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2歩目:目覚めてもゲームの世界でした。

 はろー、えぶりわん。皆さんおはようございます、ゲーオタ女子高生、杭瀬未央くいせみおです。

 

 寝て起きましたが、相変わらず『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』の世界から抜け出せません。


 何でやぁあああああ!これは夢であるはずですよね?そうですよね?なのに何で、あたしは今もゲームの世界にいるんですか!認めぬ!異議あり!異議ありぃ!速やかな現実へのログアウトを求めるのであります!へるぷ!へるぷみー!

 ベッドの上で一人うなだれるあたしを、慰めてくれるものは何もございません。周囲がざわざわしている気がしますが、同級生たちは皆さん、一生懸命初級ダンジョンに挑んで、最初のクエストをクリアするためにがんばっているのでは無いでしょうか。うっかり一歩間違うと普通に全滅しちゃうという難易度の『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』であるので、時々悲鳴やらなにやら大騒ぎが聞こえ、保健室へ!とか聞こえちゃうのはお約束であります。

 補足。

 このゲームで戦闘不能になると、復活呪文か復活アイテム(ダンジョン限定)か保健室でお金払って復活させてもらう、という状況であります。自分とこの学校なのに、保健室で治療してもらうと普通に料金が発生する世知辛さ。生徒にも容赦しません。さすが冒険者育成学校です。辛うじて自室でぐーたらする分には宿代取られません。これで回復のための自室睡眠で料金取られたら、駆け出しへっぽこパーティーなんてお金無くなって生きていけないです、先生!

 閑話休題。

 そんなゲームの世知辛いシステムはさておいて、あたしはどうしたら良いのでしょうか。普通、こういう夢オチネタ的な展開というのは、お布団でぐーすかしたら、翌日には目覚めすっきりで自室でおはようというフラグだと信じていたんですが。目覚めすっきりどころか、目覚めどっきり状態です。誰か助けて。

 これはあれですか?腹をくくってこの学園で、冒険者となるために修行をしろと?


 無理です。


 どう考えても無理じゃ無いですかね?人間で普通科で、しかもパラメータ補正が並以下で、チート属性ナニソレ美味しいの?みたいな状態の今のあたしに、どうやってそんなことができると思うんですが。自慢じゃ無いが、体育の成績は出席日数だけで普通をを取り続けている状態ですよ!武器振り回したら自滅するに決まってるじゃ無いですかー!

 …そうなると、転科かな?他のゲームにおける転職のような概念は、もちろん『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』にも存在しますです。学科なので、転職じゃ無くて転科っていう扱いですが。ちなみにレベルと学科履修度(いわゆる職業レベル)は別扱いなので、転科してもレベルは下がらないです。大丈夫。いきなりレベル1に戻って泣きを見ることはこの世界には存在しない。

 まぁ、今のあたしはレベル1ですけどね!!!

 あ、なんか泣きたくなってきた。うぐうぐ…。泣いたって誰もあたしを助けてなんてくれないんだ。仕方ない。とりあえず、外に出よう。図書室行こう。掲示板見に行くんじゃないやい。あたしは情報収集のために、図書室にたむろってるだろう同級生を見に行くだけだい。パーティーなんて組まないやい。図書室の本で、一生懸命元の世界に戻る方法を探すんだい!

 何で自分に言い聞かせてるかって、そんなの当たり前じゃ無いですか。廊下ですれ違う同級生たちが、「お前一人ならうちのパーティー入らない?」「普通科一人じゃ大変でしょ?」「うち人間ばっかりだから気楽だぜ!」みたいなお誘いをかけてくださるからに決まってんじゃねぇかよ、こんちくしょう。いらんわ。いらんわ、そんな優しさ!あたしには不要である!無用の長物なの!どっか行って!

