エピソード 3ー1 純潔の糸
俺がステータスウィンドウを弄れるのは秘密なので、ウェルズさんにはクラウディアに秘密の特訓をすると説明。
俺達はバンドールのギルドへとやって来た。
ちなみに、ローズも同行している。
ローズには俺の能力を説明していないんだけど……クラウディアを救うために一日でリザレクションを覚えて見せたり、船ではステータスウィンドウを弄り倒したりしたからな。
なんとなく感づいているのだろう。特に問いただしてくることもなく、ダンジョン攻略を手伝うと申し出てくれたのだ。
そんな訳で、俺達はダンジョンへと足を踏み入れた。
「さてと。まずは……さっさと四層か五層くらいまで潜ろうか」
俺だけなら、祭壇から六層まで飛ぶことが出来るんだけど……クラウディアやローズは、ボス撃破称号を一つも持っていない。
という訳で、入り口で買った地図を頼りに、一層から順番に攻略していくことにした。
そうして潜ったダンジョン。
最初こそ、おっかなびっくりなローズの面倒を見ていたのだけど……ローズの魔法が強すぎて、俺はすぐにやることがなくなった。
特に、今回の目的はクラウディアの成長だからな。
クラウディアが支援魔法をかけて、俺とローズが敵を倒していく作戦だったんだけど、俺とローズが戦闘に参加するとSPが三分割されてしまう。
なので、俺は基本的に控えに回って、ローズが敵を倒すのに任せることにした。したんだけど……いくらなんでも、ローズが強すぎる。
どうやら、風の魔法だけでも複数使えるようで、状況に合わせた魔法を使い分け。現れる敵を片っ端からズタズタに切り裂いてしまうのだ。
そして今も――
「――テンペスト」
五層のボス部屋の前。ローズは今までとは違う魔法名を呟くと、魔法陣を展開しながらボス部屋へと足を踏み入れた。
ローズの姿を確認したボスガルムが雄叫びを上げて、取り巻きガルムを召還。現れた四体のガルムと、ボスガルムが一丸となってローズに襲いかかるが――
「……無駄だよ」
ローズがテンペストを発動する。ボスガルムを中心に嵐が吹き荒れ、範囲内にいた敵全てをズタズタに切り裂いた。まさに瞬殺である。
「ローズ様、凄いです!」
「ありがとう、クラウディアさんの支援魔法のおかげだよ」
……俺、こいつと死闘を繰り広げたんだけどなぁ。なんて遠い目をしながら、クラウディアとハイタッチをしているローズを見る。
しかし、今の魔法は一体……と、ステータスウィンドを開いてヘルプで検索。テンペストの詳細に視線を向ける。
【テンペスト】 600SP
嵐を巻き起こし、範囲内の存在を風の刃で切り刻む。
基本威力480。魔法陣構築時間18秒。射程20メートル。範囲10メートル。
Eで+5%、Dで+10%、Cで15%、Bで20%、Aで25%、AAで35%、AAAで45%、Sで60%、SSで75%、SSSで100%
Eで動きながらでも詠唱が可能&射程が10m増加。Aでダメージによるキャンセルが起こりにくくなる&魔法陣構築時間短縮。
Sで範囲が10メートル増加。SSSで射程と範囲が5メートル増加。
基本SP600……恐らくは上級に位置づけされているんだろう。SP100で覚えられる魔法に対して威力が段違いである。
「なあ……ローズ、そのテンペスト、ランクはいくつなんだ?」
「テンペストはAランクだよ」
「マジか……」
基礎SP600のAランク。それだけで総合評価が12,600あがる。
出会った頃に確認した総合評価は26,800だったけど……と鑑定で確認すると、46,500に上昇していた。ダンジョンに籠もっていたわけでもないのに成長しすぎである。
これ、あれだよな。俺と色々いたした結果、成長したってことだよな。
でも、クラウディアはそんなに成長してないんだけどな? ローズの成長が早いのか、それとも受けか攻めかの違いで、能力の上昇に違いがあるのか?
