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この異世界でも、ヤンデレに死ぬほど愛される なろう版  作者: 緋色の雨
第三章

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エピソード 1ー3 ローズとの共存関係

 最近、緋色はユズキが妬ましくて仕方ないです。

 ということで、八つ当たり用の壁のご用意をお勧めします。

 それと明日の夜8時に、ノクタ版で机の下の続きをアップします。

 

 うららかな日の昼下がり。俺がアトリエで新しい服のデザインを考えていると、扉がこんこんとノックされた。そしてそれに答えると、煌めく金色が部屋に舞い込んできた。

「ユズキお兄さん、会いたかったよ~」

 金髪ツインテールを揺らしながら駆け寄って、俺にギューッとしがみついてくる。ブルーとゴールドのオッドアイを持つ美少女は、グラン島を統治するブラッド家のご令嬢――


「えへへ、ユズキお兄さんの性奴隷だよぉ~」

 ブラッド家の――

「ユズキお兄さんの、エッチなエッチな性奴隷だよぉ~」

 ……部屋に入ってきたのは、俺の性奴隷であるローズだった。


 ローズはスリスリと、俺の胸に顔をこすりつけてくる。まるで、自分の匂いで俺にマーキングをしようとしているみたいだ。

 その姿は可愛いんだけど……いかんせん、言ってることがおかしい。

 俺はローズを性奴隷にするつもりなんてなかったのに、ローズが自称しまくった結果、いつの間にか既成事実化してしまった。


 もっとも、性奴隷だろうが愛人だろうが恋人だろうが、やることは変わらないので、呼称なんてどうでも良い。幸いなことに、ローズの母親でブラッド家の当主であるメアリーさんもなにも言ってこないしな。……そこはなにか言うべきだろうと思わなくもないけれど。


「くんくん、ユズキお兄さんから、クラウディアの匂いがするよ?」

 俺を見上げて、唐突にそんなことを言う。ローズは重度のヤンデレなので、こんなセリフを言われたらバッドエンドまっしぐら――と思うかもしれないが、その心配はない。

 ローズはたしかにヤンデレだが、相手の気持ちを考えられるヤンデレなのだ。という訳で、俺は慌てず騒がず、朝から一緒に作業をしていたからなと答えた。


「そっか、朝から一緒だったんだね」

「うん、そうなんだ」

「そっかそっか。でも、ダメだよぉ。エッチを作業だなんて言い方しちゃ」

「……え、な、なにをおっしゃっているのでしょうか?」

 上手く言い逃れたと思っていた俺は、不意打ちにぎくりと身をすくめた。俺に抱きついているローズは、それをダイレクトに感じ取ったはずだけど……そこに浮かんでいるのは笑顔。


