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経験の差

 兵士たちが動いたのを見たロイは、短く息を吸いこむと、後ろに控えるセシリアとリリィに声をかける。


「――っ、来るぞ。それじゃあ、作戦通りに!」

「わかりました」

「任せて」


 二人が力強く頷くのを確認したロイは視線を逸らすと、自分たちの後方で地面に這いつくばって何かを探しているエーデルに声をかける。


「エーデル。そっちの方はどうだ?」

「ゴメン、まだしばらく時間がかかりそう。悪いけど、時間稼ぎよろしく」

「そっちは任せろ。だから頼むぞ」

「勿論、ロイ、愛しているわ」

「……俺もエーデルを信じてるよ」


 いつものやり取りに苦笑しながらも、ロイはそのやり取りのお蔭で肩の力が抜けていることを自覚し、心の中でエーデルに感謝すると、セシリアとリリィの脇を抜けて前衛へと躍り出る。


 ロイが二人の前へと進み出ると、雄叫びを上げながら襲い掛かってくる兵士たちと目が合う。

 その顔には、決死の覚悟を決めたものの、意に沿わない決定に従わざるを得ない悲壮感が漂っていた。


「…………」


 おそらく彼等にも守るべきものがあり、その為にやりたくもない命令に従わなければならないのであろう。


(だがらといって、他人を犠牲にしてもいい理由なんてありはしない)


 お互い譲れないもののために戦うのだ。ならば、相手にどんな理由があっても遠慮なんかする必要はない。ましてや相手は、魔法の力場によって能力が底上げされており、少しでも油断を見せれば、あっという間に命を刈られてしまう危険性がある。


「恨んでくれても構わないからな」


 ロイはそう宣言すると、勢いよく剣を引き抜くと同時に、溜めていた力を解放する。


「烈風斬・円!」


 目の前に迫った兵士たちを薙ぎ払うように、真空の斬撃を放つ。

 その攻撃は、力場によって兵士たちの体を僅かにのけ反らせるほどしか効果がなかったが、一先ずは狙い通りだった。


「はあああっ!」

「やあああっ!」


 すると、すぐさまセシリアとリリィの二人がロイと入れ替わるように前へ出て、烈風斬に驚いてのけ反った兵士の手にした武器目掛けて、自身の得物を振り下ろす。


「あ、えっ!?」

「あつっ、し、しまった!」


 いくら力場によって能力を底上げされていても、武器までは強化されていなかったようで、二人の正確無比な攻撃によって、兵士たちの武器が真っ二つに折れる。


「まだまだっ!」


 武器を失った兵士たちに向かってロイが渾身の一撃を繰り出す。


「剛・猛爪撃!」


 ――シュヴァルベ式刀剣術、流型二式・剛・猛爪撃。

 体を一回転させ、自身の体重に遠心力を上乗せした強烈な横薙ぎの斬撃を繰り出す攻撃で、その威力は相手の骨ごと一刀両断する威力を持つ。


 直撃すれば絶命は免れない一撃を、兵士たちは防御することもままならぬまま、まともに受け、斬撃が通過すると同時に吹き飛ばされる。

 しかし、力場によって防御力まで底上げされている兵士たちには、体を両断するまでの効力を発揮するには至らなかったが、その体を壁際まで吹き飛ばすには充分だった。


「ぐえ……」

「がはっ……」


 吹き飛ばされた兵士は、壁に強かに体を打ち付けられてそのまま気絶する。


「…………ヒィッ!」

「マ、マジかよ……」


 その凄絶な威力を目の当たりにした兵士たちは、一度覚悟を決めたはずなのだが揃って青ざめ、足を止める。

 自分たちが戦おうとしていた者の実力を知って、今更ながら恐怖を覚えたのだ。


「――らぁっ!!」


 しかし、恐怖で竦みあがっている者にロイが手心を加えるはずもなく、近くにいた兵士を片っ端から斬り伏せていく。


「がはっ!?」

「ぐふっ…………」


 ロイの攻撃は、力場によってダメージそのものはたいしたことないはずなのだが、吹き飛ばされた兵士たちは、ロイを呆然と見やったまま立ち上がってくることはなかった。

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