 神様仏様、キリスト様に預言者様でも何でも良いわ。とりあえずどなたか、あたしに元の世界に戻る手段という切り札を教えてくださいませんかね。どうやったらリセットボタンが作動するのか、まったくわからないんですけど…。泣きたい…。


「あら、貴方も掲示板を見に来たの~?見たところ新入生よね。初級クエストの受注かな~?」

「違います」

「違うの?それじゃ、本を読みに来たの?」

「調べ物です。失礼します」


 にこにこ笑顔の眼鏡のお姉ちゃんをあたしはスルーする。ごめんよ、エルーニャさん。貴方は嫌いじゃ無いけど。猫耳メイドというとても素晴らしい萌え要素を身につけた、クエスト受注のお助けキャラであるNPCの図書委員の先輩。この学校、一応ストレートに単位所得できたら三年で卒業できるという、高校みたいなポジションにあるのですが、エルーニャ先輩は三年生です。学園で一番強いバケモノみたいな生徒会長のパーティーでにこにこ笑ってる、銃ぶっ放す系の猫耳メイドさんです。

 お気に入りの猫耳メイド(武器は銃)から逃げるのはただ一つ。この人、NPCの中でも、イベント誘因率くっそ高いんですよねぇえええええ!ポジションがポジションだから仕方ないけど、会話すると新しいイベント発動するので、それに強制的に巻き込まれないように、あたしは距離を取るのであります。レベル1のへっぽこ新入生でモブのあたしは、イベントには参加しないです。モブはモブらしく地味に生活して、ついでに、さっさとここからおさらばする方法を探し出したい所存であります!

 図書室の膨大なる資料の中で、どこをひっくり返したら、現状あたしを助けてくれる本が出てくるんでしょうか。わかりません。カテゴリーどこになるんですか。異界ですか、転移ですか、とりあえず呪文とか儀式の本を探せば良いんですか、先生?!

 むぐぐと本とにらめっこ。色々と厨二病心をくすぐる本がいっぱいあって、それはそれでとても楽しそうではあるんですが。どうしたら元の世界に戻れるのか、それだけが今のあたしに重要な問題なのであります。そうだ、それが大切だ。それ以外はとりあえず置いておこう。

 『異世界旅紀行』『転移の術の使い方』『次元を越える手段』『異界とこの世界』その他エトセトラ。色々と本を引っ張り出してみましたが、役に立つ内容がちっとも存在しないです。そりゃそうか。普通、ゲームの世界に潜り込みましたとかありえないわー。そうだよねー。ちょっと考えたらわかるよねー。ゲームの世界に、そこからの脱出方法とか書いてないよねー!うん、知ってた!

 えー…。これ、マジであたしはここで冒険者やるべきなんですか?やらないと駄目なんですか?しんどいんで勘弁してください。勘弁したいです。駄目ですか?何で駄目だって言うんですか、決めるんですか。あたしは早く現実世界に戻って、自前の最強パーティーで『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』をプレイしたいんですけど!間違っても、自分がそこで冒険者やりたいとか願望無いんで!

 あきらめたくない。あきらめたくなど無いのです!あたしには、現実世界に戻るというとても大切な目標があるんです!戻らないと、新作のゲーム出来ないじゃ無いですか!来月発売の、エンドレス・クエストⅩがあたしを待ってるんですよ!聞いてますか、神様?!

 くっそー。図書室でも情報皆無とか、どうしたら良いんですか。学校の生き字引的な先生に聞けってことですか?でも駄目です。この学校の先生、ほぼ全員が攻撃能力特化型です。魔法系の先生ですら攻撃上等モードです。

 まず、僕らの頼れる保険医の先生が、回復は趣味でちょっとかじっただけよ☆な堕天使の魔術師である時点でアウトです。灰魔術師はほぼまんべんなく呪文使えますけど、保健室の先生には白魔術師でいてもらいたかったね!ちなみに黒魔術師は攻撃魔法、赤魔術師は軽度攻撃回復魔法+物理攻撃可能という勇者もどきなパラメータだよ!ゲーオタの皆にはお約束の説明でしたね!ははは!