……どっちもありそうな気がする。
「ユズキお兄さん、ユズキお兄さん!」
急にローズに腕を引っ張られた。
「どうしたんだ?」
「あれを見て! 魔石じゃないなにかがドロップしてるよ!」
「むむ。レアアイテムか?」
言われてみれば、ボスガルムの死体が光の粒子となって消えたあとに、魔石と一緒になにやらヒモのようなものが落ちていた。
俺は近づいて、それを拾い上げる。
「あれ? これ、ヒモかと思ったけど糸を束ねたものか」
「……糸? 普通の糸なのかな?」
「うぅん、どうだろ? ドロップアイテムはあまり役に立たない物が多いみたいだけど……これは、なんか良さそうな感じだぞ?」
鑑定を使ってみると、Aランクと表示された。鑑定のランクが低いので、それ以外はなにも分からないけど……ランク的に考えて正真正銘のレアドロップだろう。
「効果は俺には分からないから、ギルドで鑑定してもらって二人でどうするか決めると良いんじゃないかな」
「ギルドで鑑定してもらうのは良いけど、どうして二人なの?」
「どうしてもなにも。俺は見てただけで、なにもしてないからな」
実際、ステータスを確認しても、SPは増えていない。それどころか、このダンジョンに潜ってから、ほとんど増えていない。俺がいかに戦っていないかが丸わかりだ。
「そんなことないよぉ。ユズキお兄さんがいざというときに備えて待機してくれてるから、私は安心して戦えるんだよ?」
「そうですよ。なにもしてないなんて言わないでください。ご主人様が背後から敵が来ないかとか気を配ってくださってるから、私も安心して支援魔法を使えるんです」
ローズとクラウディアが口々に言う。
「二人とも……ありがとう」
システムには役に立ってないと言われたのに、二人にそんな風に言われて、不覚にもちょっと感動してしまった。
――いえ、あの。システム的にSPが分配されないだけで、柚希くんが役に立ってないなんて、判定してるわけじゃないですわよ?
と思ったら、ログウィンドウにメディアねぇの言い訳が。
言い訳じゃないですわよ! 柚希くんが頑張ってるのは、私が一番よく知ってます!
はいはい。メディアねぇもありがとうな。
苦笑いしながらメディアねぇにお礼を言って、俺は二人へと視線を戻す。
「取りあえず、レアドロップらしき糸は、鑑定してもらってから三人でどうするか話し合って決めるってことで良いかな?」
俺の問いかけに、二人はコクコクと頷く。
「じゃあ、糸は俺が預かっておくな」
アイテムボックスにしまいつつ、ウィンドウに表示されいる時間を確認する。
現在は午後六時を回ったあたり。そろそろヤンデレタイムが迫っているし、一度戻った方が良いだろう――という訳で、俺達は六層にある祭壇から帰還した。
「おかえり、ユズキくん。それに、ローズ様とクラウディアさんも」
「ただいま、シルフィーさん。さっそくだけど、魔石の査定をしてくれるか?」
アイテムボックスから取り出した魔石をカウンターに並べていく。
「これはまた結構な数ね。ローズ様もクラウディアさんも非戦闘員だと思ったのだけど、もしかして二人とも結構な使い手なのかしら?」
シルフィーさんは、魔石の仕分けをしながらぽつりとそんなことを言った。
「どうしてそう思うんだ?」
「いくらユズキくんでも、足手まといを二人も連れていては、これだけの数の魔石を手に入れるほど狩りは出来ないと思ったからよ。私の予想、間違っているかしら?」
「ん~予想はあってるけど、根本的なところで間違ってるな」
俺はイタズラっぽく言い放つ。その意味が分からなかったのだろう。シルフィーさんはコテンと首を傾げた。
「それは……二人は強いけど、二人は狩りをしていないと言うこと?」
