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エピソード 1ー3 ローズと夜の攻防

 薄暗い部屋。俺は両手両足を縛られ、ベッドの上に寝かされていた。


「むが――っ!?」

 なにこれどういう状況!? と叫ぼうとするが、猿ぐつわを噛まされていてしゃべれない。


「……ふふ、ユズキお兄さん、ようやく起きたんだね」

 焦る俺のすぐ上から、無邪気な声が降ってきた。


 首をひねって視線を向けると、横向きで俺を見下ろすローズの顔が目の前にあった。一瞬混乱したけど、ローズに膝枕をされているみたいだ。


一体(いっひゃい)どういうつもりだ(どうひゅうひゅもりだ)!?」

「ふふ、なにを言ってるか分からないよ」

 ローズは微笑んで、俺の猿ぐつわを外す。


「こんなことをして、どういうつもり――むぐっ!?」

 しゃべれるようになって苦情をまくし立てたら、また直ぐに口を塞がれてしまった。


 ――ただし、猿ぐつわではなく、ローズの小さな唇によって。……って、キス? キスされてる!? なに、どういうこと!? 

 思いっきり混乱するけど、両手両足は拘束されていて抵抗できない。


「……ん。ちゅ……はぁ……」


 数十秒か、数分か。ローズは好き勝手に俺の唇をむさぼり、ようやく唇を離した。俺とローズの唇のあいだに、透明の糸が引く。

 思わず息を止めていた俺は、慌てて呼吸を始めた。


「はぁ、はぁ……ローズ、なにを……?」

「ふふっ、私のファーストキスだよ。一生の思い出にしてね?」

「……言われるまでもなく、一生忘れられそうにはないけどさ」


 幸か不幸か、俺だってファーストキスだ。しかも、薄暗い部屋手足を縛られた状態で、年下の金髪美少女に無理矢理に唇をむさぼられる。

 そんな体験、忘れたくても忘れられない。


「……それで、俺はどうして拘束されてるんだ? 説明する気があるのなら、理由を教えて欲しいんだけど」

 声を荒げてまた唇を塞がれては困るので、俺は極力声のトーンを抑えて尋ねる。そんな俺の問いかけに対して、ローズは無邪気な、本当に無邪気な微笑みを浮かべた。


「ユズキお兄さんが悪いんだよ? 家にいて欲しいってお願いしたのに、それを断ったりするから。だから……仕方ないよね?」

「はっ、自分の思い通りにならないからって、閉じ込めようって言うのか」


 ローズの言葉を聞いて、俺は少し腹が立った。

 自分の思い通りにならないからって、相手の意思を無視して無理矢理に思い通りにしようとする。そんなのは、俺が知ってる他のヤンデレと同じだ。


 ローズは他人を思いやれる、普通の女の子かもって思ったけど……俺の勘違いだった。だから、ローズのことを少しでも信じた自分に腹が立つ。

 そうして憤る俺を、ローズがじっと見下ろしている。


「……なんだよ?」

「ユズキお兄さんは、怯えないんだね」

「……十分怯えてるさ」


 なんてな。俺は今までにも似たような恐怖体験をしたことがあるし、最悪殺されても復活できるという安心感がある。


 ついでに言えば、精神力がAAAに加えて恐怖耐性がBなので、恐いという気持ちが抑制されているんだろう。実際のところ、恐いとは思っていなかった。

 もっとも、それをローズに教えてやる義理はないのではぐらかしておく。


「怯えているなんて言って、震えてすらないじゃない。やっぱり、ユズキお兄さんは最高だよ。初めて見たときから、私の運命の人だって、思ったんだよ?」

「運命の人、ねぇ……勘違いじゃないか?」

 嫌みっぽい口調になってしまったけど、わりと本心だ。


 俺にはヤンデレに死ぬほど愛される:SSSがあるので、ヤンデレの女の子にはなんらかの影響を及ぼしている可能性が高い。


 純粋な好意なら嬉しいとは思うけど……スキルが原因で好かれてるのだとしたら、嬉しいとは思えない。まぁ逆に、悪影響を与えてるのだとしたら、申し訳ないとは思うけどな。


「せっかく私と一緒なのに、なんだか嬉しくなさそうだね」

「……手足を拘束された上に監禁されて、それを喜ぶような性癖は持ってないからな」

