

 そう、ステータスウィンドウと全身の感覚を直結する魔法を…………なんか、この聖域、誘惑が多すぎじゃないですかね?


『柚希くんの煩悩が多過ぎなだけだと思いますよ? と言うか、その辺りのことなら、シルフィーも知っているはずですわよ?』

『でかしたメディアねぇ!』

『いえ、まぁ……良いんですけど。わたくしに対しても、それくらいガツガツきてくれても良いんですわよ? と言うか、来てくださいませんか?』


「さて、話はまとまったことだし、今度こそ王城に帰ろうか」

 なにやら、ログウィンドウが『柚希くんのイジワル。柚希くんのイジワル。柚希くんのイジワル。柚希くんのイジワル。柚希くんのイジワル』って埋め尽くされていくけど、スルーしておこう。さすがに、この程度じゃヤンデレとも思わなくなってしまった。

 むしろ、可愛いとすら思えてくる。


『――えっ!?』

 おっと、スルーし損ねてしまった。

 とにもかくにも、フェミニストの問題はひとまず解決した。王城に戻って、ラクシュ王女殿下の清楚でエッチなドレスの製作だ。

 

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