「いや、逆だよ。俺はもしものために控えてただけ。クラウディアが支援魔法でローズを支援して、ローズが魔法で無双してたんだ」
ちなみに、途中でクラウディアのサンクチュアリを使って、安全で質の高い休憩をしたりはしたけど、ローズはその前後で実に百回以上の魔法を使っている。
どんなスキル構成をしたら、そんな魔法の連発が可能なのか……あとで確認してみよう。
「そんなにお強いなら、ローズ様達も冒険者ギルドに登録しておけばいかがですか? 登録料はかかりますけど、加入しておいた方がなにかとお得ですよ?」
シルフィーさんがローズとクラウディアに問いかける。
「ん~ユズキお兄さんと行動を共にするなら、加入しておいた方が良いかな?」
「あ、そうですね。それじゃあたしも登録したいです」
二人とも乗り気みたいだな。
クラウディアなんて、出会った頃はダンジョンに同行するのも躊躇っていたのに……今日はなんだか楽しそうだった。
衰弱の呪いが解けたから、俺のリザレクションがあるからか……
まあ、なんにしても、登録するのなら早い方が良い――という訳で、シルフィーさんに査定をしてもらっているあいだに、二人には他の受付嬢に登録をしてもらうことにしたようだ。
二人揃って、隣の受付へと移動した。
ちなみに、ヤンデレに死ぬほど愛される:SSSを持つ俺は、シルフィーさん以外の受付には近寄ることすら禁止されてるけど、二人はそういう制約がない。
なので、二人が他の受付に行くことは問題ないのだけど……二人は俺のツレと認識されているので、重度のヤンデレだと思われているのだろう。
他の冒険者からは思いっきり距離をとられている。
「ユズキくん、なんだか楽しそうね」
「え、そうですか?」
「ええ。出会った頃は追い詰められてるような感じがしたけど、今はなんだか毎日が楽しくて仕方がないと言った風に見えるわよ」
「……まぁ、やりたいことをやってるから、ですかね」
前世では諦めた服飾の仕事をするという夢。
「やりたいことをやってる、ね」
なぜか、シルフィーさんの声が冷たくなった。そして、その視線が、隣のカウンターで冒険者登録をしているローズとクラウディアに向けられた。
「もちろん、若いのだから、するな――とは言わないけど、ね」
「ち、違いますよ!? やってるって言うのは、子供の頃の夢だった仕事をやってるという意味で、シルフィーさんの想像してるような意味じゃないです!」
「でも、ユズキくんは冒険者なんだから、仕事に差し障るまでしちゃダメよ。あんまり酷いようだと……お姉さんが管理するからね?」
さらっと管理するとか言われたんだけど。一体なにを管理されるんですかねぇ。
「取りあえず、濡れ衣だと主張します」
「はいはい、そういうことにしておいてあげるわ」
……誤解だって言ってるのに、信用ないなぁ。
「……っと、魔石の査定が終わったわよ。これで全部かしら?」
「魔石は全部です」
「……魔石は全部?」
「ええ、実はレアドロップらしき物が。この糸なんですが……確認してもらえますか?」
「この糸は……珍しい物を拾ったのね。これは純潔の糸よ」
「純潔の糸? 使い道は分かりますか?」
「この糸は、布に魔法陣を刺繍すると、その布が魔導具になるの」
「えっ! それは物凄く貴重なアイテムなのでは?」
もしかして一気にお金持ちに? なんて淡い期待を抱いたんだけど、シルフィーさんの提示した金額は、金貨一枚だった。
「思ったより高くないですね」
「あら、糸だけで金貨一枚。十分に高額よ?」
まあ……最近金銭感覚があれだけど、考えてみたら数ヶ月は遊んで暮らせる金額だしな。
「ちなみに、魔法陣って、魔法を使うときに展開するあれですよね? どんな魔法陣でも良いんですか?」
「いいえ。専用の魔法陣が存在するの。そして、純潔の糸は……加護の魔法陣ね。ダメージを少し軽減する効果があるわ」