 落ち着け。落ち着くんだ、あたし。取り乱してはいけない。あと、現時逃避いくない。そういうのしてても駄目ってわかってるでしょ。わかってるじゃないか。でも現実逃避したくなります、誰か助けて。あたし早く元の世界に戻りたいです。現実世界にログアウトしたいんです。学校行くの面倒くさいとか言わないんで、現実世界に戻してへるぷみー。


「あれ?お前、もしかしてみーちゃんか?」


 …へい、はにー。もしくはだーりん。今あたしの耳は幻聴を捕らえた気がするのだが、気のせいであろうか?気のせいですね。わかりました。それでは速やかにあたしは自室に引きこもり、この超、超面倒くさい現実を整理したいと思います。では!


「なんでお前いるんだ、みーちゃん?」


 幻聴は幻聴らしく消え去れ!こんなところで、明らかに前からの知人ですオーラであたしの名前を、それもしっかりきっちり身内しか呼ばないあだ名呼びしてくれちゃってる人間とか、いらんのです!そういうの出てきた瞬間、これが夢だというあたしの暗示も消え去るので!今すぐ消えろ!

 そんなあたしの祈りが届いてるはずなのに、すっごい嫌そうな顔して逃げようとしてるのに、相手は全然気にせず近寄って、ぽんぽんとあたしの方を馬鹿力で叩いてくるのであります。…誰だお前。


「おー、本当にみーちゃんだ。お前までいるなんて、リアルな夢だなー」


 夢という認識には賛同したいけど、アンタ誰ですか。正直全くわからんです。というか、あたしは獣人にお知り合いはいないので、にこにこ笑う獅子男に知り合いはいないので!…まぁ、鬣に覆われた顔が、なんか知ってる顔のような気が、しなくもないんですけど。でも知らないふりしたいと思います。それが生きるために必要な処世術というモノです。

 赤毛の獅子男(獣人)は楽しそうに笑って、馬鹿力であたしの肩をばしばしやってくるのです。つーか、本当に痛いので勘弁してください。お前、パラメータ補正全部力に振っただろ。こちとら並補正の人間なんで、耐久力無いんです。勘弁しろし。


「俺だよ、俺。三浦浩介みうらこうすけ


 …は?何ですと?三浦浩介?浩介?こーちゃん!?ちょっと待った!さっきまでとは別の意味で、ちょっと待った!何でアンタここにいるの!

 三浦浩介、通称こーちゃんはあたしと同じ漫研所属のゲーオタ男子高校生である。やってるゲームのジャンルがあたしと似てる(ただしプレイスタイルやら好みのキャラやらは違う)友人である。中学からの腐れ縁で、お互いゲーオタなので会話が弾むが、断じて男女の以下略なんて甘酸っぱいアレは存在しない。

 理由はただ一つ。ヤツは巨乳を崇め奉る民である。あたしは並なので、それだけでヤツの中ではアウトオブ眼中のただのゲーオタ仲間になるのである。ある意味ありがたい。便利だ。正直、男女の以下略とか面倒くさくていらんもん。ゲームに忙しいあたしに、デート以下略してる暇があると思うな。(真顔)


「…っていうか、なんでこーちゃんいるの?アンタいるとか、夢の可能性減ったじゃない!」

「いやいや、夢でいーじゃん。二人そろって同じ夢」

「それこそあり得ないわ!」


 脳天気なことを言うこーちゃんの頭を、あたしはぶん殴った。人間普通科のあたしのパンチなど、獣人(しかも獅子)のヤツにはほとんど効果が無いらしい。もう完全に、某ゲームの「効果が無いようだ」っていうテロップ見えた。

 え?ねぇ、これどういうことですか?なんで、あたしのように紛れ込んでる人間がいるんですか。しかもそれが知人だったりするんですか。この世界の構成どうなってんの。あと、あたしこれからどうしたら良いの。こいつの扱いどうしたら良いの?



 お願いします、元の世界にとっとと戻してください…。

目覚めても元の世界には戻れない未央ちゃんです。そして新キャラ出てきました。

新キャラが出てくる=元の世界に戻れない、です。理解してくれたかな、未央ちゃんや。

果たして元の世界に戻る方法なんて存在するんですかね?そもそも、なんでこの世界に吹っ飛んできてるんでしょうね?←

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