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この異世界でも、ヤンデレに死ぬほど愛される なろう版  作者: 緋色の雨
第二章

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エピソード 2ー5 情報漏洩

 立体裁断を始めてから数週間、俺の快楽耐性がBになった。


 ……いや、違う。違わないけど、違う。俺が言いたかったのは、立体裁断によるおおよその形が完成したということだ。


 という訳で、俺は作業場にローズとクラウディアを呼んでお披露目をした。


「ふあぁぁぁっ、イラストを見たときも驚いたけど、こうして形になったのを見るともっと驚きだね。このドレス、凄くすっごく可愛いよ!」

「気に入ってくれたか?」

「うんうんっ。このドレスが完成して、私が着れるようになるのが楽しみだよ!」

「あたしも、素晴らしい完成度だと思います。この立体的な部分とかが特に。イラストを見せて頂いたときは完成形が想像できなかったんですけど、こんな風になるんですね」


 満面の笑みではしゃぐローズの横。クラウディアは服飾に携わる物としての目線で感心してくれているようだ。


 もちろん、クラウディアやウェルズ夫妻には、ときどき確認してもらっていた。だけど、形になった服を見てもらって、こういう感想をもらえるとちょっと安心する。


 技術面もそうだけど、元の世界風のデザインが実際に受け入れられるか不安だったからな。


「ところでご主人様、こっちのエッチな服はなんですか?」

「……あぁそれは、クラウディアに作ってるんだ」


 クラウディアが視線を向けたのは、ウェルズさんのツテで製作したクラウディアのボディ。

 ローズのドレスを作る傍ら、息抜きがてらに立体裁断で作った服が着せられている。


 なお、胸の谷間の上下二カ所に、三角形の切れ目が入っている。


「……この服を、あたしが着るんですか? 胸の谷間が、上も下も丸見えなんですけど」

「大丈夫だよ。クラウディアは胸が大きいから」


 胸が小さい子が着ると、かがんだときに色々と見えてしまって大変――と言う意味である。


「ご主人様のエッチ」

「まったくもって否定はしないけど……着てくれるんだろ?」

「……あたしに、この服を着てご奉仕しろって言うんですね、ご主人様のエッチ」


 無言で視線を逸らした――先で、ふくれっ面のローズと視線が合った。


「……ローズ? どうかしたのか?」

「クラウディアさんばっかりズルいよ」

「え、なにが?」


 今回の制作はローズのドレスがメインで作った。クラウディアに羨ましがられるのならまだしも、ローズに羨ましがられる要素なんてないはずだ。


「私の服も、ユズキお兄さんを悩殺できるようなデザインにして欲しい!」


 悩殺って……いやまぁ、否定はしないけども。


「でも、ローズのドレスは可愛いデザインだからなぁ。スカートでも短くするか?」

「じゃあそれでお願い」

「えらくあっさり……良いのか?」

「ユズキお兄さんがそう言うってことは、ユズキお兄さんの好みだってことでしょ?」

「……おっしゃるとおりで」


 ゴシックドレス。それも、貴族が社交界で着るドレスなので、露出は控えめにしてたけど、俺の好きなゴスロリはミニスカート&ガーダーベルトだ。

 と言うことで、スカートはアシンメトリーで片横を短く改造することにした。


 なんにしても、型紙の完成まであと少し。

 そうしたら、サーシャさんに縫ってもらえば完成だな。


「あ、そうそう。ご主人様、実は紹介したい人がいるんですが」

「……その人、ヤンデレじゃない?」

「まずそこから確認するんですね。いえ、気持ちは分かりますけど。ヤンデレではないですよ。と言うか、紹介したいのはあたしの妹です」

「……妹?」

「ええ。いつもは家の方にいるんですが、ご主人様のことを話したら会ってみたいってだだをこねちゃって。今はお店に来てるんですが、連れてきても良いですか?」

「そういうことなら、かまわないけど――」


「――やっぱりお兄ちゃんだ~っ!」

 いきなり、青い髪の幼女が飛び掛かってきた。


 ――まさかヤンデレの襲撃か!?


