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見抜かれていた作戦

 杖の先から飛び出た光の玉は、勢いよく振り下ろされた速度とは反比例してふよふよと漂うように壁に吸い込まれると、パンッと破裂したような音を立てる。同時に、辺りに響き渡っていたけたたましい音がはたと止まる。

 静寂が戻ったのを確認したエーデルは、耳を押さえながら満足そうに頷く。


「……なるほど、やっぱりね」

「何かわかったのか?」

「ええ、この研究所全体にかかっている魔法、その正体を見たりって感じね」


 ロイの質問にエーデルはニヤリと笑ってみせると「まあ、その時を楽しみにしていて」と自信をのぞかせる。


 どうやらこれ以上は、説明する気はないようだ。


 だが、エーデルが頼りになるという状況は願ってもないことだった。ロイは全員と目を合わせて覚悟のほど確認すると、力強く頷く。


「よし、それじゃあ行こうか。反撃の時間だ」


 ロイの言葉に、全員の「はいっ!」という掛け声が重なった。



 ロイたちがセシリアのいた牢から飛び出すと同時に、


「何処に行こうというんだね?」


 武器を構えた兵士たちがぞろぞろと現れ、ロイたちを包囲するように展開する。

 兵士たちの後ろには、嗜虐的な顔で歪んだ笑顔を見せる赤い髪の男、アベルがいた。


「この研究所の初めての不法侵入者が、まさか勇者様だとは思わなかったよ」

「……久しぶり、というべきなのか?」

「そうだな。こっちはもう二度と会いたくないと思っていたんだがな」


 アベルは大袈裟に肩を竦めてみせると、心底呆れたように笑う。


「せっかく穏便にこの国から出て行ってもらおうと負ける提案をしたのに、こっちの思惑通りには動かないし、子悪党を集める組織を一つ潰されたと思ったら、ここにまで辿り着くなんて……本当、勇者という存在は厄介だよ。あのお方が危惧した通りだ」

「あのお方というのは、マレク・カイザー・モナルクヘルシャーのことか?」

「ほう……」


 ロイの指摘に、アベルが感心したように声を上げると、警戒するように目を細める。


「まさかマレク様にまで辿り着いているとはな……いや、ここまで来ているのだから、それは必然だな」

「観念しろ。お前たちの野望も、この研究所も今日で終わりだ」

「終わり? クックック、それは異なことを言う」


 アベルは体を折り曲げ、狂ったように笑いながら叫ぶ。


「勇者様は、まだ自分の置かれている状況が見えないようだな。既に蛇の腹の中に収まっているのに、それが理解できていないカエルのようだ。終わっているのはお前たちの方だよ。それはお前等をここまで導いた自称正義の味方の情報屋連中も、な」

「な、何だって?」

「まさか気付かれていないとでも思ったのか? きっと今頃は、連中の死体が路上に転がっている頃だろうぜ」

「クッ、イン……オニキスさん」


 ロイは悔し気に歯噛みをすると、地上に残っているオニキスたちの無事を祈った。

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