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それでも変わらないいつものやり取り

 地下の研究所は、元々あった上下水道に横穴を掘り進めて作ったのか、岩肌が剥き出しとなり、光源もエーデルが光魔法、イルミネイトの魔法を使っていなければ碌に視界も利かない、研究所とは名ばかりのただの洞穴も同然だった。


「本当にここが研究所……なのか?」

「間違いないわね」


 ロイの疑問に、エーデルが即答する。


「確かに一見するとただの洞穴にしか見えないけど、この壁、地震などで崩落しないようにエーテルコーティングが施されているわ。詳しく調べてみないとわからないけど、他にも色々な魔法効果があるみたい……ハッキリ言って、嫌な予感がするわ」


 エーデルは珍しく弱気な発言をすると、震える手で、杖の先で弱々しく明滅するイルミネイトを指差す。


「さっきから何かの干渉を受けているのか、上手く魔法を練ることができないの。簡単なイルミネイトですらこの有り様だから、他の魔法……特に制御が難しい魔法となると、下手したら暴発しかねないわ」

「それじゃあ、エーデルの魔法は?」

「ええ、この研究所内にいる限り、私の魔法。特に攻撃魔法は役に立たないと思ってもらっていいわ……補助魔法ならばもしかしたらだけど、私はそもそも補助魔法が得意じゃないし……」

「つまり、エーデルさんは役立たずってことですね?」


 弱気な発言をするエーデルに、水を得た魚のようにリリィが含み笑いを浮かべながら実に楽しそうに話す。


「大丈夫ですよ。この狭い地下ならば、魔法なんかに頼らなくてもボクとロイでどうにかしますから。役立たずのエーデルさんは、後ろで自分の身だけを守っていて下さい」

「ぐぎぎぎ、こ、小娘が……」


 リリィの挑発に、エーデルは額に青筋を浮かべながら唸る。

 それを見たリリィは、益々調子に乗る。


「ふふ~ん、まさか、エーデルさんのそんな顔が拝める日が来るとは思ってもみませんでした。せっかくだから目に焼き付けておきたいので、よく見せて下さい」

「い、いやよ。ちょっと離れなさいよ!」


 整った顔を大いに崩しながら顔を背けるエーデルを見て、リリィが頬を紅潮させてエーデルの顔を見ようと彼女の周りをぐるぐると回る。


 これ以上放っておけば今の立場も忘れて口論を始めそうな雰囲気に、ロイが二人に釘を刺す。


「リリィ、その辺にしておいて、何か手掛かりはないか探ってくれ。エーデルも、とりあえず戦闘になる前に、どの魔法が使えるか確認しておいてくれ」

「は~い」

「……わかったわよ。とりあえず少し時間を頂戴。何ができるか色々と試してみるわ」


 ロイの言葉に二人の女性は素直に頷くと、リリィは周辺の調査を、エーデルは杖を掲げて小声で魔法を唱え始める。


「さて、早くセシリアを探さないとな」


 女性陣が動くのを確認したロイは、自分も調査に乗り出すのであった。


 それを遠目に見ていたインは、


「……ふむ、流石は勇者、パーティーのリーダーとしての器は中々のものだな」


 誰にも聞こえない声で、テキパキと動くロイを褒めた。

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