過激な再会
外出許可をもらう為に城の入り口に向かったロイだったが、
「え? 城の外へ出られない?」
門番の兵士から、思わぬ返答が帰って来た。
「はい、昨日この城に入るときに注意があったと思いますが、参加者は大会で優勝するか、敗退するまで城から出られない決まりになっています」
「ああ……そういえば、そんなことを言っていたような……」
すっかり忘れていたが、昨日、城に入る前に念を押されていたことをロイは思い出す。
しかし、エーデルに会いに行けないとなると、少々困ったことになりかねない。
ロイは、とりあえずダメもとでこの兵士に尋ねてみることにする。
「あの……実は城の外にいる知り合いに会いたいのですが、どうしたらいいですかね?」
「外の人……ですか?」
「はい、実は城で寝泊まりすることを仲間に伝えていないのです。ひょっとしたら今頃心配して、俺のことを捜してくれているかもしれないので……」
「なるほど。それは早くお知らせした方がいいかもしれませんね」
すると、兵士はロイの言葉を思ったより重く受け止めてくれたようで、親身になって相談に乗ってくれる。
「すみません。規則なので外に出すわけにはいかないのですが、城内で外のお客様と会える場所ならありますので、よろしかったらそちらで探してみたらいかがでしょうか?」
「そんな場所、あるんですか?」
「はい、今日は武道大会がありますから、会場となる武道場は、一般開放されているのです。勇者様が武道大会に出ているのを知っているのであれば、そちらに来ている可能性が高いと思われます」
「なるほど、そうですね。ありがとう、そちらに行ってみます」
「はい、お仲間に会えるといいですね」
ロイは武道場への道を教えてくれた兵士へお礼を言うと、武道場があるという方角へと歩いていった。
ガトーショコラ城は、いくつもの城壁で四つの階層に分けられた、呆れるほどに巨大な城だった。
ガトーショコラ王がいる城が第一層で、将軍や位の高い貴族が生活する地区、敵を迎え撃つ広場と順に続き、ロイが昨日泊まったのは、第三階層と呼ばれる武闘大会の参加者や、一般の兵士の寝床となる建物がある階層。
そして、その外に広がるのが、昨日、予選を行った演習場や、武道場があると呼ばれる第四層なのだが、これが途方もない広さだった。
基本的にこの層は、第二層と同じく外敵を迎え撃つ為に造られた層だそうだが、この層だけで、ロイが住むトルテ村が二、三十個は入ってしまうのではないかと思われた。
歩き続けて二十分、ようやく武道場と思われる建物が見える場所へと辿り着いた。
そこには、既にかなりの数の客が見え、会場が開くのを今か今かと待っているようだった。
「……さて、どうやってエーデルたちを捜すかな」
多すぎる客たちに、人酔いした様子のロイが辺りを見渡していると、
「あの……勇者様?」
何者かがロイに話しかけてきた。
その人物は、見るからに上質な衣服を身に纏った赤毛の貴族と思われる男性だった。
男性は柔和な笑みを浮かべてロイへとにこやかに話しかける。
「あなたは救世の勇者、ロイ様ですよね?」
「はい、何か御用でしょうか?」
「実は、勇者様のお耳に入れていただきたい大切なお話しがあるのです」
「はあ」
「申し訳ありませんが、少しだけお時間をいただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「まあ、少しだけなら……」
できれば一刻も早くエーデルたちに合流したかったが、男性の懇切丁寧な対応に、ロイは佇まいを正して対応する。
「それで、大切なお話しとは?」
「はい、実はですね……」
男性がロイに耳打ちしようと顔を近づけた途端、
「見~つけた!」
「おわっ!?」
ロイは突然、横から誰かに体当たりをするように抱きつかれた。
思わず倒れそうになるロイだったが、すんでのところで踏みとどまると、大きく溜息を吐いて腕にくっついている人物へと話しかける。
「……エーデル、危ないじゃないか」
「そんなことないよ。ロイならきっと受け止めてくれると信じていたから」
ロイの苦言にも、エーデルは全く悪びれた様子もなく、ロイの背中に頬擦りする。
「んふ~、昨日、取り損ねたロイニウムを補充しないと」
「……何だよそれ」
「知らないの? ロイの体から出ている私を癒してくれるフェロモンみたいなものよ」
「いや、全然意味わかんないし」
容赦なく甘えてくるエーデルに、ロイは辟易した様子をみせるも、決してエーデルを無理矢理引きはがそうとはしない。
すると、ロイの腕に絡みついたままのエーデルが、ようやく目の前に立つ男性に気付いたように冷たい声で話しかける。
「それで、ロイに気安く話しかけてくるあんたは誰なの?」
「こ、こらっ、エーデル!?」
無遠慮な態度を取るエーデルに、ロイが慌てて声をかける。
しかし、エーデルはロイを無視して男性へと冷たく言い放つ。
「というわけで、私とロイの感動の再会を邪魔しないでくれる?」
「え? いや、その……」
「聞こえないの? 私は邪魔をするなと言ったの」
そう言うと、エーデルは愛用の杖を取り出して、杖の先に魔力の塊を出す。
「ほら、早く消えないと、物理的に消すことになるわよ」
「ひ、ひぃぃぃっ!」
エーデルに脅された男性は、自分が貴族であるという恥も外聞も捨てて、叫び声を上げながら一目散に去っていった。




