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13歩目:経験値稼ぎ《は》順調すぎる。

 こーんーにーちーはー!ただいま絶好調で冒険者見習いやってます、ゲーオタ女子高生、杭瀬未央くいせみおです!『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』の世界から抜け出すために、とりあえずこの世界を突き進むという本末転倒な状況で頑張ってます。

 んでもって、経験値稼ぎが順調すぎてどうしたら良いかわかりません。普通に楽すぎてどうしたら良いのかわからないんです、先生。

 

 自分以外がチートだと、こんなに楽なのかと痛感しました。


 いやー、気づいたらね、最初のフロアのマッピング半分以上終わってるんですよ。でも誰も大きな負傷してないんですわー。普通はね、それができあがるまでに、何回自室と往復してんだろうな、みたいなはずなんですよ。眠くないのに布団に潜り込むという謎の状況のはずなんですよ。

 それなのに、絶好調でマッピング可能ですよ。もう本当、チートスキルを持った仲間達って心強いですねぇ。何でアンタらログインしてるんだ、とか思ってましたが、今となっては心強いことこの上ないです。だってあたしはただのへっぽこだから!


「杭瀬、怪我ねぇか?」

「うん、大丈夫。ありがとう、悠人はると君。毎回毎回かばってもらってごめんね?」

「いや、気にすんな。その方が効率が良いだろうし、俺も、役に立ってるなら嬉しい」

「…ありがとう。本当にありがとう。悠人君いなかったら、あたし軽く三回は死んでるから」

「そんなにかよ!」

「「うん」」


 驚いたように叫んだ悠人君に、あたしとこーちゃんのうなずきが被りました。あ、やっぱりこーちゃんはわかってたんだね。悠人君にかばわれてなかったら、敵の一撃であたしが瀕死の重傷を負って、ふらふらバタンキューってなることが。さすが。

 戦闘中は主に、電子手帳型の生徒手帳に映ったゲーム画面(?)でコマンド入力をする、というのがあたしの仕事です。あとは、悠人君にかばってもらいつつ、後方からぱちんこで攻撃をするわけです。ただ、非力なあたしのぱちんこレベルでは、ちっとも敵を倒せないのが難点ですね!


 レベル5になってるのに、雑魚一匹一人では倒せないあたしのパラメーターって、何か間違ってませんか!?


 こーちゃんと二人でステータス画面確認してて思ったことは、あたしのパラメーターはマイナス方向に補正がかかってるんじゃないか、というアレでした。種族が人間で、学科が普通科であることを差し引いても、レベルアップ時の成長率は普通のはずなんです。だって人間だから。全てに置いて平均点ですよ。それなら成長率も平均のはずなのに、何故かへっぽこ成長しかしてくれません!

 あたしだけ!周りがチートスキルと種族や学科に合わせた成長をしている中で!あたしだけが!何故か!成長率が半分くらいしかないんですけど、どういうことですかねぇえええええ?!

 いやもう、ね?種族が妖精で賢者という、どう考えても魔法系だから打たれ弱いよね?な真琴まこと君にすら、あたし、HPが劣ってるんですよ。どういうことですか。意味不明にもほどがある!


「ねーねー、そろそろお昼だし、お弁当食べない~?」

「おー、それは俺も賛成だな。未央たん、昼飯」

「あら、お弁当って買ってたかしら?」

安藤あんどうお前、お弁当ないかもしれないってだけで、そこまで落ち込むなよ。食堂まで戻れば食えるだろ」

「やだー!お弁当!こののどかな森でピクニック気分でお弁当食べたいの!」


 朱梨あかりの脳天気な提案に、清音きよねも乗った。真琴君の疑問は至極もっともだし、それを聞いた瞬間の朱梨の落ち込みっぷりは凄まじかった。悠人君のツッコミは今日も冴え渡ってる。あたしはちらり、とこーちゃんを見た。


「夕飯食べた時から思ってたけど、空腹覚えるんだね」

「別に空腹過ぎてダンジョンから強制退却っつーわけでもないよな?」

「それ別のゲームでしょ。主に《不思議の大冒険》系じゃない?」

「だよなぁ…」


 ちょいちょい見かけるバグや、実際に自分たちがゲームに入り込んでいることに関しての諸々のズレに、二人して首をかしげる。これから先も、こういう風に《ゲームと何か違う》という違和感を覚えながら、あたしたちはこの世界を旅することになるんだろう。たぶん。

