5歩目:こいつだけは出てきちゃいかんと思うんですけど!
いえー、皆様こんにちは。『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』の世界で冒険者見習いやってます、ゲーオタ女子高生、杭瀬未央です。元の世界に戻るため、レッツ冒険者ライフでございます。とりあえず、同じ穴のムジナであるこーちゃんと二人、パーティーを組んでくれるモブを探して学園をぶらぶらり。
ちなみに、結果は空振り。まぁ、あたしもこーちゃんも、自分の好みのキャラを仲間に加えようと、声をかける相手をえり好みしてるからですけどねー。ちなみにこーちゃんは魔法系の巨乳美少女(種族はエルフか天使)が希望で、あたしは前衛のワイルドイケメン(種族は竜族か悪魔)を希望しています。二人そろってテンプレ乙な萌えを求めてます。それぐらいの我が儘は許されると思います。むしろ、許されて欲しい。
「なかなかいないな。みーちゃん」
「そうだね、こーちゃん。良いなと思った子達は既にパーティー組んでたね」
「やっぱり、入学式後にすぐに仲間を集めるべきだったかー」
「チュートリアル大人しく受けてたんだけどねー」
やれやれと二人で廊下を歩く。ごく普通の人間のあたしと、獣人(獅子)のこーちゃんのツーショットって、普通に考えたらカオスなんだけど、ダン学の世界だと全然おかしくないから不思議~。人種入り乱れる系だと、違う種族でつるんでてもおかしくないモンねー。周りの同級生達も、そんな感じだし。
エルフの少年と天使の少年が二人並んでるのは、すっごい絵になると思う。妖精のお嬢ちゃんと獣人(兎)のお嬢ちゃんが並んでるのとか、ただの癒やしでしかないと思う。同時に、竜族の少年と獣人(獅子)の少年が鍛錬とか手合わせしてると、少年漫画モードに見えるし。んでもって、あたしと同じく人間の皆さんは、そのどれとも普通につきあってるので、人間の適応率すげーと思いますた。
能力値が完全に平均値でしかないというのに、一番繁殖力が強い種族だからだろうか。人間ってどこにでもいるわー。すごーい。さすがー。この世界での人間って、雑草扱いで良いんじゃない?弱いけど、絶対にいなくならないって感じ。あ、怒られそう。でもあたしも人間なんで、そこら辺はいーんじゃないかな?
「いや、よくねーだろ。みーちゃん、こっち来てから思考回路迷走してねーか?」
「してないよ。つーか、ゲームしてる時は割とこんな感じでつらつら考えてる」
「あぁ、それは俺も同じだ。…エンクエしてぇ」
「こーちゃん、それ言っちゃ駄目。それ言うなら、あたしはダン学したい。ラストダンジョンまでたどり着いたのに」
「あー、俺もラストダンジョン潜ってたわ。レア装備探し歩いてたんだよな。錬金素材集めと」
「そうそう」
そんな風に歩いてたら、目の前に悪魔娘がおりました。廊下の角で、向こう側をのぞき込むようにしてるので、顔は見えないけど。三つ編みをおさげスタイルにしてる悪魔ちゃんですね。同級生か先輩かわからないけど、何見てんの、この子?
こーちゃんと顔を合わせて、首をひねって、二人でひょいっと視線を彼女が隠れて見ている廊下の向こう側へ向けてみた。とりあえず、彼女が隠れているので、便乗するように隠れてみる。こういう、《何か情報ありそうだから調べてみる》っていうスタンス、絶対RPG脳だと思うけど。仕方ないね。うん。
さて、そこにあったのは。
NPC最強のパーティーの一角である、生徒会長様とその相棒の姿でありました。
あー、イケメンコンビだ。生徒会長様は天使で、キラッキラのイケメンです。白い翼と金髪碧眼の、正統派イケメンです。王子様タイプだよね。名前はルーハスさん。ちなみにリメインちゃんのお兄さんです。美男美女の天使兄妹とかすごいよね。テンプレだよね。ルーハスさんの学科がプリンスとかマジ笑っちゃうけど、これ、他のゲームだと勇者に該当するようなパラメータだからね。もう笑うしか無いよね。
んで、その相棒さんは体育会系代表って感じの武闘派のゲイルさん。種族は竜族で学科はヒーロー。笑うな。笑うんじゃ無い。名前こそ厨二病拗らせてるみたいだけど、ヒーローは前衛職業の中では抜群の安定率を誇るんだ。一撃が強く、固有技も多く、あげくに補助魔法まで使える万能型だ。攻撃と回復の魔法は出来ないけど、カリスマスキルで味方のパラメータをちょっとあげてくれる。暗褐色の竜の尻尾以外は人間っぽいけどね、竜族。
まぁ確かに、この二人イケメンだもんね。女子ファン多いしなー。三年生の先輩として、学園最強どころか、普通の冒険者達より強いとか評判だしね。そら憧れるかー。おさげ悪魔ちゃんはアレかな?二人のファンで、こっそり二人を見てて、憧れキラキラなのかな?
