4歩目:購買部でぱちんこ買ったよ、わーい。
こんにちは、購買部デビューしました、ゲーオタ女子高生、杭瀬未央ちゃんです。今日も元気に、人間、普通科でダンジョンRPGの世界を生きてますよ!
『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』の世界観は、自分が放り込まれたこの状況で、一つ良かったと思うことがあるのです。それは、装備への制限が無いこと。もちろん、種族や職業で得手不得手はあるので、効果が100%得られるかどうかは、それぞれだけど。とりあえず、迷わず装備を選べるのありがたいですね!
「みーちゃん、装備買えたか-?」
「買えた-。それじゃ、クルト先生、失礼します-」
「はいはいー。またおいで-」
「はーい」
ひらひらと手を振ってくれる購買部の先生、温厚派代表悪魔(錬金術師)のクルト先生に挨拶をして、あたしは出口で待ってるこーちゃんのところへと歩いて行く。いやー、しっかしクルト先生、マジで癒やし系だった。NPC、つーか先生陣の中で圧倒的なまでの癒やし系だって思ってたけど、実物を見てそれを痛感しちゃった。さらっさらの銀髪を一つ括りにして、赤い瞳は薄青のサングラスで隠して、いつもにこにこ笑う癒やし系。背中にコウモリみたいな悪魔の翼があることが理解できないくらい、良い人だ。
クルト先生は購買部の受け持ちみたいな感じで売り子しててくれるけど、彼の本職は錬金術師。購買部に備え付けの実験室で、錬金作業が出来るときに色々教えてくれる先生だ。もちろん彼からのクエストもある。素材を集めてこいとか、その上で錬金してみろとか。でも、クエストでもらえる報酬が売却金額良くて、序盤のお小遣い稼ぎにはぴったりだったなー。繰り返し型のクエストはマジありがたい。
クルト先生は一見女性みたいに見える綺麗な顔立ちの男の人だから、そういう綺麗系イケメンが好きな女子にも人気高いんだよなー。まぁ、あたしの好みはワイルドイケメンですけど。クールでニヒルでワイルドって感じの、テンプレなライバルキャラとか大好きですよ。テンプレで何が悪い。一つのゲームに一人はいてくれるんだから、テンプレ乙って感じですよ。
「で、みーちゃん何買ったんだ?」
「ん?ぱちんこ」
「みーちゃん、俺の目が確かなら、お前防具どうしたし」
「初期装備のままですが、何か?」
「いや、何かって…。制服系は防御力ぺらいぞ」
「知ってるよ。でもぱちんこ買ったらお金無くなった」
初期資金で買えるアイテムなんてそうそうないんだから、仕方ないでしょ。回復系アイテムも欲しかったけど、そこまで回らないし。まぁ、回復は、ダンジョンで一回戦闘する→自室に戻って休むのローテーションでどうにかなるから大丈夫。タダ宿である自室を利用しない手はありません。キリツ。
何でぱちんこ買ったのかと言いますと、弓やら銃やらは高かったからであります。パチンコはLレンジ武器。レンジっていうのは、攻撃が届く範囲を示す目安です。Sレンジは近距離武器、Mレンジは中距離武器、Lレンジが遠距離武器と覚えてもらったら助かります。システムとして、前衛後衛が敵味方に適用されるので、攻撃できる範囲が武器のレンジで決まっちゃうのです☆
まぁ、中には特殊スキルで、その距離とか範囲とかの概念をスルーして、どこからでも攻撃できるぜ☆な職業もありますけどね。レンジャーとか盗賊とか忍者とかアサシンとかの、いわゆるスピード特化で一撃必殺っぽいイメージの職業の人たちです。でもあたしは普通科なので、そんなスキルもらえません。
となれば、明らかに能力値の低い、雑魚敵の攻撃を数発食らったら死んじゃうであろう今のあたしに出来ることは、安全地帯の後方から敵を攻撃できる、後衛になるための武器をゲットすることなのです。つーわけで、手持ちの資金でも買えて、かつ、人間で普通科のあたしでもそこそこちゃんと使える遠距離武器ということで、ぱちんこゲットになったわけですよ。うん。実に正しい判断だ。
「つか、みーちゃん後衛なのか?普通科どっちでもいけるだろ」
「それは種族的に優れてる場合でしょ。はい、こーちゃん、あたしのステータス」
「おー…、ぅ?」
「良いよ。思ったことストレートに言ってくれて」
「……お前これ、振り分けポイント失敗した時レベルの、へっぽこステータスじゃね?HPなんてぎりぎり二桁とか、明らかに…」
「うん、あたしもそう思った。ただでさえ、種族人間で学科普通科なのに、ステータスこれとかひどすぎる」
まるで哀れな生き物を見るように、こーちゃんはあたしを見ていた。わかってる。あたしもそういう目をして自分を見てあげたい。伊達に『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』をやってるわけじゃないので、こーちゃんはステータスを見ただけで、あたしが防具を捨ててでもぱちんこを入手して、後衛から敵を攻撃しようとしていることを理解してくれた。ありがたい。実にありがたい。説明が少なくて助かる。