「だぁ~かぁ~らぁ~、朝からクラウディアとイチャイチャしてたんでしょ? ユズキお兄さんから、クラウディアの甘い匂いがしてるよ?」

「んなっ!?」

 ハッタリだ! とは言えなかった。ローズは嗅覚がずば抜けて優れている。船内を逃げる俺を、匂いをたどって追いかけてきたことは記憶に新しい。

 という訳で、俺は冷や汗を流したのだが――ローズはそんな俺の汗を指で拭うと、俺の耳にその小さな唇を押し当て――


「いまから、私にも、して、欲しいなぁ……?」

 ローズの唇からこぼれた甘ったるい声。そして、紡がれた内容に、俺はぞくりと身を震わせる。と言うか、ローズの貴族服は胸もとが開いているので、見下ろすとかなりそそる。

 そのお誘いに乗って、今すぐに襲いかかりたいところだが――あいにくと、仕事が残っている。特に、ローズのためにもなることなので、後回しにする訳にはいかない。

 ということで、俺は涙を呑んで煩悩を振り払った。


「悪いけど、いまはダメだ」

「そんなこと言わずに。お願いだから……ね?」

 オッドアイの瞳が、俺をじっと見上げてくる。その濡れた瞳を見つめていると、いまはダメだという気持ちが急に萎んで――って。


「こら、ローズ。魔眼を使っただろ?」

「えぇ? そんなの使ってないよ。と言うか、約束してないでしょ?」

「あれ……そう言えば、そうだな」

 ローズの金色の瞳は、約束したことを履行させる魔眼。急に、従わなきゃダメだって気持ちになったから、魔眼の力だって思ったけど……たしかに条件を満たしていない。

 念のためにとステータスウィンドウも確認するけれど、そういった痕跡はなかった。


「私はもう、むやみに魔眼を使ったりしないよ? ユズキお兄さんが、私を置いて行こうとしたりしない限り、だけど」

「し、しないしない、そんなことは絶対にしないから」

 怪しげに輝く金色の瞳を目の当たりにした俺は、ぶるりと身を震わせた。

 最近は俺がローズを受け入れているから忘れがちだけど、ローズは重度のヤンデレ。扱いを間違ったら惨劇が起きるかもしれないことは、決して忘れないようにしないと――と、自分に言い聞かせる。


「ユズキお兄さんが誘惑されそうになったのなら、それは、私とエッチなコトをしたいって思ってくれてるからじゃない?」

「……いや、まあ……それは否定しないけど」

 さっきの感覚は、魔眼の効果を受けたときと同じ感じだったんだけどなぁ。でも、効果が発生してないのは事実だし、たぶん俺の気のせいだろう。


「それで……私のこと、可愛がってくれるの?」

「さっきも言ったけど、いまはダメだ。その代わり、今夜はたっぷり可愛がってやる」

「~~~っ。うん、楽しみにしておくね」

 身を震わせたローズは頬を染め、恥ずかしそうにしながらも微笑む。その姿が可愛い。可愛いが――伯爵令嬢がこんなにエッチに染まってしまって大丈夫なのだろうか?

 ……なんて、自重するつもりも、させるつもりもないのだけれど。


「そうと決まれば、さっさと仕事の話を終わらせてしまおう」

「うん。そうだね。まずは……私の方から済ませても良いかな?」

「ああ、かまわないよ」

 俺に抱きついていたローズは身を離し、蕩けきっていた表情を引き締めた。

 相手のことをちゃんと考え、やるべきことはちゃんとこなす。相手の都合を考えない普通のヤンデレとは違う。俺がローズを受け入れている理由の一つだ。


 俺もローズとちゃんと話をするべく、作業用の席から立ち上がってソファに移動。ローズと向かい会うように席に座り直した。

 ちょうどそのとき扉がノックされ、従業員の女の子がテーブルの上にお茶菓子を並べていく。まるで見計らったようなタイミングだけど……実際に見計らったんだろうなぁ。

 あのままおっぱじめなくて良かった。

 サーシャへのおしおきや、リスティスちゃんとの浮気未遂が噂になり、俺はわりと好色で鬼畜だというデマが……いや、あながちデマと言えないかもしれないけど。

 とにかく、従業員にこれ以上変な印象を持たれるのは困るからな。なんてことを考えながら、従業員が退出していくのを見送る。


 そうして、あらためて出されたお茶菓子に目を向けた。ジャムが添えられたスコーンと、カップに注がれている琥珀色の液体は……紅茶みたいだな。

 この世界にも紅茶があったのか――と感動しつつ、俺は出された紅茶をローズに勧め、自分も一口飲んで喉を潤す。その瞬間に思ったのは――渋いと言うこと。

 どう考えても蒸らしすぎ。これをローズに飲ますのは不味いと思ったのだけど、俺が止めるより早く、ローズはティーカップに口を付けてしまった。

 だ、大丈夫かな? なんて感じで見守るけれど、ローズは特に気にした様子もない。


「……どうしたの? そんなにじっと私を見つめて」

「いや、その……その紅茶の味はどうかなと思って」

「え? 普通の茶葉を使った、普通の味だと思うけど……?」

「なん、だと……」

 もしかして、俺の紅茶だけが渋い? 俺は既に従業員の女の子達から、好色で鬼畜な野郎として嫌われている……? なんて愕然としていると、ローズが「もしかして……」と、俺のティーカップを手に取って、口に付けてしまった。


「……なんだ、こっちも同じ味じゃない」

 ローズはティーカップを俺の前に戻して、表情をほころばせた。

 どうやら、俺が嫌がらせを受けてる訳じゃないようだ。良かった――って、良くねぇよ。俺の紅茶と、ローズの紅茶が同じ味。それなのに、疑問に感じないって……どういうことだ? 