 焦った俺が反射的に身をひるがえすと、俺という目標を見失った幼女はびったーんと、板張りの床にダイブした。

 ……痛そう。板だけに。……いや、なんでもない。


「リ、リスティス、大丈夫!?」

「ふえぇぇ……お兄ちゃん、どうして避けるの~っ!?」

 がばっと起き上がった女の子は、鼻の頭が赤くなっている。


「いや、だってヤンデレの襲撃かもしれないし……って、あれ? キミはあのときの」

「うんっ、そうだよ! またあったね、お兄ちゃん!」


 以前、落とした財布を届けてあげたボクっ子幼女ちゃんである。

 つまり、ヤンデレではない。


「お~、久しぶりだな。元気してたか? と言うか、クラウディアの妹だったのか?」

「うん、ボクは元気だよ」

「そうかそうか、よしよし」


 ぱたぱたと尻尾を振りそうな感じの、ボクっ子幼女ちゃんの頭を撫でる。

 するとボクっ子幼女ちゃんはますます嬉しそうにするので、更に撫でる。それによって、ボクっ子幼女ちゃんが、本当に嬉しそうにするので更に――


「ちょっとちょっと、ご主人様?」

「ストップだよ、ユズキお兄さん」


 撫でようとしたところで、右腕をクラウディアに。左腕をローズに拘束されて、部屋の隅まで引きずっていかれた。


「……二人ともどうしたんだ?」

「どうしたはこっちのセリフだよ、ユズキお兄さん」

「そうです。いつの間に、妹と仲良くなったんですか?」

「あぁ……ほら、家の前でクラウディアを待ってるときに、財布を落とした女の子を追いかけて言ったって話しただろ? それが、あの子だったんだよ」


 俺がそう言うと、二人は俺の拘束を解いて顔をつきあわす。


「……クラウディアさん、今の話は本当ですか?」

「はい、たしかにご主人様はそんなことをおっしゃっていました。ただ……」

「ただ?」

「そのときに、幼女もありだな……と」

「危険だね」

「はい、危険です」


 なんか、言われなき冤罪が打ち立てられている気がする。

 俺が言ったのは、ヤンデレじゃない純粋無垢な幼女を、素直で可愛い女の子に育てるのもありだなとか、そういう意味で言っただけで……まぁ、十分アウトな気はするけど。

 俺は不老不死だから、そのうち釣り合うはずである


「取りあえず、誤解だから俺を変な目で見るのは禁止だ」


 俺は二人にそれとなく釘を刺し、ボクっ子幼女ちゃんのもとへ戻った。


「それで、俺に会いたがってたって聞いたけど?」

「うん。話を聞いて、あのときのお兄さんかなって思ったから。財布のことをあらためてお礼を言いたかったんだよぉ」

「そかそか。わざわざありがとうな。えっと……」

「ボクはリスティスって言うんだよ」

「リスティスちゃんだな。俺はユズキだよ」

「それじゃユズキお兄ちゃんで良い?」

「もちろん、好きに呼んでくれて大丈夫だぞ」

「わーい、ありがとうね!」


 可愛い――と言うか、可愛らしい。前に話したときはもう少し大人しい感じだったけど、なにか心境の変化でもあったのだろうか?


 なんて思っていたら、リスティスちゃんは俺を見上げて手招き、しゃがんで欲しいというジェスチャーをした。


「どうかしたのか?」

「うん。あのね……クラウディアお姉ちゃんのこと、助けてくれてありがとうね。これはボクからのお礼だよ」


 耳の側で囁かれ、チュッとホッペにキスをされた。なかなかにおませさんである。


 なお、背後からクラウディアとローズの殺気だった視線を感じるけど、あの二人は心が穢れすぎだと思う。いくらなんでも、十歳くらいの女の子に嫉妬とかないと思うぞ。


 と言うか、お姉ちゃんのことでお礼を言いに来る、十歳くらいの女の子。なかなか良い子じゃないか。なんて思っていると、ウェルズさんが作業部屋に飛び込んできた。


「大変だ、ユズキくん!」

「急にどうしたんですか?」

「サーシャが、うちの筆頭の針子が辞めてしまったんだ!」

「ええええええっ!?」



 ――このタイミングで針子を失うのは致命的すぎる。と言うことで、リビングで緊急会議をおこなうことになった。


 メンバーはウェルズさんと、クラウディアと俺の三人である。ローズには、リスティスちゃんのお守りをしてもらっているのでこの場所にはいない。


「……それで、針子が止めてしまったというのは? タイミングが悪すぎると思うんですが」

「ああ、その通りだ。恐らくは偶然じゃない。辞める理由は聞き出せなかったんだが……恐らくは、レニス洋服店に引き抜かれたんだと思う」

「そうですか……」

「このようなことになってしまって申し訳ない」


 ウェルズさんが頭を下げる。それに対して、俺は仕方のないことだと口を開こうとしたのだけど――そんな俺の横で、クラウディアがへなへなと座り込んでしまった。


「……クラウディア?」

「あたしの、あたしのせいです」

「……どういうことだ?」

「このあいだ、サーシャがあたしに言ったんです。『貴方を借金の担保にするような人は、貴方の相手にふさわしくありません。ですから、私がなんとかいたします』って。あのときは、あたしが否定して話が終わったから、誤解は解けたと思っていたんですけど……」