これでなー。せめて種族が人間以外だったら、それぞれの種族特性生かして、特化を目指して頑張るんだけど。人間はありとあらゆるパラメータが平均値だからねー。どうにもなんないよ、これ。
「ならみーちゃん、転科で弓使いとかレンジャーとかの後衛いけるのになるか?」
「うーん?」
「ほら、人間の固有上級職がガンナーだろ。役に立つスキル覚えとくのも一つの手」
「こーちゃん、適正値」
「…あ、スマン」
「ううん。わかってくれたらかまわない。あたししばらく、普通科で後衛で頑張る」
「おう」
もの凄く申し訳なさそうにするこーちゃんに、平気平気とあたしは笑った。別にこーちゃんが悪いわけじゃ無い。悪いのは、何でかこんなへっぽこステータスにされてしまってるあたしだ。もしくは、あたしをそういうへっぽこステータス状態でこの世界に放り込んだ《何か》だ。お会いする機会があったら、是非ともボコボコにして差し上げたい。お礼参り上等だぜー、うらー。
ちなみに、こーちゃんが考えた手段を、あたしが考えなかったわけではありません。『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』に関しては、あたしの方がこーちゃんよりやりこんでるので。ただ、それを行うには適正値という壁があたしの前に立ちふさがったので、泣く泣く諦めたのです。
適正値。
要は、その学科に適しているか見極めるためのポイントです。簡単に言っちゃうと、なりたい学科に必要なステータスになってないと、転科出来ないよ☆というシステムだったりする。つまり、レベル1のへっぽこが、いきなり上級職にはなれないってことですね。
まぁ、それを覆すのが、キャラ作成時に与えられる振り分けポイントなんだけど。キャンセルリセットでポイントがランダム変化するからなー。ちなみにその振れ幅は3~87という、喧嘩売ってんのかという差である。そりゃもう、キャンセルボタンがうなり、キャンセルリセットを繰り返し、いかに高レベルの数値を叩き出すかに力を入れちゃうよね。これで序盤の難易度大いに変わっちゃうからね。あたしはだいたい、この作業に一人のキャラに数十分くらいかかります。てへ。
ちなみに、今のあたしはぜったい3~5ぐらいの間のポイントしかもらえてない。このステータスはそういうレベルです。あり得ない。
「それじゃ、装備も整ったし、仲間を探しに行くか」
「そうだね」
「魔法系の巨乳美少女を探して!出来れば種族はエルフか天使が良い!」
「こーちゃんそれめっちゃベタ。あたしは前衛の盾持ちワイルドイケメンが欲しい。竜族か悪魔で」
「お前も大概ベタじゃねーか」
「だって欲しいモンは欲しい」
「そうだな」
「そうでしょ」
お互いに自分の萌えを主張してみた。んでもって、綺麗に前衛後衛が分かれてるので、それぞれの要求を満たすキャラを仲間に加えるために探そうと言うことで落ち着きました。マル。
正直、NPC以外のモブキャラがどういう風になってるのかわからないんだよねー。このゲーム、モブの概念がほぼ存在しないから。学園祭とか文化祭とか体育祭とかのイベントで、学園の人間と戦うときはあるんだけど、それもほぼ、同級生やら先輩やらのNPCだもんで…。一般生徒のデータなんてありませんよ。ははは。
でもまぁ、だからこそ探すの楽しいんですよね。もうこの際だから、こーちゃんと二人で『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』略してダン学の世界を思いっきり楽しもうと思います。そうでもしないと、自分たちの置かれた状況に心がぽっきり折れてしまいそうです。現実世界にログアウトしたいです、先生…。
まぁ、そのためには、中盤以降にしかいけない場所に引きこもっていやがる、『永久の賢人』さんを探しに行かないと駄目ですね。頑張ろう。とりあえず、仲間を集めて、初期クエストから順番にこなしましょうか。通行手形を手に入れるため!元の世界に戻るため!あたし、負けない!
でも本当、もうちょいステータスにチート補正あったら助かったのに…。
未央ちゃんが装備を調えました。ぱちんこオンリーです。初期資金ではそれぐらいしか買えないですね。ほとんどのゲームでそういうモンです。頑張れ。
次回、仲間を増やすために彼らはモブに声をかけるようです。仲間が増えると良いですね。
あと、気づいたら毎回NPCが出現してるんですが、どういうことでしょうか。NPCが増えすぎたらどうしようwww