侵入者
薄暗い地下に、男たちの呑気な声が響く。
「やれやれ、ようやく食事が終わってくれたか」
「毎日あの絶叫を聞かされるこっちの身になって欲しいよな」
「全くだぜ。こんなことをするために仕官したわけじゃなかったんだがな……」
「まあ、その分の金はもらっているんだ。魔物がいなくなって解雇された連中に比べれば、仕事があるだけまだマシだろう?」
「そりゃそうだ。とっとと残りをやっちまおうぜ」
「だな。ったく、見回りなんて意味あるのか?」
男たちは互いに苦笑すると、肩を竦めてみせる。
見回り、それが男たちに与えられた仕事のはずなのだが、こんな場所に侵入者が来るはずないと思っているからか、その仕事ぶりは決して褒められたものではなく、自分の周囲だけをちらと見やりながら退屈そうに話を続ける。
「……それにしても。ここにいると、何だかやけに疲れるよな?」
「そりゃ、こんな薄暗いところにずっといたら、気が滅入っちまうからな。やっぱ人間は、日の下で活動してなんぼなんだろう」
「確かにな。早いところ残りの仕事を済ませちまおう。後はさっき死んだ奴の処理をしなきゃならないんだっけか?」
「全く気が進まないがな。だって今回の犠牲者って……」
「シッ! それ以上、口にするのは流石にマズイだろう」
「おっと、そうだったな。口は災いの門……だからな。俺たちは何も考えない。ただ、言われたことをやるだけだ」
「そうそう、余計な詮索は身を滅ぼすだけだからな」
男たちは「くわばらくわばら」と念仏を唱えるかのように小さく拝むと、足音を響かせながら去っていった。
「……行ったようだな」
男たちがいなくなって暫くして、暗がりの中からインが姿を見せる。
「…………本当に見つからないんだな」
インの後から暗がりから出て来たロイが、インがたった今みせた技に驚嘆の声を上げる。
「あの兵士たち、俺たちがすぐ近くにいたのに、全く気付いた様子がなかった。こんな芸当ができるなんて、インってば本当に凄いんだな」
「別にたいしたことではない。俺の技は、捜そうとしなければ見つかりにくくなるだけだからな」
インの能力とは、周囲の気の巡りを悪くして、相手に認識されにくくなるというものだ。
しかし、この技は、相手が警戒態勢を敷いていた場合にはあっさりと見つかってしまうという弱点があり、先程兵士たちがロイたちに気付かなかったのも、侵入者がいるはずがないと思っていたから見つからなかっただけだった。
自分の特技を説明し終えたインは「言っておくが俺の戦闘能力は皆無に等しいから、当てにするなよ」と付け加えると、何やら紙片を取り出す。
どうやら兵士たちの巡回について詳しく書かれたメモのようだった。
「……これで連中が次に来るまでかなり時間が空く。その間に……」
「研究所のどこかにいるセシリアを見つけ出すんだな?」
ロイの言葉に全員が頷き、行動を開始した。




