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約束された勝利

「見てのとおりです」


 キリンの圧倒的な勝利を見やりながら、セシルがロイに話しかける。


「予選に参加している者は、腕に覚えありといっても、そこまでの実力者は殆どいないのです」

「確かに、キリンの相手はたいしたことなさそうな人ばっかりだったけど……そういえば、前回覇者だっていうライジェルって人はいないのか?」

「いませんよ。そもそも、この予選にはめぼしい戦士は殆ど出ていません」

「ええっ!? そうなの」


 セシルの思いもよらない発言に、ロイは驚きで目を見開く。

 エーデルの話では、この大会はそれなりのレベルだと聞いていたはずなのに……。

 ロイの疑問に、セシルは大きく頷きながら予選大会のレベルが低い理由を説明してくれる。


「実は、過去にこの大会でそれなりの成績を残した者は、予選を免除され、本戦からの登場となります。ですから、ここにいるのは予選を免除された十六人を除く四十八名を選ぶ予選となっています」


 しかも、せっかく予選を突破しても、二回戦で自動的にあたる予選免除者に殆どの者が負けてしまうという。

 結果、最近ではそこそこの実力者たちが、自己満足の為だけに予選に出るちょっとした余興みたいなものになり下がっているらしい。


「当然、今まで参加していなかった猛者たちが出てくることもありますが、そういった者は、予選でぶつかり合わないように運営側で調整されます」


 つまるところ、予選で誰が勝つかも大方予想されており、殆ど形骸化している。といっても過言ではないらしい。


「ですから、ロイさんが時間通りに来れなくてもお咎めがなかったのは、ロイさんの予選通過が既に決まっているからですね」

「決まってるって……まだ戦ってもいないのに?」

「そうです。まあ、ロイさんの出番になればわかりますよ」

「むうぅ……」


 そう言われても、ロイは釈然としなかった。

 確かにセシルの言う通り、この場にいる人間は、噂に聞いていたよりも実力が劣るのは否めない。だが、それでも全員がこの日の為に飽きることなく鍛錬を積み、挑んできたのは間違いないはずだ。そんな者たちを戦う前から勝手に格付けし、更には、誰が勝利するかまで決めてしまうのはいかがなものだろうか。

 そもそも勝負の世界は、常に何が起きるかわからないものだ。

 結果がわからないからこそ、より良い結果を出す為に努力をするのだ。

 ましてや、結果が決まっているからといって、該当の人物を特別扱いしていいものだろうか。

 そういう対象にされるというのは、ロイにとってあまり気持ちのいいものではなかった。


 しかし、例外扱いされるのは嫌だから出場を辞退するというのは、間違っているような気がするし、何よりロイに武器を与えてくれたカインに申し訳ない。


 何より、逃げるという選択肢はロイの頭の中にはないのだ。


「……ああっ、もう、やめやめ!」


 色々考えるのは性に合わないので、ロイは考えるのを辞めることにする。


「難しいことはわからないから、俺は全力を尽くすまでだ」

「ハハハッ、まあ、前衛は考えるより行動するものですからね」


 口をへの字にして憤るロイを見て、セシルは呆れたように肩を竦めた。

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