屈辱と諦観
いつも私の作品を読んでいただき、ありがとうございます。柏木サトシです。
突然ですが、ひとつお知らせがございまして、この場を借りてお伝えしたいと思います。
今週、私の商業作家としての作品『異世界スーパーマーケットを経営します』の第二巻が発売となります。日付では30日となっておりますが、28日には店頭に並ぶと思われます。
こうして二冊目の本が出せたのも、読者の皆さんが私の本を買って下さったお蔭です。本当にありがとうございます。
デビュー作は受賞作であったこともあり、読者の皆様を楽しませるつもりであっても、賞レースで勝ちあがるために作品を作った。という部分を完全に消し去ることができなかったことが心残りでした。ですが、今作は読者の皆様を楽しませることを第一に、自分が最高に面白いと思うものを形にしてみました……ですから是非ともお買い求め下さい。と、言いたいのですが、色々な事情があり、値段が文庫にしてはお高い設定となっています。特に少ないお小遣いをやりくりする学生さんは厳しい値段設定と思われますので、絶対に買って下さい!……とは言えないです。
ただ、本がたくさん売れると私の今後の作家人生に大いに繋がりますので『柏木サトシ』という人間に先行投資してもいい、たまには人助けでもしてやってもいいかな?と思われた方は、お買い求めいただけると幸いです。必ずや、その期待に応えられるように「作品」という形で示したいと思います。
また、イラストを担当してくださったなかばやし黎明先生の超美麗なイラストは今作も健在ですので、お買い求めいただかなくても書店に立ち寄った際は、是非手に取って見て下さい。
さて、長々と宣伝を書いてしまい大変申し訳ございませんでした。今作「実直勇者のその後の伝説」は今後も週二ぐらいのペースで更新していければと思いますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。
それでは、本編をお楽しみください。
カリントウから武道大会に出るためにガトーショコラ王国へやって来たアベルは、師匠であるセシリアの父親の薦められた武器屋でとっておきの剣を用意してもらい、武道大会の予選へと挑んだ。
当時のアベルは完全に天狗になっており、予選大会のレベルを見て自分の勝ちは揺るがないと信じて疑わなかった。
だが、そんなアベルの前に思わぬ強敵が現れる。
「そう……俺はあの屈辱を決して忘れない」
アベルは憤怒表情を浮かべると、わなわなと震え出す。
今にも人を殺しそうな雰囲気にアベルに、セシリアは怯えながらも、話の続きを促す。
「ま、まさか……アベル殿はその人に負けたのですか?」
「ああ、負けたよ。完膚なきまでに叩きのめされた……しかも」
アベルはセシリアとの間にある鉄の檻を掴むと、フラストレーションを爆発させるように強く揺らしながら喚き散らす。
「あいつ、刃すらついていないなまくらで挑んできやがったんだ! 最強の戦士を決める由緒ある武道大会に、そんな半端な覚悟で挑んできた奴なんかに、俺は手も足も出なかった。わかるか、その時の俺の悔しさが」
「ア、アベル殿」
「俺がお前等の下でコツコツとやってきたことは、全て無駄だったんだよ。いくら天才だ! 最強だともてはやされても、世の中にはもっと上がいる。それを知った時、俺の中で剣を持つという理由がなくなったんだ」
「そ、それだけの理由で……」
「それだけの理由だと!?」
セシリアの言葉に、アベルは目くじらを立てる。
「俺はな、そこら辺の有象無象なんかと違って、あの大会ではっきりとした結果を出す必要があったんだ。最低でも本戦のベスト16以上に残って、自分の力を見せつけないといけなかったんだ。それなのに……」
結果はまさかの予選落ち。その結果にわざわざ遠出から息子を応援するためにやって来ていたアベルの両親は大いに落胆し、アベルに二度と帰ってこなくていいと冷たく言い放ったという。
「わかるか!? たった一度、結果が残せなかったたけで、俺は全てを失ったんだ。家から追い出された俺の今後なんて言うまでもない。どこの誰か知らないが、少し俺より優れていたからといって、全てを奪った奴を俺は許すことができなかった」
そして、そんな絶望の縁にいたアベルに手を差し伸べるものが現れる。
「連中の言葉に、最初は半信半疑だった俺だったが、そのトップに立つ人間の顔を見て、俺は考えを改めることにしたよ」
「アベル、少しお喋りが過ぎるぞ」
すると、恍惚の表情で話し続けるアベルに、注意する声が響く。
「やれやれ、口が達者なのは素晴らしいのだが、その分口が軽すぎるところがお前の欠点だな」
「――っ!?」
次に現れた者の声を聞いたセシリアは、思わず身を固くする。
その声に聞き覚えがあったからだ。
バクバクと心臓が早鐘を打つ中、ゆっくりと姿を現した人物を見て、セシリアは絞り出すように声を出す。
「ライジェル……エレロ」
「やあ、どうやら君は我が弟と旧知の仲だったようだな」
「お、弟!? あなたとアベル殿が? えっ、でもだって……」
セシリアの記憶の中では、アベルはエレロという姓ではなかったはずだ。
「ハハハッ、別に姓が違うからといって、血縁関係がないなんてことはないだろう。特にそれが巨大な力を持った名家となれば、珍しいことでも何でもない。君のところは違ったのかな?」
「わ、私のところは田舎でしたから……」
セシリアの父親は実に朴直な人で、母親以外の人を愛する姿など想像もできなかった。
恥ずかしそうに顔を真っ赤にするセシリアを見て、ライジェルは豪快に笑い出す。
「うむっ、武人として育ったせいか、そんじょそこらの貴族の娘とは違い、スレていないところが実に素晴らしい。いやはや本当に……」
「こんな娘から死ぬまで魔力を搾り取らなければならないなんて、実に残念だ」
「……えっ?」
まるで、そこら辺に買い物にでも行くような気やすい感じで言われた言葉に、セシリアは全身から血の気が引いていくのを実感した。




