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反目

 ロイたちを睥睨しながら、マレクは吐き捨てるように言う。


「どうだ。私の顔は醜かろう」

「…………」


 その言葉に、ロイは何も言い返せなかった。


 マレクの素顔は、何者かに手酷く殴られたかのように膨れ上がっており、鼻は人の二倍のサイズはあり、逆に目は窪んで何処を見ているかわからない。顔色は各所に血が堪っているのか全体的に赤黒く、見ているだけで痛々しかった。

 まるで何者かに顔の形が変わるまで殴打されたかのようなマレクの素顔に、ロイだけでなく全員が息を飲んでいた。


「ククク……」


 自分の素顔を見たロイたちの反応を見て、マレクが肩を震わせながら笑う。


「どれだけ綺麗ごとを並べても、勇者様も所詮はただの人だったということだ」

「お、俺は……」

「おっと、今更言い訳なんかするなよ? どれだけ言葉を尽くしても、最初の反応だけで十分だ」

「うくっ……」


 マレクの突き放したような態度に、ロイは言葉を失う。


 人を見た目で判断してはいけない。これまでの旅で散々学んだはずなのに……偏見に満ちた表情で見られることが、どれだけ心を抉られるかを知っていたはずなのに……ロイは自身の浅はかさを悔いた。


 これでもう、マレクは永遠にロイに心を開くことはないだろう。


 だが、


「……驚いて、すまなかった」


 ロイは絞り出すようにそうとだけ告げた。


「…………」


 ロイの言葉に、マレクは肩を竦めて盛大に嘆息すると、唇を歪めて醜悪に笑う。


「これ以上の無駄な話をするつもりは毛頭ない……お前等普通の人間に、私の苦労なんて理解出来るはずがない」


 そう言うと、マレクは固まっている部下たちに指示を出す。


「ほら、何をしている。これ以上、私を落胆させるな。早く侵入者共を排除しろ」

「は、はい、おい、お前たち! 何をしている。さっきのことは不問にしてやるからとっとと勇者たちを抹殺しろ!」

「「「「は、はい!」」」」


 アベルの言葉に、兵士たちは目が覚めたかのように返事を返すと、各々の武器を手にロイたちへと襲い掛かる。


「……ク、クソッ!」


 迫りくる兵士たちを前に、地面に張り付いたまま動けないロイは、攻撃に備えようと全身に力を籠める。


「クッ……ん、のおおおおおっ!」


 歯を食いしばり、渾身の力で力場に抗うが、ロイの力を遥かに凌ぐ力の前に、体はピクリとも動かない。

 それはセシリアたちも同じようで、各々どうにかしようと必死に力場に抗っていた。


「フン……無駄だ。勇者と言っても、専用の装備がなければ、そこそこの実力者でしかないことは調査済みだ。ましてや、それ以下の女共などに私の力場に抗えるはずないだろう」


 マレクは両手を広げると、これから起こるであろう虐殺の光景を思い浮かべて悦に入った表情を浮かべる。


「さあ、聞かせておくれ。世界を救った勇者の断末魔とやらを!」


 その叫び声に呼応するように、兵士たちがロイたちへと一斉に手にした武器を振り下ろした。

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