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フードの男

 ロイの常軌を逸した凄まじい攻撃に、


「ヒ、ヒイイイィィ!」

「や、やっぱり勇者様には適うはずないんだ!」


 一度は強迫観念から戦うと決めた兵士たちだったが、仲間がやられるのを見て、後ろに控えていた者たちが武器を放り捨てて逃げ始めた。


「お、おいっ、勝手に逃げだすな! 家族がどうなってもいいのか!?」


 再びの事態にアベルが慌てたように脅しをかけるが、もはや兵士たちの考えを改めることはできなかった。


 まるで蜂の巣をつついたように混乱する兵士たちを見て、ロイが喜色の声を上げる。


「よし、包囲網に穴が開いたぞ! 今の内に脱出を……」


 この機を逃すまいと、ロイは一気に駆け出そうとするが、


「――うぐっ!?」


 突如として体が重くなり、堪らずその場に膝をつく。


「な、何だ? か、体が……」


 突然の異変に戸惑うが、油断するわけにはいかないとロイは顔を上げて武器をどうにか構えながら辺りを注視する。

 しかし、幸いにも兵士たちは逃げるのに必死で、ロイの異変に気付いていないようだった。


「うっ……グッ」


 その間にも体にのしかかる重圧はさらに大きくなり、最早立っていられなくなったロイは地面にうつ伏せ状態で張り付けられる格好になる。


「み、皆……だい…………ぶ……か?」


 仲間たちを心配したロイが後ろを振り返ると、


「すみ……ません…………これは……」

「ダメ…………みたい」

「…………」


 セシリアとリリィ、エーデルの三人とも同じ症状に見舞われているようで、苦し気に地面に突っ伏していた。


「……全く、この程度の侵入者相手に見苦しいものだな」


 すると、不思議とよく耳に届くバリトンボイスが辺りに響く。


「――っ!?」


 その声が響き渡った途端、これまで逃げ惑っていた兵士たちがピタリと動きを止め、アベルが緊張した面持ちで背筋を伸ばす。


 突如として訪れた静寂の中、コツコツと甲高い足音を響かせながら、フードを目深に被った何者かが現れる。


「あ……ああ……」


 その者の顔を見た途端、アベルの顔がみるみると青ざめ、体が震え出す。


「アベル、侵入者の始末程度にいつまでかかっておるのだ」

「はっ、そ、その……相手が勇者だけあってその……」

「誰が言い訳をしていいと言った?」

「はっ! も、申し訳ありません、マレク様!」

「……フン、まあいい。貴様にはまだ役に立ってもらわねばならないからな」


 現れたフードの男、全ての元凶でありこの研究所の責任者であるマレクは興味なさそうに吐き捨てると、フードを取って自身の顔を晒す。


「「「「――っ!?」」」」


 その顔を見たロイたちは、一様に息を飲んだ。


「……フッ」


 そんなロイたちの反応を見て、マレクは唇の端を吊り上げて笑った。

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