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プロローグ

はじめまして、柏木サトシと申します。

この度は、実直勇者のその後の伝説2をご覧いただき、ありがとうございます。

この作品は、前作、実直勇者のその後の伝説の第二作品目に当たります。

今作から読んでいただいても、十分楽しめる内容になっていますが、前作から読んでいただくと、より楽しめると思いますので、よろしかったら前作からお読みいただければ、と思います。


それと、私事で大変恐縮ですが、この度、ファミ通文庫様から「異世界スーパーマーケットを経営します」というタイトルでデビューさせていただくことになりました。発売日は、2016年1月30日となっていますので、もし本屋さんに行くことがあれば、商品をお手に取っていただければ幸いでございます。

イラストを担当していただいた、なかばやし黎明先生の超美麗なイラストが目印ですので、それだけでも見ていただく価値は十分にあると思います。


また、ファミ通文庫のHPであるFBオンラインにて、かなりのボリュームで本編の立ち読みも可能ですので、少しでも興味を持っていただいた方は、チェックしてみて下さい。


前書きを長々と書いてしまい、大変申し訳ありませんでした。

それでは、本編をお楽しみください。

 世界を救った勇者、ロイ・オネットは、その生真面目過ぎる性格から人々から実直勇者と呼ばれていた。


 世界が平和になり、勇者からただの一般人になると決めたロイだったが、その真面目過ぎる性格が災いし、普通の生活に上手く馴染めないでした。

 そんな鬱屈する毎日を送るロイに、かつての仲間、プリムローズ・コルテーゼから自国に現れた怪盗ナルキッソスを捕まえてほしいという依頼が届く。

 仲間からの依頼をロイは二つ返事で快諾し、幼馴染のエーデル・ワイス・リベルテと共にプリムローズの故郷であるフィナンシェ王国へと向かった。

 ナルキッソスの捕縛を勇者としての最後の仕事にする。そう決めて辿り着いたフィナンシェ王国だったが、そこでロイは、自分が救世の旅で魔王討伐を優先させるばかりに、訪れた街や、そこに住む人々を蔑ろにしていたことを思い知らされる。

 怪盗ナルキッソスも、ロイが以前に解決したフィナンシェ王国での事件について、事実関係をしっかりと調べなかった為に、ロイの与り知らぬところで犠牲となった者が起こした事件だった。

 この事件を受け、ロイは救世の旅に蔑ろにしていた、世界を見て回るという冒険の初心に帰ってみたいと思い、新たな旅へと出るのであった。


 透き通るような蒼穹と、何処までも続く蒼海のキャンパスに、真っ白で巨大な入道雲が二つの蒼を塗り潰すように天高く舞い登る。ギラつく太陽はこれでもかと地表へと降り注ぎ、その熱で彼方まで続く砂浜には、ゆらゆらと陽炎が発生している。


「海だああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」


 腹の底からの叫び声を上げながら。フィナンシェ王国の事件をきっかけに新たに仲間になったレンジャーの少女、リリィ・リスペットが勢いよく海へと飛び込んでいく。

 この日のリリィは、いつもは三つ編みにしている鳶色の長い髪を上に一つにまとめ、健康的な肢体を包むのは、水色のセパレートタイプの水着のみという格好になっていた。


「ハハハッ、ほら、ロイも早くおいでよ!」


 全身に水を浴びてご機嫌のリリィが手を振ってロイを呼ぶ。


「ああ、今、行くよ」


 黒の海水パンツを身に着け、鍛えた体を惜しみなく晒しているロイが笑顔でリリィへと手を振る。


 現在、ロイたちはビーチへと来ていた。

 フィナンシェ王国から南へ向かう船に乗ること二週間、途中、二回ほど物資補給をして辿り着いたのは、力こそが全てと言い切る武王が統治する王国、ガトーショコラ王国だった。

 この辺りの気候は、赤道に近い事もあり、一年中汗ばむほどの陽気で雨が降ることも少ないので、リゾート地としても有名だった。

 上陸したロイたちは、長い船旅であったのだが、リリィたっての希望で港に併設されたビーチへと足を運んだ。


「……ったく、お子様は元気でいいわね」


 ロイの隣には、ロイの幼馴染にして、救世の旅も同行した世界最高峰の魔法使い、いつもの黒マント姿のエーデルがあまりの暑さにうんざりしたように呟く。

 暑さでへばっているエーデルを見て、ロイは思わず苦笑する。


「せっかくだから、エーデルも水着を着ればいいんじゃないか?」

「いやよ!」


 すると、エーデルは激しくかぶりを振りながら否定の言葉を口にする。


「どうして、こんな衆人環視の前で私の玉のような肌を晒さないといけないのよ……そもそもガトーショコラじゃなくて、フロマージュに行くはずだったのに……」


 フィナンシェ王国を出る際、武道大会を見たいかあガトーショコラ王国に行きたいというリリィと、ゆっくり休みたいから美と食の国、フロマージュ王国に行きたいというエーデルとの間で一悶着があった。 だが、フロマージュ行きの定期便は、つい先日に出て行ったばかりで次の定期便がやって来るのが一か月先という話を聞かされ、エーデルが泣く泣く折れてガトーショコラ王国行きが決まったのだった。


 その所為でここ最近のエーデルは終始不機嫌で、それを慰めるのにロイはあれこれと世話を焼かされていた。


「はぁ……あっついわね」


 エーデルは大袈裟に溜息を吐くと、砂浜に腰を下ろし、ロイに向かって何やら手振りで指示を出す。


「はいはい」


 それだけでエーデルの言いたいことを察したロイは、手にしていたパラソルをエーデルの脇へと突きさして日よけを作ってやる。


「ん」


 直射日光が遮断されたのを確認したエーデルは、満足そうに頷くと、荷物の中から本を取り出して読み始める。


「……やれやれ」


 これでエーデルの方はおとなしくなりそうなので、ロイは一息ついて辺りを見渡す。


 辺りには、水着を着て無邪気に水をかけ合う若い女性たちや、そんな女性たちをどうにか我が物にしようと狙う男性たち、一心不乱に砂の城を築き上げていく年端もいかない子供や、人々の戯れる様を笑顔で見つめる老夫婦など、ありとあらゆる人がいた。

 フィナンシェ王国では魔王討伐後の統治に苦労しているようだったが、この国ではその辺の問題は既に解決しているのか、目に映る範囲の中に、表情を曇らせている人はいなかった。

 きっとこの国の王は、優秀な人なんだろうな……などとロイが考えていると、


「ねえ、ロイ、ロイってば~」


 いつまで待ってもやって来ないロイに、痺れを切らした様子のリリィが声をかけてきた。


「ああ、今、行くよ」


 難しいことは置いておいて、この状況を少しでも楽しもう。そう考えたロイは、大きく手を振っているリリィのもとへと駆け寄っていった。


 ロイは当然ながら、リリィも海で遊ぶのは初めてで、何をしたらいいかわからなかったので、二人は鍛錬も兼ねて泳ぐことにした。

 長閑な雰囲気のビーチに、突如として物凄い勢いで泳ぐ男女が現れたので、何事かと周りの注目を集めることになったが、男女が害を及ぼすものではないとわかると、途端に誰もロイたちに注目しなくなった。

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