 でも出来れば、違和感は少ない方が助かるんだけどなー…。だって、ゲーム知識だけがあたしの唯一のスキルみたいなモノですよ?それ奪われたら、マジ本当にあたし、へっぽこ冒険者ってことしか残らないじゃないですか。辛すぎる。


「杭瀬ちゃん、このやきそばパン食べて良い?」

「未央たん、俺おにぎり喰らうぞ」

「さっき魔物モンスターが落したプリン、食べても大丈夫かしら?」

「…杭瀬、三浦みうら、お前ら返事しないと、道具袋の中の食料が根こそぎこいつらの腹に収まるぞ」

「ちょっと待ってぇええええ!」

「待て、安藤!せめて安いサンドイッチの方にしてくれ!やきそばパンは大事な回復アイテムだ!」


 あーんと大口開けてやきそばパンにかぶりつこうとしてた朱梨は、こーちゃんがそのパンを奪ってサンドイッチを握らせることで阻止。おにぎりを山ほど並べていた清音からは、二つほど与えて残りを没収。プリン片手に可愛く笑っている真琴君には、…まぁ、プリンにはMP回復効果もある(雀の涙程度だけど)ので、一つぐらい進呈します。敵から落したドロップしたアイテムだしね。

 必死に食料もとい回復アイテムを確保するあたしとこーちゃんを見て、悠人君がお前ら大変だなと、もの凄くしみじみした口調で言いました。えぇ、大変です。あたしもこんな大変な思いをするとは思いませんでした。今度から、学食でお弁当頼めるか聞いてみます。でないと回復アイテムが全滅する。

 …物理的には可能だと思うけどね。お弁当系も回復アイテムであるし。ただ、値段がかかるので購買部で買うことはできません。どこの世界に、へっぽこ冒険者が回復にすら使わず、昼食のためだけにお弁当系(一番安いものでも1000Gです)を買うなんて阿呆な状況があるんですか…!

 とりあえず、学校に戻ったらミモザさんにお弁当作ってくれるか聞いてみよう…。


「みーちゃんも何か食うか?一応昼だし」

「んー。あたしあんまり動いてないから、そんなにお腹空いてないんだけどな…」

「そう言わずに食っとけ、杭瀬。でないと、あいつらに食い尽くされるぞ」

「「それは断固として却下する!」」


 とりあえず、まぁ、小腹は空いてたので、ドロップしたアイテムの一つである、プリンをあたしももしゃもしゃしておきます。あ、普通に美味しい。カスタードクリームが濃厚でとろける感じが絶妙です。カラメルソースも絶品。…うーん、これ、ただの回復アイテムが美味しすぎて、うっかり食べ過ぎて太るとか無いよね?あったら泣きたい。

 朱梨はサンドイッチ、清音はおにぎり、真琴君はあたしと同じくプリン、こーちゃんはおにぎり+ジュースに、悠人君は同じくドロップした肉まんを食べてました。というかこーちゃん、いつの間にジュース手にしてんの?それもドロップしたアイテムですか?気づいてなかった。


「いや、このジュースは出発前にエルーニャさんがくれた」

「何でアンタそんなのもらってんの?」

「世間話してたら、頑張りなさいってもらった」

「…良かったね」

「おう」


 こーちゃんも何気にフリーダムに生きてるよね。というか、ダン学の世界を普通にエンジョイしてる気がする。もう諦めたけどさー。皆、もうちょっと真剣になろうよ?何であたしが一人、元の世界に戻ろうと躍起になってんの?皆、馴染みすぎじゃないの?


「そういう未央たんだって、十分馴染んでると思うけどなぁ」

「煩い、清音!」

「あと、未央たん。そろそろ俺のMPが無くなりそうなんだが、どうしたら良い?」

「考えなしに厨二魔法ぶっ放すからでしょ!大人しくベーゴマ投げときなさい!」

「りょーかい」


 全然悪びれてない清音に、ちょっとだけ苛っとした。今はまだ、良い。ここは序盤のダンジョンで、元の場所に戻るのだって簡単だから。これが先へ進むと、延々と潜り続け、探索を続ける羽目になるんだから。そうなったときに、MPの配分間違えて魔法使えませんとかになったら、そのときは本気で殴ってやるんだからね!



 とりあえず、まだ帰還しなくて大丈夫そうなので、仕切り直して頑張ります! 

 

チートの中にへっぽこ一人。

頑張れ、未央ちゃん!負けるな、未央ちゃん!それでも君が主人公だ!←

あと、年内の更新はここでいったん終了です。

実家に帰省してパソコンに触れないので、次回の更新は1月後半頃だと思います。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

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