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死角

「…………ククク、最高の気分だ」


 完全に異形の化物へと変容したマレクが、地獄の底から響く様なおどろおどろしい声で話す。


「勇者ヨ、礼を言うぞ。ワタシは今までこのチカラを使うことを躊躇ってきたガ、蓋を開けてみたらドウダ? この開放感……今までニンゲンというしがらみに縛られていたのがバカらしく思えるほどこのチカラはスバラシイゾ!」


 そう言うと、マレクは四つある足の一本を振り上げて地面へと叩き付ける。

 それだけでマレクの足は膝まで地面に埋まり、立っているのも困難なほどの凄まじい地響きを起こし、衝撃で崩れた天井からいくつもの破片が落ちてくる。

 その圧倒的な破壊力をまざまざと見せつけたマレクは「フム」と顎に手を当てながら何かを考察するかのように呟く。


「フム、やり過ぎてしまったな。まだ加減がムズカシイ………………ン?」


 そのまま考え込もうとするマレクの視界に、


「……もらった!」


 いつの間に接近したのか、腰だめに剣を構えたロイの姿が映った。



 マレクの視線がロイから外れた瞬間、ロイは一気に駆け出していた。

 完全に不意打ちという形になったが、この千載一遇のチャンスを逃すつもりはない。

 

(シュヴァルベ式刀剣術の真髄である一撃必殺の力を持ってその命を刈り取る!)


 息を殺し、姿勢を低くして地面を縫うように駆け出したロイは、マレクの背後へと回り込み、無防備な首元に向かって斬りかかる。

 完全な死角からの攻撃。例え反応できたとしても回避は不可能な攻撃を放てたことに、ロイは勝利を確信する。


「……もらった!」


 風を切り裂く勢いそのままに、ロイの剣檄はマレクの首を刎ねるものと思われた。


 しかし、


「甘いゾ、勇者」


 剣がマレクの首元を捕らえる直前、六本ある腕の一つがぬっと伸びてきて、首元をガードする。

 しかもただガードするだけでなく、二本の指で軽々と摘んで見せたのだ。


「なっ!?」


 剣を極めた者ですら困難を極めるような曲芸を見せられ、ロイは信じられないといった様子で絶句する。


 (こ、これじゃまるで……)

「頭の後ろに目がついてイルヨウダ。とでも思ったカ?」


 ロイの考えを先読みしたかのようにマレクが嘲笑うように言う。

 すると、マレクの首の調度真後ろの部分に横一文字の亀裂が入ったかと思うと、ぬちゃあ、と粘液が糸を引く様な音と共に二つに割れ、中から血走った瞳が現れる。


「ソウ、正に今の私には死角などないのダヨ」

「――っ!?」


 普通より倍以上の大きさの単眼に睨まれ、驚きで固まるロイに、マレクは丸太より太い腕を振り回して容赦なくロイへと叩き付ける。


「がはっ!?」


 後頭部の目に意識を奪われていたロイは、防御することすらままならず、まともに攻撃を受けて吹き飛ばされてしまう。


「やれやれ、これは私ガ強くなり過ぎてシマッタカナ」


 おもちゃのように数メートルも吹き飛び、転がるロイを見てマレクは余裕の笑みを浮かべた。

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