ダメージを軽減……か。
そういうことなら、ローズやクラウディアの服に刻むのがよさそうかなぁ。
「ちなみに、作り方は?」
「教えるのはかまわないけど……紋様魔術のスキルがなければ作れないわよ?」
「それはつまり、スキルがあれば作れるってことですよね。なら、教えてもらえますか?」
面白そうだし、自分で可能なら習得しようと思って尋ねる。
「ユズキくんって……なにか隠してるわよね? リザレクションもどうやってか習得したみたいだし。……まあ、無理には聞かないけど」
俺が一瞬だけ顔をこわばらせたのに気付いたんだろう。シルフィーさんは少しだけ寂しげに微笑んだ。
……うぅむ。シルフィーさんは、受付のお姉さんとして俺をサポートすることに命をかけるタイプのヤンデレみたいだからなぁ。
俺に信用されてないって思ったら暴走するかもしれないし、教えておいた方が良いかも。
「分かりました。次に会ったときに教えます」
「……良いの?」
「まあ……シルフィーさんが受付として信用できる人なのは分かってますから。それに、俺の秘密を知ってた方が、俺に的確なアドバイスをしてくれるでしょ?」
シルフィーさんもローズと同じように、一般的なヤンデレと比べるとまともだ。特に、受付のお姉さんとしては頼りになる。
今後を考えて、打ち明けておいても良いだろう。
ちなみに、この場で教えなかったのは、まだローズに教えていないからだ。なんとなく、だけど、ローズを後回しにすると、バッドエンドになりそうな予感がしたのだ。
「ユズキくん、私を信用してくれてありがとうね」
「お礼は必要ないですよ。俺がシルフィーさんを信用したのは、シルフィーさんの普段の行動から判断した結果ですから」
「ふふ、ありがと。お礼に、純潔の糸の使い方を教えてあげるわ。と言っても、紋様魔術のスキルを習得していれば自然と分かるはずよ」
「……なるほど」
一般的にスキルを覚える方法は二つある。
一つは、覚えたいスキルの技術をひたすら磨く方法。
例えば、剣術のスキルを覚えたければ、ひたすらに剣を振るえば良い。
そしてもう一つ、大きな経験を得ることで、スキルを覚える方法。
例えば、強敵と戦うことで、予想もしていなかったスキルを覚えることがある。
前者の方法でスキルを覚えたとき、最初からある程度の知識があるのは当然だ。けど、後者の方法でスキルを覚えたときでも、最初から最低限のスキルの使い方を理解している。
紋様魔術の手順も、同じようにスキル習得時に覚える内容に分類されるのだろう。
「純潔の糸の使い方はたしか……刺繍する前に、糸を処女の血に浸す必要があったわね」
「……処女の血、ですか?」
「ええ。でも、ユズキくんなら問題ないわよね」
シルフィーさんが視線を向けたのは、冒険者登録中の二人。俺を慕ってくれている美少女で、俺が血を分けて欲しいとお願いすれば、喜んで血を流してくれるだろう。
……ただし、二人とも既に純潔を失っている。
俺は無言で視線を逸らした。
「……ユズキくん、さっき、誤解だって、言った、わよね?」
「いや、その……さっきのは本当に仕事の話だったんです、よ?」
「ふぅん……」
あぁ、シルフィーさんの視線が冷たい!
「ええっと……その、シルフィーさんは処女だったり、します?」
物凄くセクハラだけど、ここまでくれば今更だろう――と言うことで尋ねてみた。すると、シルフィーさんは、少しだけ頬を赤らめた。
「それは、私の処女を散らしたいと言う意味かしら?」
「いえ、血が欲しいだけなんですけど」
「つまり、処女を散らしたときの血が欲しいと?」
「……いえ、血が欲しいだけなので処女はいりません」
……と言うか、処女を散らしたときの血は、処女の血に含まれるんだろうか?
