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一閃

 ロイは姿勢を低くして一気に駆け出すと、腰に手を伸ばしてカインから借りた片手剣を引き抜く。手前にいた兵士に音もなく近付くと、剣を水平にして兵士の喉元目掛けて高速の突きを繰り出す。


「ひゅごっ!?」


 まだ状況を理解し切れていない兵士は、ロイの攻撃に反応できるはずもなく、棒立ちのまま喉を貫かれ、奇妙な悲鳴を上げる。


「ヒイィィッ、あ、あなたは……」


 同僚が成す術なく殺され、もう一人の兵士が涙目になりながら手にした槍を構えるが、


「ふっ!」


 ロイは片手剣を横薙ぎにして最初に剣を突き刺した兵士の首から上を斬り飛ばすと、そのままの勢いでもう一人の兵士を壁へと突き飛ばし、肉薄して横隔膜の下から上へ剣を突き刺す。


「な……で…………どう…………て?」


 腹部を剣で刺された兵士は、どうして自分がロイに襲われたのかわからないのか、目を大きく見開いたまま、口から大量に血を吐いて倒れた。


「すまない。せめて今、楽にするから」


 ロイは一言謝罪の言葉を口にすると、まだ息がある兵士の背中に剣を突き刺して楽にしてやった。



「…………ふぅ」


 辺りに敵の気配がないことを確認したロイは、剣についた血を振り払いながら大きく嘆息する。


 ロイにとって、別にこれが初めての殺人というわけではなかったが、何度経験しても人を殺すという行為には慣れなかった。

 魔物を殺すこととは違い、殺人をする度に、心の中に決して癒えることのない黒いシミができていくような気がした。

 ロイは自分の胸を乱暴に掴むと、心を落ち着かせるために何度も深呼吸をする。


 すると、


「ロイ、何か凄い音がしたけど大丈夫……わっ!」


 騒ぎを聞きつけたエーデルたちが慌てたように現れ、ロイの足元に転がる二つの死体を見て、顔をしかめる。


「……もしかしなくても、見つかったのね?」

「ああ、話し合うこともできたかもしれないが、騒がれる可能性が高いと判断して、咄嗟に、な」

「ううっ……どうか成仏してください。そ、それにしても、何だか熱くない? さっきまでは少し寒いくらいだったのに、ここに来たら……ってわっ!?」


 死体から距離を取りながらやって来たリリィが、汗を拭いながらある一点を見て目を見開く。


「ロ、ロイ、何だかあそこの岩だけ赤いんだけど……しかも、めちゃくちゃ熱いんだけど?」

「あそこは……そうか、そういうことか……」


 近付くだけで汗が吹き出してくる壁を睨むように見つめながら、ロイが自分がついさっき見て来たことを話しはじめる。

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