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本日の寝床

「それでは、本日から大会終了まで過ごす部屋までご案内させていただきます」


 予選通過を決めたロイは、係の者によってガトーショコラ王国の城内へと案内された。


 ロイが連れて来られた建物は、予選会場から城の奥へと続く門を抜け、階段を上った先にある建物で、石で作られたいかにも城という言葉が似合うフィナンシェ城とは打って変わり、木と瓦で出来た木造平屋建ての華美という言葉が似合う巨大な屋敷だった。

 歩くたびに軋む音が響く廊下は遥か彼方まで続き、ここからでは廊下の先に何があるか確認できないほどだった。

 部屋の数も既に何十という数を通り抜けて来た。しかし、どの部屋も外から見ただけでは違いが分かりづらく、もし、この中の一つを提供されたら確実に迷うという自信がロイにはあった。


 そんなロイの心配をよそに、係の者は廊下を更に進む。

 案内します。と言われてから既に五分近くも城の中を歩かされていることに流石に不安を覚えたロイは、係の者、丈の長い着物を着た女性におそるおそる尋ねてみる。


「あの……まだですかね?」

「あっ、はい。申し訳ありません。選手の皆様のお部屋は、この廊下の先を曲がった先になりますから」

「この廊下の先……ですか?」


 そう言われても、ここからでは廊下が何処まで続いているか確認できない。

 思わず絶句するロイだが、係の女性はこともなげに言ってのける。


「はい、そうです。この城は他所の国の城と比べて多少大きいそうですが、慣れればどうということはありませんよ。二日もたてば、この建物内の構造は把握できると思います」

「そう……ですか」


 そこまで断言されては、ロイとしては返す言葉がなかった。



 その後も、たっぷり五分は廊下を歩かされてついた先は、


「ムリムリムリ、こんな部屋で過ごせないよ」


 用意された部屋を案内されたロイは、堪らず声を上げた。


 本戦出場者の為に用意された部屋は、ロイの家など二、三件は軽く入ってしまうほどの巨大な部屋だった。

 部屋に入って目の前に広がるのは、選手たちがトレーニングをできるようにと用意された道場ほどの広さのスペースに、各種トレーニング機材が備えられた施設。その奥には、マッサージスペースやサウナといったリラクゼーションスペースがあった。

 他にも、トイレ、バス、キッチンなどの普通の住居にあるものは全て完備されており、さらには室内にも拘わらず、川の流れる庭まであった。

 そして、そんな部屋で過ごす選手をサポートする世話係が五人もついており、そのうち、妙齢の女性から、


「勇者様なら、ありとあらゆる面倒をみてあげますよ。それこそ……普通なら絶対に断るようなことでも、ね?」


 と、耳元で息を吹きかけながら言われたロイは、ここにいては何か取り返しのつかない目に遭うのではないか、と本能的に察し、部屋の移動を申し出た。


「そう言われましてもねえ……」


 ロイからの提案に、ここまで案内してくれた女性は困った表情を浮かべる。


「この建物は、武道大会出場者のお部屋に面積に大部分を割いていますので、他のお部屋は、ここと比べるとかなり見劣りするといいますか……それでもよろしいのですか?」

「それで構いません。大体、こんな広い部屋ではちっとも落ち着きませんよ。本戦で全力を出す為に部屋を用意してくれるなら、俺に合わせた部屋を用意してください」

「はあ……わかりました」


 ロイの必死の懇願に、案内の女性は困ったように頷くと、空いている部屋がないかどうかを確認するために出て行った。

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