「サーシャさんの中では終わってなかった。そして、クラウディアを俺から引き剥がすために、レニス洋服店についたってことか?」

「……恐らくはそうだと思います」


 なるほどねぇ……

 察するに、レニス洋服店となんらかの取引をかわしたのだろう。


 例えば、自分がウェルズ洋服店を潰す手伝いをするから、借金のかたに売られるはずのクラウディアを救って欲しい、とか。

 ……相手がそれを守るかどうかは分からないけど、な。


 ただ、なんとなく察した。

 サーシャさんはいかにもヤンデレっぽかったからな。クラウディアを救うために、自分本位の勝手をした。それが、今回の一件の本質。


「……ご主人様、申し訳、申し訳ありません」

「おいおい、急にどうしたんだ」


 クラウディアが俺の足下で土下座を始めたので焦る。


「サーシャは、ご主人様の描いたデザインを見ていますし、裁縫の技術も学んでいました。それに、作った服を社交界で披露して、貴族に売り込む計画も知っています」

「……あぁ、そう言えば知られているな」

「ええ。そして、それは全部、あたしがサーシャに針子を任せたら良いって言ったからです。本当に、お詫びのしようもありませんっ」


 再び頭を下げ、床の上に額をこすりつける。

 だから俺はそんなクラウディアの前に膝をつき、その頭を上げさせた。


「クラウディアが謝ることなんてなにもないぞ」


 慰めでもなんでもなく、クラウディアに責任はない。

 クラウディアを借金の担保にしたのは事実だし、サーシャさんが暴走したのだって、俺のスキルの影響を受けていないとは言い切れないからな。


「でも、あたしのせいで、ご主人様の夢が……っ」

「落ち着けって。勝手に人の夢が潰えたみたいに言うな。まだ終わったわけじゃないぞ」

「でも、でもぉ……」

「大丈夫だって。……そうだな。立体裁断のノウハウが漏れてたら少し面倒だけど、その辺はどうなんですか?」


 俺はウェルズさんに視線を向ける。


「それについては問題ありません。ユズキくんの作業場には入らないように言い付けてありましたし、普段は鍵をかけていました。サーシャは立体裁断のことを知らないはずです」

「そう、ですか……それなら問題ありませんね」


 サーシャさんの手によって、俺が作っているのとそっくりなデザイン――もしくは、それに匹敵するドレスを作られたら、社交界でのインパクトが激減する。


 でも、立体裁断が知られていないのなら問題ない。

 前世の世界なら、平面製図でも作れる人間はいくらでもいるけど、この世界の技術はずっと遅れている。立体裁断なくして、俺の描いたデザインは再現できないはずだ。


「将来的にはコピーされるのが早まるかもしれないけど、最初のお披露目に影響はないな。むしろ問題は、針子がいなくなったことだ。ウェルズさんにはあてがありますか?」

「……いえ、残念ですが、サーシャの腕に匹敵するような針子はいません。大急ぎで探してはみますが……1、2ランクは下がる可能性が高いと思います」

「そうですか……」


 困ったなぁ。

 簡単な服であれば、多少の腕の差はごまかせるけど……俺のデザインしたドレスは繊細なデザインであるがゆえに、縫製の技術が要求される。


 どうしても技術力の高い人が必要だけど……いないときのことも考えるべきか? いまからドレスを縫えるほど、スキルアップが出来る訳でも…………あったな、そう言えば。


「針子はクラウディアにやってもらおう」

「あ、あたしですか!? あたしも自分で着る服を縫うくらいなら出来ますけど、複雑なドレスを縫えるほどの技術なんて、ありませんよ!?」

「分かってる。たしかに今のクラウディアじゃ技術が足りないけど……足りないなら、ランクを上げれば良いんだよ」

「……上げるって言っても、そんな簡単に……あ、そういうことですか」

「そういうことだ」


 俺は称号の効果で、ステータスウィンドを操作して、SPを使って好きなスキルを習得することが可能で、親しい相手のステータスウィンドを操作することも出来る。


 つまり、ダンジョンに潜って敵を狩りまくれば、クラウディアの服飾技術をあげられると言うことだ。

 

 

 前回投稿して数時間後に告知したんですが、新作の短編バージョンをアップしています。

 今後の参考にさせていただくので、良ければ感想などなどお願いします。

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