 どう考えても蒸らしすぎだろ。もちろん、飲めないレベルじゃないけど……と、俺は再び自分の紅茶をこくりと一口。……やっぱり渋い。

 どうなってるんだと、ローズのティーカップを取って一口飲むと、こちらも渋かった。


「えっと……ローズ的には、この紅茶の味は普通なのか?」

「うん、普通だよ?」

「渋いとは思わないか?」

「渋いとは思うけど……紅茶って、そういうモノじゃない?」

「なるほど……」


 俺もそこまで詳しい訳じゃないけれど、紅茶は水や蒸らす時間の他にも、紅茶を入れる道具によって、美味しさが大きく変わると聞いたことがある。

 この世界ではおそらく、紅茶を入れるための技術が発展していないのだろう。


「……ユズキお兄さん?」

「いや、なんでもないよ。ちょっと俺の思っている紅茶と違ったから驚いただけだ」

 ひとまずは保留だな。美味しい紅茶は飲みたいけど、別に紅茶が不味くても俺の異世界生活に支障はない。まずは必要なことからクリアしていこう。


「紅茶の話より、ローズの用事はなんなんだ?」

「あぁ、そうだったね。まずはウェルズ洋服店への支援の件。このあいだユズキお兄さんから希望のあった、資金援助については問題なかったよ」

 俺が求めた援助というのは主に、洋服店への資金援助と、あれこれ流通の改善。


「資金援助については大丈夫だったと言うことは……」

「うん。流通の改善案については保留だって」

「そっかぁ……」


 流通というのは主に、大陸との交易のことだ。

 ブラッド領はグラン島という島で、大陸にある一番近い港が、なにかとやりあっているケイオス領にある。なので、交易に制限を掛けられて不便しているらしいのだ。

 特にウェルズ洋服店はケイオス伯爵家の長男であるアレスに喧嘩を売ったことになっているので、既にあれこれ締め付けをくらっている。そういった事情もあって、他の街と交易するための案をいくつか提案したのだけれど、ダメだったらしい。


「私も頑張って説得したんだけど……ごめんね?」

「いや、それは仕方ないと思うけど……でも、俺よりブラッド家が困るんじゃないのか?」

 妨害を受けているのは、なにもウェルズ洋服店だけじゃない。いまは嫌がらせのレベルだけれど、最悪は全ての交易が止められる可能性だってある。


「もちろん、対策はしているよ。それに、ユズキお兄さんの提案は、ちゃんと有用だって判断されたの。ただ……そこまで余裕がないって言うのが本当のところみたい」

「なるほど、ね」


 俺がこの世界に転生するずっと前から、じわじわとあれこれ嫌がらせを受けていた。そんなブラッド伯爵領は、俺が思っている以上に疲弊しているのだろう。

 そして、ケイオス伯爵自身の目的は分からないけれど、その長男であるアレスはローズのことを狙っている。今のうちに対策を立てないと、ローズの身に危険が及ぶかもしれない。


「アレスの件はどうなっているんだ?」

 俺はこれ幸いと、かねてより気になっていたことを尋ねる。

「ユズキお兄さんは心配しなくても大丈夫だよ」

 ローズは言い淀むことなく答える――が、だからこそ怪しい。あれだけちょっかいを掛けられていて、なんの問題もないなんてことはありえない。

 そして、ユズキお兄さんは心配しなくても大丈夫と言うローズのセリフ。大丈夫と言っても、なんの問題もないとは言っていない。


「ローズ、正直に教えないと今夜――」

「――実はウェルズ洋服店が受けているような嫌がらせが、他にもいくつも見つかったの。それに、交易の締め付けも少しずつ大きくなってる見たい」

 ……堕ちるの早かったな。いや、既に堕ちているだけか。


 それはともかく、予想通りあれこれ嫌がらせを受けているんだな。

 同じ伯爵家であることを考えれば、ブラッド家が簡単に屈したりはしないと思うけど、ローズを強引に攫おうとしてきた件もある。

 なんとかしなきゃいけないけど……俺はあくまで一般人で、政治的なことに口を出せる立場にはない。俺に出来ることはせいぜい、服飾などで成果を出して、ブラッド伯爵領に貢献することくらいなんだけど――