「それはだって、ユズキお兄さんが強いからだよ。これから、ユズキお兄さんが私のところにいてくれるように説得するつもりなのに、自由にして逃げられたら困るもん」

「逃げないって言ったら、拘束を解いてくれるのか?」

「……約束してくれるの?」


 ローズが光彩の異なる二つの瞳で、じっと俺の目を覗き込んでくる。俺が本気でそう言っているのかどうか、見透かそうとしているかのようだ。


 でもそれは逆に言えば、本気だと信じ込ませることが出来れば、この拘束を解かせることが出来るかもしれないと言うこと。

 俺はローズの瞳をまっすぐに見返して、約束すると頷いた。


「……じゃあ、拘束を解いても、私の言うことを聞いてくれる? この部屋から出ないって、約束してくれる?」

「ああ、約束する(、、、、)


 嘘の約束を交わした瞬間、まるで魂を売り渡したような錯覚を抱いた。

 でも、俺はヤンデレの女の子に部屋で飼われる生活なんてまっぴらなので、素知らぬ顔で嘘を突き通す。ほどなく、ローズは「約束だよ」と微笑み、俺の手足の拘束を解いてくれた。

 ……ちょろい。


 でも、内心でそんなことを考えているそぶりは決して見せないように注意する。焦って逃げようとして、捕まったら意味がないからな。

 俺はまず身体を起こし、逃げる気がないと示すために、「ありがとう、ローズ」と言って、その頭を優しく撫でつける。

 それに対し、ローズは気持ちよさそうに目を細めた。


「えへへ……ユズキお兄さん、凄く気持ちいいよ。でも髪だけじゃなくて、もっと色んなところを触って良いんだよ?」

「……色んなところ?」

「うん。色んなところ。ユズキお兄さんは私のモノだけど、私はユズキお兄さんのモノだから。だから、ユズキお兄さんがしたいこと、ぜぇーんぶ、させてあげる」

「ぜ、全部?」

「うん。私に着て欲しい服があるのなら、どんなに大胆な服でも着てあげる。それに、私にして欲しいことがあるのなら、どんなことだって……して、あげるよ?」

「そ、それは……」


 思わずゴクリと生唾を飲み込む。

 いや、違うのだ。これはその、なんと言うか、男として当然の反応というか、ローズは外見だけなら超絶美少女でスタイルが良いから、なんでも――なんて言われると、思春期の男としてはあれこれ興味が……いやいや。落ち着け。


 ここで誘惑に負けたら、それこそ一生、この部屋で飼われる羽目になるぞ。


「ユズキお兄さん?」

「えっと、その……凄く魅力的な提案だけど、俺はちょっと喉が渇いたみたいなんだ。だから、まずは水を飲ませてくれないかな?」

「……喉が渇いたの?」

「う、うん。カラカラなんだ」


 逃げる隙を作るための方便だけど、喉が渇いたのは嘘じゃない。薄暗い密室のベッドの上、美少女に誘惑されると言う状況で、本当に喉はカラカラだ。


「ん~それじゃ、先に水をもらってくるね。だから、ユズキお兄さんは、そのあいだに、私になにをするか考えておいてね。お願いだよ(、、、、、)?」

「う、うん。考えておくよ」


 俺が頷くと、ローズは満足そうに頷いて「水をもらってくるね」と部屋から出て行った。それでも、俺はしばらく息を潜め、ローズが部屋から遠ざかっていくのを確認する。


 ……よし、もう大丈夫だろう。


 それじゃあ、ローズが帰ってきたら、なにをさせるか考えよう――って、違う違う。俺は逃げるんだから、ローズが帰ってくる前に逃げないと。


 ……いやでも、ちょっとエッチなデザインの服をローズに着せて、恥ずかしがる姿を見て楽しむとか凄く楽しそう。それどころか、純真そうなローズに色々教え込んで……


 いやだから、そんなことを考えてる場合じゃなくて!

 なんなんだろうな、この危機感のなさは。状況的に考えて、むちゃくちゃヤバイ状況のはずなのに、あまり危機感を抱かない。


 もしかして、恐怖耐性で危機感を抱かなくて、誘惑に負けかけてる感じなのか? だとしたら、誘惑耐性とかも習得しておくべきだったかもしれない。

 ……って、そんな暢気に考えてる場合じゃない。


 俺は意を決してローズが出て行った扉の前に。部屋の外から物音が聞こえないのを確認して、扉を、扉を――開けない!?


