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囚われの重騎士

「う……ううっ」


 体中を走る鈍い痛みに、セシリアは顔をしかめながら目を開けた。


「ここは……」


 状況を確認しようと身じろぎをすると、途端にジャラジャラと鎖が鳴る音が響き、自分が鎖に繋がれていることに気付く。


「わ、私は……うくっ!?」


 両手と両足がそれぞれ鎖に繋がれ、まともに立ち上がることもままならない中、ライジェルに斬られた胸の傷が痛み、セシリアは苦痛に顔を歪める。


「あっ……」


 そこでセシリアは、自分が着ていた服を剥ぎ取られ、体を隠すものが包帯だけになっているのに気付いて思わず赤面する。

 だが、辺りは真っ暗闇で一メートル先すらも碌に見えないので、誰かに見られることがないと思い、密かに安堵の溜息を吐く。

 手足にひんやりと伝わってくる感覚から、自分の座っている場所がゴツゴツとした岩であること以外は、何一つとしてわからなかった。


 どうして自分はこんなところにいるのだろうか。自分の置かれた状況が全く分からず、セシリアが混乱していると、


「――っ!?」


 暗闇の向こうから、コツコツと足音が聞こえてきた。


 さらにゆらゆらと揺れる小さな赤い光、おそらくカンテラの炎と思われるものが見え、徐々にその大きさを増していく。


 そして炎がセシリアのいる檻の前で立ち止まると、カンテラの持ち主が呆然と佇むセシリアに話しかける。


「ほう、もう起きていたか」

「そ……んな………………まさか!?」


 セシリアはわなわなと唇を震わせながら、目の前に立つ人物をみやる。

 燃えるような真っ赤な髪の毛に、自信に満ちた力強い目、筋力はさほどついているように見えないが、無駄な肉はついていない。着ている服は、貴族が着るような上等な衣服。記憶の中の面影とは随分と違っていたが、要所に見える特徴は、間違いなくセシリアが探している人物と瓜二つだった。


「どうしたセシリア、俺の顔に何かついているのか?」


 セシリアの反応が面白かったのか、その人物はクツクツと笑い出す。

 そのまま狂ったように笑い始める人物に、セシリアは悲痛な叫び声を上げながら問いかける。


「アベル殿! アベル殿ですよね!? あなたは私と一緒に剣の修行をしたアベル殿に間違いないのですよね?」

「ああ、間違いないぜ。どうした? 涙目になって、そんなに俺に会いたかったのか?」

「はい、会いたかったです……ある日、忽然と姿を消してしまったアベル殿を、皆とても心配していたのです。どうして私たちの下に戻って来て下さらなかったのですか?」

「あ~あ、だからか」


 アベルは自分の後頭部をガリガリと掻くと、大袈裟に嘆息する。


「全く……余計なことをしてくれたもんだ」

「えっ?」


 アベルの思わぬ態度に、セシリアは困惑する。


「な、何がですか。私がアベル殿を捜すのがそんなに迷惑だったのですか?」

「そうだよ……ったく、お前の所為でとんだ苦労をしたじゃないか」

「苦労?」

「ああ、こう見えて今の俺は中々に忙しくてね。中でも俺たちを嗅ぎまわる連中の排除に余念がないんだよ」

「連中、排除?」


 アベルの言っていることが全然理解出来ないセシリアは、どうにかして話し合おうと必死に呼びかける。


「アベル殿、武道大会に出るためにカリントウから旅立ったあなたは、これまで一体何をやっていたんですか? どうして、こんな……こんな……」

「人攫いのような真似をしてるか、だって?」


 その言葉に、セシリアは静かに頷くと、挑むようにアベルを見つめる。


「…………」

「…………」


 二人はしばらくの間、見つめ合っていたが、


「……はぁ、やれやれ」


 全く折れる気配を見せないセシリアに、アベルが大袈裟に嘆息してかぶりを振る。


「まあいい、昔のよしみだ。どうせこうして顔を合わせるのも最後だから教えてやるよ」

「最後?」

「気にするな。すぐに理解する」


 アベルはセシリアの疑問を一蹴すると、今日までの出来事を話し始める。

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