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この異世界でも、ヤンデレに死ぬほど愛される なろう版  作者: 緋色の雨
第三章

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エピソード 1ー4 突っ込み待ち

 アトリエでローズとテーブルを挟んで、ブラッド伯爵領で植物紙の技術を確立できるかどうかを話し合った。そして大まかな話をしたところで、詳細はブラッド伯爵家の当主、メアリーさんに相談して決めると言うことで話はまとまった。


「じゃあ……お母様に提案しておくね。それで……この後はどうするの?」

「この後は、カリンのところにいこうと思ってるんだ。だから、いまからエッチなことをしている時間はないぞ?」

「え、私はユズキお兄さんの予定を聞いただけだけど……?」

 ローズがきょとんとして首を傾げ……不意に嬉しそうに微笑んだ。ゴールドとブルーのオッドアイを細めて微笑む姿が可愛いけれど、俺は視線を引き剥がして無言で目をそらした。


「ユズキお兄さん……?」

「な、なんだよ、違うからな?」

「まだなにも言ってないよぅ」

「うぐっ。と、とにかく違うから!」

 ちょっと怒ったようにまくし立てる。だと言うのに、ローズは嬉しそうだ。


「そんなこと良ってぇ……本当は、ユズキお兄さんの方が、夜まで待たなきゃいけないこと、我慢出来なくなってるんじゃないの?」

「ぐぬぬ……」

 優越感に浸るような顔で、俺のことを見つめている。なにか言い返してやりたいけど、事実だから反論できない。――ので、夜になったら絶対にイジメてやる。


「……まったく、覚えておけよ」

「うんっ、楽しみにしておくね」

 ……うぅむ。さっきやり込められたお返しに、おしおきしてやろうと思ったんだけど……楽しみにされてしまった。……いや、俺も楽しみだけどさ。



 ――そんなこんなで、俺はローズを連れて、カリンのお店に行くことにした。アスファルトはもちろん、石畳もない。踏み固められただけの道を並んで歩く。

 午後の日差しが降り注ぐ、穏やかな道を歩くローズはなにやら楽しそうだ。


 そして……俺も楽しいと思っている。

 俺はずっとヤンデレを嫌っていて、ローズはそんなヤンデレ。最初はローズも他のヤンデレと同じ、自分勝手な女の子だと思って避けていたけど……ローズはそうじゃなかった。

 自分本位じゃなくて、俺のことを気遣ってくれる。

 いまも、隣を歩くローズは俺の腕を抱き寄せているけれど、そっと自分の胸に抱き寄せているだけで、俺の腕にぶら下がっている訳でもなければ、拘束している訳でもない。

 俺が少し腕を引けば、二人の繋がりはすぐに解けてしまうだろう。


 ローズは俺と腕を組みたいという願望を態度で示しながらも、俺を力尽くで束縛しようとはしない。ローズはヤンデレだけど、その辺の女の子よりずっと思い遣りがある女の子だ。

 だから、俺もローズと並んで歩くのは楽しい。これからも、ローズやクラウディアと一緒に、こんな風に生活が出来たら良いな……と、そんな風に考えながら道を歩く。

 そしてほどなく、俺達はカリンのお店の前にたどり着いた。


「ここがローズに見せたかったお店だ」

「……私に見せたかったの?」

 ローズは小首をかしげた。


「そうだけど……言わなかったっけ?」

「聞いてないよ?」

「そうだっけ……って、ならどうしてついて来たんだ?」

「ユズキお兄さんと一緒にお散歩できるからだよ?」

「~~~っ」

 可愛すぎかっ! と言うセリフは寸前で飲み込んだ。いつものエッチなローズではない。今日のローズはなんだか純情そうで、可愛いと口にするのが照れくさかったからだ。

 ――って、いかんいかん。まずはカリンのお店を紹介しないと。


「俺がローズを連れてきたのは、カリンのお店を紹介したかったからだ。ほら、ドレスに使った布、ローズも凄いって感心してただろ?」

「あ、もしかしてここで作られた布なの?」

「ああ。しかも、他にも珍しい布がたくさんある。俺が新しい服を作るのにも絶対に必要になるから、カリンの店にも資金援助をして欲しいんだ」

「あの生地を量産するために必要なら、もちろんかまわないよ」

「メアリーさんに確認を取らなくて大丈夫か?」

「服飾については、ある程度の決定権をもらってきたからね。ただ、どれくらいの規模で資金援助をするかはお母様と話し合うから、まずは自分の目で確認させてもらっても良いかな?」