「あぁ、そうだ。ローズにプレゼントがあるんだ」

「えっ、ユズキお兄さんが私にエッチなプレゼント!?」

「エッチなとは言ってねぇよ」

 というか、否定した瞬間、なんだかがっかりされてしまった。そんなにエッチなプレゼントが良かったのかというか、普通のプレゼントじゃ喜んでくれないのかとがっかりする。


「冗談、冗談だよ。ユズキお兄さんからもらえるなら、たとえエッチじゃないプレゼントだったとしても凄く嬉しいよ」

「いやまぁ……良いんだけどさ」

 なんとなく、たとえ欲しい物じゃなくても、好きな人からのプレゼントなら嬉しい――って類いの慰めに聞こえる。


「ホントに冗談だってば。ねぇねぇ、私、ユズキお兄さんのプレゼントが気になるなぁ」

「分かった分かった。えっと、たしか……っと、あった」

 俺は作業用の机の引き出しをあさり、彫刻が施された木の板を取り出し、ローズに向かって差し出した。


「わぁ……綺麗な彫刻がしてあるけど……これは?」

「それは開いて使うんだ」

「えっと……あ、こうだね。木の枠に……白いの? これは……蝋かな」

「それは蝋板って言って、そこに付属している鉄の棒で引っ掻いてメモを取るんだ」

「メモってことは……これって、メモ帳なの?」

「そうだよ。しかも、蝋を熱で溶かしてならせば、またメモを取り直せるんだ」

「……メモを取り直せる」

 ローズは俺の言葉を反芻し、ほどなく――ぱーっと、顔を輝かせた。


「凄いっ、これ、凄いよ、ユズキお兄さん!」

「気に入ってくれたなら良かったよ」

「もちろん、凄く気に入ったよ。ありがとう。ユズキお兄さん、大好き!」

 サーシャが知らなかったから大丈夫だとは思ったけど、貴族のあいだではありふれている可能性もあったからな。ローズが喜んでくれて良かった。

 ちょっとしたサプライズプレゼントになったかなと、軽い気持ちで考えていたのだけど――


「ねぇねぇ、ユズキお兄さん、これ、この……蝋板? これ、ユズキお兄さんが考えたの?」

「いや、そういう訳じゃないけど……どうしてだ?」

「ユズキお兄さんが考えたのなら、ブラッド家の紋章を刻印した蝋板をたくさん生産させてもらおうかなって思って」

「あぁ……売るつもりか? でも、すぐに類似品が出回ると思うぞ?」


 板で作った枠の中に、蝋を流し込んであるだけ。作るのは簡単だから、すぐに模造品が出回ってしまうだろう。そしてなにより、便利アイテムなので誰でも使えるようにしたい。

 そんな風に思ったのだけれど、ローズはお金儲けが目的じゃないよと笑った。


「お金儲けじゃなかったら、なにが目的なんだ?」

「んっとねぇ。グラン島には面白い物があるって実績を作りたいの」

「……うん? あぁ、そういうことか」

 ブラッド家の紋章を付けて、蝋板を全国に輸出する。この世界では画期的なメモ帳である蝋板はあっという間に全国に広まるだろう。


 もちろん、すぐに模造品が出回るが、最初にブラッド家が広めたという実績は残る。そうして、グラン島には面白い商品があるという印象を抱かせる。

 それを、交易を活性化させるための呼び水にするというのだろう。


「そういうことなら、ぜひブラッド家の紋章を付けて広めてくれて良いよ」

「気持ちは嬉しいけど、ユズキお兄さんが思いついた訳じゃないんだよね?」

「いや、たしかにそうなんだけど、ローズが知らなかった以上は、この世界で蝋板を作ったのは、たぶん俺が初めてだよ」

「どういうこと?」

 ローズはコテンと首を傾ける。


「前に教えただろ。俺が異世界から来たって」

「あ、そっか。それじゃ……蝋板って言うのは、ユズキお兄さんが前に暮らしていた世界では、普通に使われていたんだね」

「え、いや……前の世界で、普通に紙がたくさんあったからな」

「ユズキお兄さんが暮らしていた前の世界は、動物がたくさんいたの?」

