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三日目の武道大会と貫禄の重戦士

 翌日、武闘覇王祭三日目、今日から二回戦が始まる。


 ロイとキリンの試合は四日目となっており、ロイは今日の試合はないので、エーデルたちと二人の試合を観客席で見届けていた。

 キリンは試合がないとわかると、今日は一日中休むと言って、部屋に引き籠ってしまっていた。

 あの部屋での生活が余程気に入っているようだった。


「さあ、どんどん参りましょう。次は一回戦を華麗に突破した注目選手、セシル・マグノリア選手の登場です!」


 セシルの名前が告げられると、前回同様、女性を中心とした黄色い歓声が武道場内に響き渡る。

 流石に二回目となると恥じらいも多少は余裕が出てきたのか、セシルは観客に笑顔で手を振りながら余裕の表情で入場してくる。

 すると、セシルの変化に目敏く気付いたエーデルが感想を口にする。


「ふ~ん、あいつ、少しは貫禄が出てきたじゃない」

「……そうなのか?」

「うん、二回目というのもあるのかもしれないけど、結構、余裕があるみたいね。呼吸が凄い落ち着いてる」

「そ、そんなことまでわかるんですか?」


 エーデルの尋常でない観察眼に、リリィは目を見開く。


「ここから舞台までどれだけあると思っているんですか? 呼吸の様子なんて、そんなの……わかるんですね」


 エーデルの自信に満ちた表情を見て、リリィはその言葉が真実だと悟る。


「……この前、ロイに絡んでいた貴族の人も、実は全然貴族じゃなくて、ロイに八百長をけしかけて大儲けするつもりだったみたいだし……エーデルさんって何か特別な力を持っているのですか?」

「そうね。少なくとも世界を救った勇者に並んで立つくらいの実力はあるつもりよ……誰かさんと違って」

「うぐぐ……しまった。ヤブヘビだった」

「ほらほら、二人とも試合が始まるぞ」


 気が付けば、戦う二人の入場が終わり、今にも試合が始まりそうだった。

 リリィは慌てて視線を舞台へと戻すと、ロイへと質問する。


「そ、そういえば、今日のセシルさんの相手って誰なの?」

「リア・ガードナーとかいうセシルと同じ槍使いの重装歩兵だな。一回戦は、その堅い守りを活かして相手の武器をダメにしたらしい」

「……何だか凄い時間のかかりそうな試合になりそうだね」

「そうだな。相手の堅い守りをどう突破するかが、勝負のカギになりそうだな」


 ロイが相手の戦力を分析していると、


「二回戦、第八試合、はじめっ!」


 審判が試合開始の合図を告げた。


 ロイが予想した通り、重装歩兵同士の戦いは、良く言えば息を飲むような、悪く言えば退屈な戦いだった。

 攻撃できる箇所が少ないので、互いに隙を作ろうと牽制をし続けるだけで、これといった派手な動きは一切ない。


「さあ、睨み合いを始めて早くも五分、息が詰まるような戦いが続いておりますが、この状況を打破するような動きは見られるのでしょうか!?」


 実況のマシューが上手く言葉を紡いでいるものの、見ている観客の何割かは、早くも二人の攻防に飽きが来ているようで、時々、ヤジを飛ばす者もいた。


 すると、そんな攻防に終止符を打つために動いたのは、これまで地味な牽制に徹していたリアだった。


「せいやっ!」


 リアは、一気にセシルとの距離を詰めると、大きく振りかぶって上段から襲い掛かる。

 しかし、そんな単調な攻撃が通じるようなセシルではない。


「……甘いです!」


 セシルはリアが繰り出した槍の刃を自分の槍の柄で受けると、そのまま柄の上を滑らせるようにして距離を詰めると、


「せいやっ!」


 槍を思いっきり振り上げ、リアの槍を吹き飛ばす。

 自分の吹き飛ばされた槍を呆然と見続けるリアに、セシルは槍を突き付けると、優しく話しかける。


「まだ、やりますか?」


 その言葉に、リアは両手を上げ、降参の意を示す。

 それを見た審判が、手を上げて声高々に宣言する。


「勝者、セシル・マグノリア!」


 勝者の声が響くと同時に、武道場内に歓声が響き渡った。

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