「もちろん。と言うことで、まずは中に入ってみよう」



 扉を開けて「お邪魔します」と声を掛けると、店の奥から慌ただしい物音が響いた。

「その声はユズキにーさん。大丈夫、倉庫にはベッドも設置してあるよ!」

「……お前はなにを言っているんだ?」

 店の奥から飛び出してきたカリンに呆れ眼をぶつける。


「なにって、ユズキにーさんとクラウディアが、うちの目を盗んで、倉庫でねっとり濃厚なプレイを出来るように、ベッドを設置しておいたっていう話やけど?」

「……話やけど? じゃねぇよ。そこまで言ったら、コッソリってレベルじゃないだろ」



「そこは、にーさんの手腕でなんとか。うちを目覚めさせた責任、取ってくれへんと」

 たしかに、カリンが盗み見している状況でクラウディアにあれこれして、カリンの新しい扉を開いたのは俺なんだけど……


「言いたいことは分かるけど、あからさまなのはダメだ。それじゃ、クラウディアが見られるかもってスリルを楽しめないだろ」

 クラウディアはあくまで、見られるかもしれない状況に興奮してしまうだけであって、見られたがっている訳ではないのだ。

 もちろん、一度燃え上がってしまえば、その限りではなのだけれど……とにかく、お膳立てしているような状況じゃダメだと力説する。


「……たしかにそうやね。ごめんな、ベッドはちゃんと片付けておくわ」

「分かったなら良いんだ。今度、マジックミラーを用意してやるから元気出せ」

「魔法の鏡……って、なんやの?」

「前面から見たら鏡だけど、裏面から見たら透明に見える鏡だ」

「……え、そんな鏡があるん?」

「ああ。本当の魔法の鏡ではないんだけどな」

「なら、その鏡で……もしかして?」

 期待に満ちた顔で俺を見る。そんなカリンに向かって、俺は悠然と頷いて見せた。その瞬間、カリンの顔が歓喜に染まる。


「おおおおぉ、さすがにーさん。そういうことなら、設置場所の準備は任せておいてや!」

「おう、マジックミラーの準備は任せておけ」

 二人っきりだと安心させておいてから、実は鏡の向こうから……と暴露する。そのときのクラウディアの反応を想像するだけで興奮する。

 ……って、違う。今日はそんな話をしに来たんじゃない。俺はコホンと咳払いを一つ。「今日は紹介したい人を連れてきたんだ」と、後ろに控えていたローズを紹介する。


「初めまして、カリンさん。私はユズキお兄さんの性奴隷です」

「いやいやいや、その自己紹介はおかしいだろ?」

「……え?」

 どこかおかしかった? とでも言いたげに、無邪気に首を傾げられてしまった。


「いや、ローズが俺の性奴隷なのは、今更否定したりはしないけどな。この状況に応じた自己紹介はそうじゃないだろ?」

 お店に入る前に、カリンの店に資金援助をして欲しいと言ったのだから、自己紹介は領主の娘を強調するに決まっているだろと呆れる。


「ユズキお兄さんとカリンさんがエッチな話をしていたから、私も性奴隷だって名乗った方が良いのかなって思ったんだけど……」

「すみません、俺が悪かったです」

 さっきまでのやりとりを思い出して反省する。最近ちょっと、頭の中がお花畑過ぎる気がする。俺は今度こそと、もう一度咳払い。カリンへと視線を戻した。


「ローズはブラッド伯爵家のご令嬢なんだ」

「えぇっ!? それじゃあ……」

「うん。以前にも言ってたけど、支援を――」

「にーさんは領主の娘を性奴隷にしてるん!?」

「――そうなんだけど、色々事情があるんだよ。だから、そろそろ真面目な話をさせてください、お願いします。見境なくて済みませんでした――っ」

 わりと本気で反省した。



「――コホン。とにかく、隣にいるのが俺のエッチな性奴隷で、グラン島を統治する領主の娘だから、資金援助をしてもらおうと思って連れてきたんだよ」

「……にーさん、なんや、むちゃくちゃ鬼畜に聞こえるんやけど」

「うっさい。言われなくても分かってるから」

 開き直って真面目モードになった俺は、カリンの戯れ言を一蹴した。


「一応確認しておくけど、資金援助を受けるのが嫌だったりするのか?」

 ブラッド家から資金援助を受けると言うことは、ブラッド家の傘下に入ると言っても過言ではない。それが嫌なのかと思ったのだけど、カリンは「そんなことはあらへんよ」と答えた。


「うちの作った生地を、クラウディアが洋服にする。そうして出来た服をたくさんの人に着てもらう。それがうちの夢やからね。その妨げにならへんのやったら、問題はないよ」

「そうか……」

 ウェルズ洋服店が多くの服を作るために、多くの生地を必要としている。だから、生地を量産するための環境を作ることには賛成だと言うことだろう。


「ローズは、このあいだのドレスに使った生地を気に入ってくれたんだ。それで融資を考えてくれているんだけど、まずは他の生地を見せて欲しいそうだ」

「そういうことなら、倉庫に案内するわ。……ローズ様、こっちへ来てください」


 ようやく真面目モードになったカリンに誘導されて、様々な生地がしまわれている倉庫へと移動する。個人のお店としてはわりと大きな倉庫に――ドカンと置かれているピンクのベッドはスルーするとして、まずは棚に並べられている生地に目を向ける。