 金色のツインテールを揺らして、コテンと首を傾げる姿が可愛らしい。


「俺の世界には、植物紙という紙が大量にあったんだ」

「……植物紙?」

「ああ。文字通り植物の繊維で作った紙。破けやすいという欠点はあるけど、羊皮紙よりずっと軽くて薄い。そして安価になり得る紙だ」

 破けやすいと言うことは、重要な文章の保存には向いていない。けれど薄くて軽いということは、一時的に多くの文章を保存するという面では圧倒的に優れている。

 なにより、生産方法さえ確立してしまえば、羊皮紙よりもよほど安価に生産できる。


「そんな紙が……」

 領主の娘としての教育を受けているローズは、先ほどの説明だけで植物紙の有用性に気付いたのだろう。ローズは左右で光彩の異なる瞳を大きく見開いた。

 そして、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


「……ユズキお兄さん。その紙の作り方を、私に教えては……?」

「もちろん、教えるつもりだよ」

「――ホント? ホントに良いの!?」

 テーブルに手をついて身を乗り出した。ローズの可愛い見た目に反して、暴力的な胸の谷間が俺の目のために飛び込んでくる。

 ……うぅん、また少し大きくなったな――じゃなくて。えっと……なんの話だっけ? そうそう、紙の作り方の話だった。


「俺の用事が、まさにそれなんだ。ローズ……と言うか、ブラッド家主体で、植物紙を量産して欲しいと思ってる」

「それは……凄く嬉しいけど、良いの? ユズキお兄さんが自分で作れば、巨額の富が転がり込んでくるはずだよ?」

「いや……それは無理だよ。植物紙の作り方を知っているといっても、細かい技術まで理解している訳じゃないんだ。だから、完成させるには相応の資金や人員が必要になる」


 前世の俺はただの学生で、しかもヤンデレに振り回されていた俺は学業に専念することが出来なかった。紙の作り方なんて、テレビで見たことがあると言ったレベルでしかない。

 だから、上質な植物紙を再現することは出来ない。なんとなくそれっぽい紙を作った後は、試行錯誤しながら作っていくことになるだろう。


 それに、たとえ紙を再現できたとして、俺には流通に乗せる手段がないし、量産する力もない。少なくとも、ウェルズ洋服店が単独でこなすのは絶対に不可能だ。

 もちろん、バーク商会などに話を持ちかければ、実現はできるかもしれない。

 けれど、ゼムがどこまで信頼できるかは不明だし、そもそも他人の力を借りるのであれば、ブラッド家を避ける理由がない。

 なにより――


「俺の願いは、ブラッド家が豊かになって、ウェルズ洋服店をいまよりも援助してくれること。そのために、植物紙の技術を提供したいと思ってる」

「それは……もちろんだけど。それじゃ、うちが有利すぎると思うんだけど」

「良いんだよ。そもそも、ローズは俺のエッチな奴隷なんだろ? だったら、ブラッド家が豊かになるのは、俺が豊かになるも同然じゃないか」

 なんて、もちろん建前だ。

 実際のところ、ブラッド家が豊かになっても、その資金をローズが好きに使える訳じゃない。だから、俺が豊かになるも同然――ということはない。

 だけど、ブラッド家が力を付けないと、またローズがアレスとかに狙われるかもしれない。

 それが嫌だから、ブラッド家に力を付けて欲しい――とは、恥ずかしいので口にしない。だけど、口にするまでもなく、十二分に伝わってしまったのだろう。

 ローズは頬を赤く染め、嬉しそうに微笑んだ。


「えへへ……今夜はたくさん……たぁくさん、ご奉仕、して、あげるね」

「はいはい、楽しみにしておくよ」

 俺は照れ隠しにそっぽを向いた。

 

 

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