そんなことを思って悪魔ちゃんの顔を見ようとした瞬間、それは聞こえた。
「ワイルド×イケメン、キタコレwwwあの二人いつも一緒に居すぎだろ。ニコイチ?ニコイチなの?」
おい、ちょっと待て。お前何言ってんだ!
思わずぎょっとしてこーちゃんと二人で悪魔ちゃんを見下ろした。寝言かと思ったけど、眼鏡の奥の悪魔ちゃんの瞳はうっとりしている。キラキラしている。別の意味でキラキラしている。あたしは知ってる。このキラキラした瞳で、熱っぽい眼差しでぶっ飛んだことを口走る、この世で最も関わり合ってはいけない人種を!
この悪魔ちゃん、腐女子だぁあああああああああ!!!!!
腐女子がわからない人は、グー○ル先生にでも聞いてください!え?面倒くさい?わかった、簡単に説明しとく。腐女子ってのは、男×男の妄想を生きる糧にしてる人たちです。たまに現実と妄想の区別ついてない子いるから気をつけて!あと、彼女たち無機物×無機物とかも言い出すから、その妄想はとどまるところを知らないよ!以上!
こーちゃんと二人で、どうしようと目で会話をした。腐女子と関わると面倒くさいことになるのを、あたしたちは身を持って知っている。ここは、大人しく退散しよう。そう思って動こうとしたら、目の前の萌えから、あたしたちに興味を移したらしい悪魔ちゃんが、じっとこちらを見てきた。
いや、見なくて良いです!見ないで!あたし、腐女子と関わるとろくでもないことになるの、すごく知ってるんで!もう、貴方があの二人を萌えとか妄想とか、そういう色々がっかりなフィルター(確か腐女子の友人は腐ィルターとか言ってた)で見てても放置するんで!
「あっれー?未央たんじゃねー?」
「…はい?」
「え?」
「おーおー、やっぱり未央たんじゃねーの。その顔、その声。あっはっは。何々~?未央たんもこのオモシロおかしい世界にいたわけー?」
いや、何で?何であたしの名前知ってんの?しかも、その発言、ここが自分が本来いる世界とは違うって言う認識してる?え?え?え?
いやでも、あたしは悪魔の知り合いなんていません!いませんからね!でも、嫌な予感がすごくする。あたしを未央たんと呼ぶ、この口調だけだと性別どっちかわからない感じの、腐女子。そう、最後のキーワードが重要です。腐女子!あたしを未央たんと呼ぶ、腐女子!!
「お前、野々宮か?」
「いえー、正解-。って、アレ?もしかして獣人の君、浩介たん?」
「おう、俺だ。三浦浩介その人だ。んで、こいつはみーちゃんだ」
「やっぱりー。っていうか、未央たんマジで外見変わってねーのな。見つけやすくて助かる」
ケタケタと笑う悪魔娘、もとい腐女子、もとい、野々宮清音!絶対名前間違ってると常々思ってる、漫研仲間のゲーオタ(シミュレーション好き)腐女子!何であんたがここにいるのよ!三つ編みおさげで眼鏡とか、黙ってたら文学少女っぽいのに、放つオーラがマッドサイエンティストなのも相変わらず過ぎて、泣きたいわ!
うぅ、何故。何故この世界にまたしても知人が居るの。意味わからない。意味わからない。誰か助けてください。
しかも、よりによって、一番出てきちゃいけない人種出てきた。絶対こいつ、ダン学の世界をこーちゃんとは別の意味でエンジョイする。種族よりどりみどりのイケメンパラダイスだもん。生死のかかった状況で築かれる友情とか、こいつにとってはただの妄想の糧にしかならないの、あたし知ってる。今まで何度も、良作RPG勧めて、その度にお礼と称してガチBL妄想で懲り固めた二次創作渡してきたヤツだもん…。
「野々宮、お前、パーティーは?」
「組んでない。イケメンウォッチングに忙しくてなー。良かったら、未央たんと浩介たんのとこに入れてくれ」
「わかった。みーちゃん、とりあえずそれで良いよな?」
「…いくないけど、わかった…」
「あっはっは、未央たん相変わらず辛口だな~」
「誰のせいだ。誰のせいだ。誰のせいだ。あたしの大好きなダン学穢すなこの腐女子」
「未央たん、俺は腐女子通り越して貴腐人だからな?」
「知るかぁあああああ!!!」
かなり本気で叫んだ。なのに、清音はケラケラ笑ってる。もうヤダ、こいつ。先行きがすごい不安になってきた。というか、NPCの皆さんをこいつから遠ざけて差し上げねばならない、と思えてきた。特に、こいつが目を付けちゃった、ルーハスさんとゲイルさんを。ダン学を愛する者として、何が何でも、あの二人をこのケダモノの妄想から護らないと!
新たに決意に燃えるあたしですが、マジで、元の世界にログアウトしたいです、神様…。
仲間が増えました。残念ながら巨乳美少女でもワイルドイケメンでもありませんでした!
ゲーオタ腐女子(俺女)ちゃんの登場です。未央ちゃん、頑張れ。ツッコミ頑張れ!