「……また種類が増えてないか?」

 ドレスに使えそうなレース各種のサンプル生地が並んでいる。生地の織り方は専門外であまり知らないのだけれど、ずいぶんと手間が掛かりそうな生地である。

 それに、こっちは――


「シフォン生地、だと!?」

 シフォン生地――シフォンケーキの生地ではない。いわゆる薄くて透ける布のことである。

 シフォン生地があれば、透けるブラウスやネグリジェなんて定番はもちろん、禁断の透けるスカートも作ることが出来る。……あぁ、妄想が止まらない。


「カリン、これらの生地の在庫はあるのか?」

「残念ながら、そこにあるのはサンプルだけやよ」

「生産は厳しいか?」

「そうやね。にーさんなら分かると思うけど、それらの生地はかなり編むのが大変なんよ。せやから、専用の織機を作らんと、量産するのは厳しいと思うわ」

「そう……か」

 家族だけで営む生地屋さん。仮に織機があったとしても、人員も増やす必要がある。やっぱり、資金援助は不可欠だな。


「……ローズ、どうかな? これらの生地が量産できれば、俺が作る服の幅も一気に広がると思うんだけど」

「……凄いね。見たこともない生地ばかりだよ。綺麗なデザインだし、手触りも普通の生地よりずっと良いね。――量産するのに必要な資金の見積もりを出していただけますか?」

 後半はカリンに向かって尋ねた。そして、それを聞いたカリンが目を見開く。


「えっと、それは……あの、資金援助をしてくれるいうことなんですか?」

「ええ、そのつもりです。ただ、いくつか条件があります」

 前置きを一つ。ローズが出した一つ目の条件は、カリンのお店で制作した生地の販売を、ブラッド家に一任するというものだった。

 それはつまり、他の貴族から高額で売って欲しいと言われても、ローズがダメだと言えば売ることが出来ないと言うこと。それを聞いたカリンは考える素振りを見せた。


「確認なんですが、ローズ様は、ユズキにーさんの性奴隷なんですよね?」

「え、はい。今夜も可愛がってもらう予定ですけど?」

 ローズはそれがどうかしたのかと小首をかしげる。色々とおかしいのだけど、それを突っ込む人間はこの場にはいない。なので、俺が後で突っ込むことにする。

 それはともかく、カリンはローズから視線を外し、俺に確認するような視線を向けてきた。

 察するに、いまの条件を呑んでも、ちゃんと俺――つまりは、クラウディアに布が届くのかという確認だろう。


「ローズは、ウェルズ洋服店にも資金援助を約束してくれてるから大丈夫だよ」

 ウェルズ洋服店と、カリンの生地をワンセットで考えてくれているので、仮に性奴隷云々がなかったとしても、カリンの生地がクラウディアに届かないことはありえない。

 そんな俺のセリフに込められた意味を、カリンと同時にローズも理解したようで「あぁ、それを心配していたんですね」と穏やかに微笑んだ。


「生地の卸先は、ウェルズ洋服店を第一に優先すると約束します。そもそも、当分はウェルズ洋服店にだけ下ろしていただく予定なので、ご安心ください」

「そういうことなら問題ありません」

 カリンがホッと息を吐く。だけど、ローズがいくつか条件があると言っていたことを思いだしたのだろう。すぐにきゅっと唇を引き締めた。


「それで、二つ目の条件というのは?」

「二つ目は難しいことじゃありません。どれくらいの規模で資金援助をするかは、お母様と話し合って決めたいので、生地のサンプルをいただきたいのです」

「あぁ、そういうことでしたら、好きなだけサンプルを持って帰ってください」

「ありがとうございます。それじゃ、サンプルをいただきますね」


 ローズはそう言って、いくつかの生地をサンプルとして確保していく。これで洋服の量産に必要な下準備は終わった。

 後は――と、俺は他の棚に視線を向ける。先ほどの棚にあったのはサンプルだけだけど、別の棚には前からあった生地がそこそこ残っていた。


「あっちの生地を売れるだけ売ってもらっても良いか?」

「え……? それはもちろん、かまへんけど。また新しいドレスでも作るんか?」

「ああ。いくつか注文があるのと、今後のために確保しておこうかなと思って」

 ローズのドレスを作った代金を多めにもらったりしているので、生地を買うお金には少し余裕がある。と言うことで、俺はいくつかの生地を購入した。

 

 

 いま、無自覚吸血姫や無知で無力な村娘も同時に更新してるので、投稿前の推敲してると思うんですよ。なんで、異世界ヤンデレだけこんなに下ネタが多いの? ……って。


 それと、異世界ヤンデレ一巻は2月28日発売です。

 大判なので、ラノベ新刊コーナとは違う場所にあったりするかもしれませんが、早売りのお店だと、明日くらいから売ってると思うのでよろしくお願いします!

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