散らした瞬間の血だから、処女の血になるはずだけど……なんか違う理由で、処女というか、乙女の血とはとても言えない気がする。
と言うか、いくら他にあてがないとは言え、シルフィーさんに頼んだのは間違いだったな。
仕方がない。
ローズに頼んで、誰かの血をもらってきてもらおう――と考えながら、純潔の糸をアイテムボックスにしまおうとしたら、その手をシルフィーさんに掴まれてしまった。
「……シルフィーさん?」
「今、他の人に頼ろうとしたでしょ?」
「え、いや、そ、そんなことはないですよ?」
言いようのない圧力を感じて冷や汗をだらり。まさかと思って時計を確認すると……現在の時刻は19:00。ヤンデレタイムに突入していた。
「ダメよ。ユズキくんの専属は私なんだから。他の人に頼るなんて許さないわ。と言うことで、この純潔の糸に必要な処女の血は私が提供しますっ」
言うが早いか、シルフィーさんはカウンターの下からナイフを取り出し、ざくりと自分の腕を切ってしまった。
「って、ちょっと、シルフィーさん、切りすぎ、切りすぎだから! 腕を出してください、すぐに魔法で治療しますから!」
だらだらとあふれ出る血に俺はドン引きである。
「大丈夫だから、先に純潔の糸を貸してください」
「いや、それより治療を」
「それを渡してくれないと、腕を切った意味がないじゃない」
「あぁ、分かった、分かりました」
問答してる方が時間の無駄だと、俺は急いで純潔の糸を差し出す。それを受け取ったシルフィーさんは、その糸に血を垂らしていった。
なんか……糸が血に濡れるというか、血が糸に吸い込まれていくな。
「……これくらいですね」
「っと、ありがとうございます。それじゃ止血するから、腕を出してください」
俺は差し出される腕を掴んでヒーリングを使用。シルフィーさんの腕を治療した。そうして傷跡が消えるのを見て、俺はホッと息を吐いた。
「ふぅ……まったく、無茶しないでください」
「ふふっ、これくらいは受付嬢として当然よ」
満面の笑みを浮かべて、手のひらを頬に押し当てる。その手が血に濡れていたから、シルフィーさんの顔には血化粧が施されてしまった。
取りあえず、俺はそんなシルフィーさんを見てため息をついて見せた。
「どう考えても受付嬢の仕事ではないと思いますよ」
と言うか、いきなり腕を切り裂いたシルフィーさんを見て、周囲の人がドン引きしている。
平然としているのは、ローズやクラウディアくらいである。と言うか、あの二人は二人で、もう少しこう……なんらかの反応をするべきだと思う。
「普通の受付の仕事じゃなかったとしても、私はユズキくんの専属だもの。これくらいのことは当然よ。今後もユズキくんの要望に応えられるように、ずっと処女でいるから安心してね」
「……なんか、シルフィーさんの処女を散らしておいた方が良い気がしてきました」
俺が想像していたのは、指の先をちょっとだけ切って……くらいの感覚だったのだ。あんなざっくり切るとか知ってたら頼まなかった。
「あら、ユズキくんがもらってくれるなら、いつでも捧げるわよ?」
「……冗談です。でも、シルフィーさんが傷つくのとか見たくないので、もうさっきみたいなマネはしないでくださいね?」
念押しをすると、シルフィーさんは意外そうに、エルフ耳をピクンと跳ねさせた。
「ユズキくん、ヤンデレの私を心配してくれるの?」
「それは心配しますよ。シルフィーさんは俺の専属受付嬢なんですから。だから、俺のせいで傷ついたりしたら、悲しみます」
「……ユズキくん。ありがとう、これからは気をつけるわね!」
エルフだから俺より年上のはずなんだけど……そうとは思えないほどに可愛らしい微笑み。
それで良いのかと色々と突っ込みたいんだけど……本人が幸せそうだから良いや。なんて思った俺は、クラウディアとローズがジト目でこっちを見ていることに気付かない。
――そんな訳で、宿に戻った俺は、クラウディアとローズに押し倒された。なんと言うか、やっぱりこの世界は、ヤンデレ女神の箱庭なんだななぁ……って思う。
……はあ。