 あ、あれぇ……おかしいな。ローズは出て行くときに鍵を開けるそぶりを見せなかったし、閉めたときもそれらしい音はしなかった。鍵はないはずだ。


 いや、そもそも鍵の問題じゃない。俺の手がドアノブを回そうとしてくれない。

 ……もしかして、本当に俺の本能が、ここに残ってローズにえっちぃことをしたいと思ってるってことか? ……って、そんな馬鹿な。いくらなんでも、そんな無節操じゃない。


 それよりは、扉に魔法の類いがかかってるとかの方がありそうだ。

 詳細は分からないけど、とにかく扉から逃げるのは無理そうだ。こうなったら仕方ない。窓から逃げよう――と、俺は窓の方へと駆け寄る。


 鍵は……かかってない!

 これなら逃げられると開け放った窓の下。地面までは目測で二メートルほど。下手をしたら足をくじく可能性もあるけど、最悪は不老不死がある。


 扉が無理なら東風からかと、窓枠に足をかけようとした俺は――心臓を鷲づかみにされるような恐怖を抱いて、その場にしゃがみ込んだ。


「か――はっ、な、んだ。これは……どうなって――くぁっ」

 震えが止まらず、呼吸すらままならない。恐怖耐性Bとか、精神力AAAとか、そんな補正なんて関係ないかのように、気が狂いそうなほどの恐怖が襲いかかってくる。



 ――どれほど震えていただろう? 扉が無造作に開き、トレイに水の入ったカップを乗せたローズが戻ってきた。


「ただいま~……って、あれ? ユズキお兄さん、そんなところに座り込んでどうしたの?」

 逃げるチャンスを失った――なんて思う余裕はなかった。それどころか、待ち望んでいた相手が帰ってきたかのように思った俺は、本能に従ってローズの身体に縋り付いた。


「ローズ、ローズっ!」

「ひゃんっ。お兄さん、急にどうしたの? お水がこぼれちゃったよ」


 ローズがトレイを取り落として、コップの水が絨毯の上にぶちまけられる。だけど俺はそんなことにかまっている余裕はなくて、その小さくて柔らかな身体にぎゅーっとしがみつく。

 たったそれだけで、俺を押しつぶそうとしていた恐怖が、少しずつ遠ざかっていった。


 だけど――俺が安堵したその瞬間、ローズが「もしかして……逃げようとしたの?」と俺の耳元で囁いた。それは完全に不意打ちで、俺はびくりと身を震わせてしまう。


「あはっ、やっぱりそうなんだぁ。もぅ、ダメだよぉ~? この部屋から逃げない。私の言うことを聞くって、ちゃーんと、契約、したじゃない」

「……け、契約?」

「そうだよ。私の魔眼を使った契約」


 ローズが右手でピースをするようにして、金色の右目を広げてみせる。その仕草だけ見れば可愛いけど、さっきの恐怖を味わった後ではそんなことを考える余裕もない。


「その金色の瞳が、魔眼……なのか?」

「そうだよ。私の魔眼で契約した内容は、死ぬまで解除されることはないし、決して破ることも出来ない。ユズキお兄さんは強いから、もしかしたら掛からないかもって心配してたんだけど、ちゃんと掛かったみたいで安心したよぉ」

 さっき、目を見て約束だと繰り返したときか――と、俺は唇を噛んだ。


 ゲームのような世界で魔法があり、ローズはこれ見よがしにオッドアイ。なんらかの力がありそうとか思ってたのに……もう少し警戒するべきだった。

 いや、今は後悔よりも、これからどうするかを考えるべきだ。


 ローズと交わした約束は……たしか、「この部屋から出ない」「ローズの言うことを聞く」の二つ。この二つに抵触せずに、この部屋から逃げ出す方法を探す。

 ……って、そんなのどうやっても無理だろ。


 いやでも、ここで諦めたら、死ぬまでこの部屋で飼い殺しにされる。……いや、俺は死んでも生き返るから、下手をしたらもっと長い間……って、待てよ。


 ローズはさっき、契約は死ぬまで解除されないって言った。逆に言えば、死んで生き返れば、契約は無効になるってこと……か?

