勇者VS武道家④
「キリン選手、物凄いラッシュで襲いかかりますが、ロイ選手は華麗に回避していく! キリン選手、どうしたのでしょうか。攻撃にさっきまでの繊細さがまるでありません!」
「――っ、うるせぇよ!」
マシューのアナウンスが気に障ったのか、キリンが額に青筋を立てながら攻撃を仕掛ける。
「おい、ロイよ。もしかして、俺様の血涙華が時間切れになるのを待つつもりか?」
「さあなっ!」
マシューのアナウンスに感化されたのか、やや大降りになったキリンの蹴りの隙を見逃さず、ロイは反撃に転じる。
「おっと……」
だが、その攻撃をキリンは信じられない反射速度で回避すると、一気に距離を取った。
「…………はぁ」
キリンとの距離が空いたことでようやく一息つけたロイは、大きく溜息を吐く。
顔を上げると、キリンも流石に疲れてきたのか、油断なくこちらの様子を伺っていたが、明らかにその顔には疲労の色が浮かんでいた。
おそらく、血涙華の制限時間が近いのだろう。
「…………」
油断なく剣を構えながら、ロイはどうするべきか思案する。
このまま逃げ続ければ、近いうちにキリンの限界がやって来る。そこをつけば、ロイの勝利は間違いないだろう。
(だけど、そんな勝利は認められない)
正々堂々互いに全力を尽くし、その上で勝つ。
他人が聞いたら愚かだと笑うかもしれないが、卑怯な勝ち方で満足できるロイではなかった。
それに、ある程度キリンの癖を見抜くことが出来た。
ここからは逃げだけでなく、攻めに転じる。そう決めたロイは、
「今度はこちらから行くぞ!」
キリンが出てくるより前に自分から打って出た。
「おっ?」
これまで防戦一方だったロイが前に出て来たことに、キリンは自然と笑みが浮かぶのを自覚する。
「ヘヘッ、そうこなくっちゃな!」
犬歯を剥き出しにすると、馬鹿正直に真正面から攻めてくるロイを迎え撃つために前へ出る。
「せいっ!」
「おらぁ!」
舞台の中央で、ロイの剣とキリンの足が激突する。
「くうぅ……」
次の瞬間、ロイの体が大きく吹き飛ばされる。
「何と!? 皆さん、ご覧になりましたか? 剛剣で知られるロイ選手の斬撃を、キリン選手が弾き飛ばしました! どうやらキリン選手は自身をパワーアップさせる技を使っているようですが、果たしてロイ選手はこれにどう対応していくのでしょうか!?」
「どうもこうも、正面から叩き潰すまでだ!」
吹き飛ばされた姿勢からどうにか着地したロイが雄叫びを上げると、低い姿勢からキリンへと襲い掛かる。
それを見て、キリンはロイを叩き潰すように高く飛んで上から攻撃を仕掛ける。
「フンッ!」
上空からの飛び蹴りに、ロイは下から斬り上げるように攻撃する。
またしても、ロイの剣とキリンの足とが交錯する。
しかし、今後は先程とは違う結果になる。
「だりゃああああああああああああああああああああっ!!」
ロイは力任せにキリンの体ごと吹き飛ばす。
「な、何だと!?」
まさかの事態に、キリンが驚愕に目を見開く。
一瞬、何が起きたかわからずキリンは混乱するが、すぐに気を取り直すと、空中で姿勢を制御して着地する。
すると、すぐさまロイからの追撃がやって来るので、
「このっ、舐めるなよ!」
足を振り上げ、再びロイを迎え撃つ。
――だが、
「ぐあっ!?」
またしてもキリンの足はロイの斬撃に打ち負け、吹き飛ばされる。
何故、どうして。ついさっきまで圧倒していたのに、どうして押し負ける。
信じられない事実に、キリンの頭は混乱する。
「クソッ、この俺様が伝説の武具を持たないロイなんかに……」
キリンは顔を真っ赤にして激怒すると、闇雲にロイに責め立てる。
しかし、何度交錯しても、キリンの攻撃はロイによって弾かれていく。
「何故だ! この俺様が!」
「まだ、わからないか?」
キリンの蹴り攻撃を押し返しながら、ロイが静かに口を開く。
「俺が言うのも何だが、キリンの攻撃は単調なんだよ」
「何だと?」
「血涙華で能力を上昇させた所為で、非常に読みやすくなっていると言っているんだ。ここまで言えば、わかるだろう?」
「――っ!? ロイ、貴様!」
ロイがしたことに気付いたのはキリンだったが、
「もう、遅い!」
ロイはキリンの攻撃に合わせて剣を振り、その足を弾き飛ばす。
「これで、決める!」
大きくのけ反り、無防備な姿を晒しているキリンに、ロイは一気に間合いを詰め、大きく振りかぶった姿勢から全力の横薙ぎの斬撃を加えた。




