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変わり果てた姿

「…………行ったか」


 男たちの姿が完全に見えなくなったところで、ロイは大きく息を吐いて立ち上がる。


「…………」


 このまま外へ出ていくことも考えたが、男たちが放り投げてきた黒い袋の正体が気になったロイは、ゆっくりと手を伸ばして黒い袋を開けてみる。


「――っ!?」


 袋の中を見たロイは、驚愕の表情で固まる。

 ある程度予測していたことだが、袋の中身は死体だった。

 顔は多少頬こけているが、目立った外傷は見当たらない。だが、何をされたのかはわからないが、首から下は、まるで中身を無理矢理搾り取られたかのようにやせ細り、殆ど骨と皮だけになっていた。


「……まさか!?」


 ロイは最悪の事態を想定し、他の黒い袋を次々と開けていく。

 残りの袋には、幸か不幸かセシリアの姿はなかった。


 しかし、


「そ、そんな……」


 最後の袋を開けたところで、ロイは苦悶の表情を浮かべる。


 最後の袋に入っていた死体は、ロイの知っている人物だった。


「……コープさん」


 それは、セシリアを探してガトーショコラ城を訪れた時、彼女を探す手伝いをしてくれた見張りの兵士だった。

 どうしてコープが? と思うが、その答えには思い当たる節があり過ぎた。


「もしかしなくても、俺の所為……なんだろうな」


 つまるところ、コープはロイの頼みでセシリアを探して城内で聞き込み調査を行ったことが原因で目をつけられ、ここに連れて来られたのだろう。


「…………クソッ!」


 セシリアがまだ犠牲になっていなかったのは喜ぶべきことなのかもしれないが、コープの無残な死に様を見て、ロイは血が滲むほど唇を噛み締める。

 もし、コープが申し出て来た時にあの申し出を断っていたら……そう思わずにはいられなかったのだ。

 ロイは目を見開いて死んでいるコープの目元に手を這わして瞼を閉じさせてやると、絞り出すように語りかける。


「……すみません、コープさん。あなたの敵は必ず打ちます……それだけが、俺に出来る精一杯のことですから」


 決意の言葉を口にしたロイは、目を閉じて祈りを捧げようとすると、


「えっ?」


 突如として小部屋の入り口が音を立てて閉まりだした。


「な、ななっ!? マズイ!」


 このままではこの部屋に閉じ込められる。ロイは慌てて起き上がると、出口目掛けて一目散に駆け出す。

 しかし、扉の締まるスピードは思ったより早く、全力で走っても間に合うかどうかは五分五分に思われた。


 しかし、ここで取り残されたら命にかかわる事態に陥ると、ロイは確信していた。


「こんのおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 扉の間に挟まれる恐怖を振り払うように、ロイは叫び声を上げながら渾身のダイブをする。

 次の瞬間、岩の扉が重苦しい音を立てて閉まる。


「――っ、あがっ!?」


 すんでのところで扉に挟まれなかったロイは、脱出した勢いを殺しきることができず、反対側の壁に強かに体を打ち付ける。さらに、その振動で近くに備え付けられていた燭台が外れ、火を覆っていたガラスが割れて辺りに派手な音を立てる。


 すると、


「な、何だ」

「もしかして、装置に不具合でも起きたか?」


 ガラスの割れる音を聞いて、先程の兵士たちが戻って来た。


「クッ、こうなったら……」


 兵士たちの姿を見たロイの行動は早かった。

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