 ……まずは確認しようと、ステータスウィンドウを開く。


 ローズにも見えたら面倒だと少しだけ心配したんだけど……どうやら、俺のステータスウィンドウは、ローズには見えていないのだろう。特に反応らしい反応はない。

 だけど――


「ユズキお兄さん、なにを考えているのかは知らないけど、そろそろ……ね?」

 俺が黙って板からだろう。ローズが少しだけ身を離し、俺の顔を見上げてきた。その幼い外見に似合わぬ濡れた瞳を見て、俺はゴクリと生唾を飲み込む。


「そ、そろそろって、なんの話だ?」

「さっきの続きだよ。お願いだから(、、、、、、)私の身体に触って」

 ローズがお願いという形の命令を口にする。その瞬間、ローズにしがみついていた俺の腕が、無意識にローズの背中をまさぐり始めた。


「ひゃ……んっ、はぁ……くすぐたいよぉ」

 そう言って身をよじる。言葉どおりくすぐったがってるだけだと思うけど、それが他の行為に思えて、頭に血が上るのを自覚する。


「ふふっ、もっと別のところを触っても良いんだよ? それに、私も触ってあげるね?」

「いや、それはっ!」


 まままっまずい、これは非常にまずい。ローズに任せていたら、どんどん行為がエスカレートしてしまう。そんな状況で、冷静に逃げる方法を考えられるとは思わない。


「待ってくれ! えっと……その。まずは俺にさせてくれ!」

 なんてことを言ってしまったんだと思うけど、ここに来て後には引けない。「最初は、自分の意志でしたいんだ」と言い放った。


「ユズキお兄さんの意志? 私に、なにをしたいの?」

「えっと……それはその……そうだ。俺がベッドの上で座るから、ローズは背中を向けて座ってくれないか?」

「え? いきなり私が上になってするの? 私としては、もう少し段階を踏んでからが良いんだけど……でも、ユズキお兄さんがそう言うのなら……」

「ちちちっ違う、身体に触れるだけだから!」


 勘違いをしたローズを必死に止める。そして俺はベッドの上に足を軽く伸ばして座り、その上にローズを座らせた。

 絵にしたら、これ絶対入ってるよね――とか突っ込まれそうな体勢だけど、なにも入ってないし、突っ込んでもいない。


 ともかく、ローズにお願いと言うなの命令をされたのは、別の場所を触ってと言う内容だけなので、俺はお腹や太もも、それに脇腹なんかをくすぐっていく。


「ひゃうっ、ユズキお兄さん。なんか、んっ、くすぐったい、よっ」

「くすぐってるんだから当然だろ? ローズが他のことを考えられなくなるまでくすぐるから覚悟しろよ?」


 俺が逃げる算段を付けていると気付かないくらい――と、心の中で付け加えて、ローズのお腹やフトモモ、それに耳や首筋なんかをくすぐっていく。


 さすが貴族の娘――なのかは知らないけど、物凄くすべすべで撫で心地が良い。それに、くすぐったそうに身を震わせるローズが愛らしい。


 これでヤンデレじゃなければ……な。

 なんて、ヤンデレなんだから仕方がない。俺は半分無意識に手を動かしながら、視界に半透明で浮かんでいるステータスウィンドウに意識を移した。


 自分のステータスにほとんど変化はない。ローズとの契約:E が増えているのと、SPの残りが0から105SPに増えているだけだ。

 ログによると、伯爵令嬢を救ったことによるボーナスが100SPで、敵のリーダーを倒したのが5SPらしい。……必要ポイントを考えると、かなり少なめだな。


 あとついでに……睡眠薬を飲まされたっぽいログがある。俺が夕食の最中に寝てしまったのは、一服盛られたからのようだ。


 それはともかく。……睡眠薬を盛られて拘束された経緯を、それはともかくと軽く流せるようになってる自分がちょっと恐いけど、それはともかく。

 俺はローズとの契約についての詳細を表示する。そこには、さっきローズから聞いたのとほぼ同じ内容が記されていた。


 解呪の方法は、契約主が破棄するか、契約より高ランクの解呪の魔法(デスペル)での解除。そして、対象が死亡して破棄されるかの、全部で三パターンのようだ。


 デスペルは習得が200SP。ローズの契約ランクがEなので、解呪するにはDランクが必要になるので……合計1,200SPが必要。当然ながら足りない。


「――ひゃんっ。くっ、くすぐった、いっ。くすぐったいよぉ……」

 ローズが身を震わせる。俺はそれを意識から無理矢理に閉め出して、更にステータスの確認を進める。


