邪魔者は……
そんな憐れな男性を見やりながら、ロイは呆れたように嘆息する。
「あ~あ、エーデル、どうしてあんないじわるをするような真似をしたんだ?」
「う~ん、カン、かな?」
エーデルはロイの腕に頬擦りしながら、男性に取った行動の理由を語る。
「あの人から何かよからぬ気配を感じたのよね。あっ、この人はロイを利用しようとしているな。ロイにとってきっと害悪になるだろうな~って」
「だから、無理矢理追い返したのか?」
「そう、あの人、きっとまた話しかけてくるだろうから、気を付けてね」
「わかった。気をつけるよ」
「ええっ、ロイ、本気?」
エーデルの言葉に素直に頷くロイを見て、リリィが驚きの声を上げる。
「あの人、身なりも凄いしっかりしていたし、ロイにとっていた態度も、凄い丁寧だったじゃない。あんな人が疚しいことを考えているなんて、ちょっと考えられないな」
「フッ、甘いわね小娘」
エーデルはチッ、チッと舌を鳴らしながら人差し指を顔の前で振る。
「人を騙すのに、キチンとした身なりをするのは当然よ。言いえて妙だけど、人を騙すためには、何よりもその人から信用されなきゃ意味がないでしょ?」
「えっ? そ、そう言われれば、そんな気もするかも……」
「そうなのよ。でも、ロイは素直だから人の裏を読むのは苦手なのよね。だから、私がそういう人を見つけた時、積極的にロイに注意喚起するようにしているの」
「実際、エーデルの人を見る目はかなりのものなんだ。過去に何度もそれで助けられたことがあるから尚更なんだ」
「うう、まあ、ロイがそう言うなら……」
ロイの言葉に、リリィはしぶしぶながら引き下がる。
「……あっ!?」
その途中、
「ちょっと、エーデルさん」
「あん、何よ。引っ張らないでよ」
何かに気付いたリリィは、エーデルをロイから引きはがすと、距離を取って耳打ちする。
「もしかしてですけど、ロイが素直に言うことを聞くことをいいことに、自分に都合の悪い人間……ロイに好意を持った女性の排除とかしてないですよね?」
「嫌ね。それをしたからどうかと言うの?」
「…………やってたんですね?」
「あら、その件ならむしろ感謝してほしいくらいよ?」
三白眼で睨んでくるリリィに、エーデルは涼しい顔で言ってのける。
「私がこうやって女どもを削ってきたからこそ、ロイを狙う不埒な輩がいないわけ。私の言っている意味、わかるでしょ?」
「…………なるほど」
リリィは小さく頷くと、親指を立てて笑う。
「エーデルさんグッジョブです。これからもロイにたかるハエの駆除、よろしくお願い致します」
「フフッ、そのハエの中には、あなたも含まれているんだけどね?」
「ハハッ、それは面白い冗談ですね」
「ウフフフ……」
「アハハハ……」
エーデルとリリィは、肩を組んだ姿勢のまま笑いながら互いの腹を殴り続ける。
花も恥じらううら若き乙女二人が、互いの腹を容赦なく殴り続ける姿に、それを見た人々は、顔を青くしながら距離を取るほどだった。
「お~い、じゃれ合うのもほどほどにしておけよ」
しかし、ここに来るまで何度も見た光景なので、ロイは特に気にした様子もなく二人に軽く声をかけて、自分はとっとと武道場へ向けて歩きはじめた。