 確認するべきなのは、【ヤンデレに死ぬほど愛される】と、知らないあいだに増えた三つの称号だ。

 まずは――と、俺は【ヤンデレに死ぬほど愛される】の詳細を表示する。


 【ヤンデレに死ぬほど愛される】

 ヤンデレから向けられる好意が増幅される。


 F:補正なし / E:5% / D:10% / C:15% / B:20% / A:25%

 AA:35% / AAA:45% / S:60% / SS:75% / SSS:100%


 【Eランクボーナス:ヤンデレの目を惹く。+10%】【Aランクボーナス:自身に好意を向ける相手のヤンデレ属性を増幅する。+10%】【Sランクボーナス:周囲の人間の潜在的なヤンデレ属性を引き出す。+10%】【SSSランクボーナス:周囲の人間のヤンデレ属性を増幅する。+10%】


 ……おぉう。なんと言うエグいスキルだ。もしかして、ローズが急にヤンデレ化したのって、これのせいじゃないか?


 いやでも、ヤンデレ属性を引き出す補正はそれほど大きくないな。

 俺に好意を抱いているのが前提でも20%。ダメ押しになった可能性はあるけど、もとからヤンデレだった可能性は高そうだ。


「ユ、ユズキお兄さん、私、ホントに――ひゃうっ」


 脇の下をくすぐられたローズが悲鳴を上げるけどスルー。そして、ヤンデレに死ぬほど愛されるの究明も取りあえずは後回し。現状をなんとか出来ないか色々見てみよう。

 新しい称号は……三つか。


 【女神メディアの寵愛を受けた】は、すべてのスキルに10%のプラス補正がかかるって言うのと、親しい相手のステータスに干渉できるようになると言う内容。

 ステータスに干渉というのが少し気になるけど、親しい相手って書いてるし、今は役に立ちそうにない。と言うことで次だ。


 【異世界からの旅人】と【ヤンデレに死ぬほど愛された】はそれぞれ、全ステータスに5%、2%のプラス補正らしい。


 ちなみに【女神メディアに見初められた】は10%補正なので、あわせて27%もある。

 それに筋力補正は10%あったから、筋力は37%増し。早さとかも似たような感じで増加してるから、襲撃犯のリーダーをあっさり撃退できたのはそれが理由だろう。


「ユズキお兄さん、ユズキお兄さん! 私、もうっ。ダメだってば~~~っ!」

 ローズが身を突っ張らせると、そのままくたっと崩れ落ちた。ちょっとくすぐり過ぎたかと、俺は慌ててその身体を支える。


「……大丈夫か?」

「はふぅ……お兄さん、くすぐりすぎ、だよぉ……。全身をくすぐられたせいで、頭が、フワフワして、だいじょうぶじゃ、ない、よぅ……」

 頬を朱に染めたローズが呟く。その表情が最高に可愛い。


 好意を向けられてるのは【ヤンデレに死ぬほど愛される】のせいかもって思ってたけど、SSSであることを考慮しても、二倍に膨れあがるだけ。

 倍加は凄いけど、元から好意がなければ効果は現れない。


 そう考えると、ローズはこの半分とはいえ好意を抱いてくれているわけで……なんか、ちょっと情が湧いてきた。いや、身体をくすぐり倒したのが原因とかではなく。

 なんて思っていたら、ローズがもじもじと身体をよじった。


「あの、あのね。ユズキお兄さん。私、その……えっと、着替えてきても、良いかな?」

「着替え? ……あぁ、うん。行っておいで」

 色々察したので、快くローズを部屋から送り出す。そしてローズが部屋から遠ざかるのを確認。俺はグッと拳を握りしめた。


 ローズはどこかでお着替え中。と言っても、全部着替えるわけじゃなさそうなので、そんなに長い時間は稼げないかもしれないけど、多少の猶予はあるだろう。


 なので――と、俺は素早くスキル習得画面を表示。この場で使えそうな魔法を捜す。そして見つけたのは、100SPで習得できるファイア・ボルトだ。


 使い方は、対象をイメージして、スキル名を宣言。するとスキルにあった魔法陣が地面に展開されるので、それが終わったら発動――と言う流れのようだ。


 習得するだけで使えるようになる反面、Fランクでは動きながら使えないなどの欠点も多いようだ。とは言え、ここで使う分にはなんの問題ない。

 俺はさっそくファイア・ボルト:Fを習得した。

 

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