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1歩目:気づいたらチュートリアル。

 おはようございます。

 いや、別におはようじゃないんですけど。いや、おはようか。うん、時間帯的にはきっとおはようだ。でもあたしの体内時計は、色々と不都合を起こしているんじゃないかと思うわけである。体内時計というか、今見ている状況が、全て、すーべーて!おかしいに決まってんだろうがぁあああああああ!!!!

 ……うん、落ち着け。落ち着け、あたし。落ち着くべきだ。落ち着かないと何もわからない。

 おーいえー、現在絶好調混乱中のあたし、ゲーオタ女子高生、漫研所属の杭瀬未央くいせみおです。初めまして。繰り返す。あたしはただのゲーオタ女子高生である。好きなモノ、RPG。最近ハマッてるゲーム、『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』という、ダンジョンRPGである。



 で、なにゆえワタクシは、そのゲームのチュートリアル画面で見覚えのある入学式に、参列しているのでありましょうか?



 夢か?これは夢なの?あたしは夢を見ているということで、おk?!おkだよね!?おkってことにしておこうよ!夢ならさっさと目覚めようよ!んでもって、あたしはさっさと『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』をやらないと駄目なんだよ。やっとラストダンジョン突入できたんだから、マッピングして、アイテム漁って、錬金で装備品を作って強化して、レベルあげて、ラスボスに挑まないと駄目なんだから!

 視界の先では、人間その他エトセトラな生徒たちが、ナイスバディの女エルフの先生から説明を受けて大人しくしている。知ってる。あたし、知ってるから!このチュートリアル知ってるから!皆さんようこそ学園へとか、立派な冒険者になってくださいとか、あたしもう何度もやってるから知ってる!んでもって、このあと校内見学と称して施設の説明があって、最後に図書室行って、掲示板でクエストと言う名の課題を受注してこなしていけとか言われるんでしょ!?知ってるよ!!!


「ミオさん、顔色が悪いようですけど、大丈夫ですか?」

「……」


 アンタ誰だよ。

 いや、知ってます。知っておりますとも。『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』に登場するNPCのヒロインだよね。背中に真っ白い羽根背負った天使族のお姉ちゃん。正直あたしの好みじゃないので会話イベント重要でない限りスルーしてた、美少女のリメインちゃん。金髪碧眼(しかも長髪ウェーブでぱっちり二重)の天使とか、それで職業(このゲームでは学科だけど)が白魔術師(回復系)とか、マジでただのお約束ヒロインだわー。

 問題は、ですよ。そのNPCのヒロイン様が、本来ならモブであろうところのあたしを、ちゃんと認識してくれてることですよ!夢!夢なら今すぐ覚めて!目覚めの一撃ください!この際パーティーアタック許しちゃうよ!ザ○ハ唱えてくれても良いよ!レ○トでも許すよ!回復系アイテム投げつけてくれても良いから!誰か今すぐ、あたしを現実の世界に連れ戻してください!

 思わず固まって、目の前の美少女天使を見るしかできないあたし。放置してください。放置プレイで結構です。だって、NPCのヒロインに存在を認識されるとか、イベント強制参加の予感がするじゃないですか。あたし、そういうの結構です。いらないです。ゲームは大好きですが、自分がゲームするのが好きなだけで、その中に入って一緒に戦いたいとか思ったことなんて、ただの一度も存在しない!!!

 そもそも、ゲーオタだからって、全員が全員その世界に入りたいと思ってるわけないじゃないですか。ごくたまに、現実の世界に飽きて、ドンパチサバイバルちっくな世界に入り込みたいとか言ってる部員いましたけど。いましたけど、そいつらはアクションゲーム系好きすぎて、リアルでその技を使いこなせないかと運動部巻き込んで実践してた、所属は漫研だけどスペックは運動部な人種だったんで。あたしはただの引きこもり系ゲーオタです。無理がある!


「具合が悪いようでしたら、保健室に行かれます?」

「…いえ、大丈夫です」


 大丈夫なんで、放置してください。心配そうに見てくるリメインちゃんに愛想笑いをして、あたしは視線を前方に向けた。先生はこっちに気づいていないようである。体育館で入学式とかお約束すぎる。つーか、チュートリアルそのまんまなんだけど、あたしこの後どうしたら良いんですか?大人しく、皆と一緒にチュートリアル受けるんですか?それって、その後パーティー編成されちゃって、めでたく初期ダンジョンに突入しちゃうフラグとちゃいますん?

 いーやーだー!そんなの断固拒否する!拒否するであります!リセットボタンはどこにあるの?この際、データ吹っ飛ぶとか、バグが発生するとか、気になりませんわ!潔く、ホームボタンかリセットボタンをぽちっと押して、今すぐ現実世界にログアウトしたいであります!


 だって、今の自分見ても、いつもの自分と何も変わらないんだもん!


 種族、人間。学科、普通科。懐に入ってた電子手帳型の生徒手帳弄ってみたら、その辺の自分のパラメータ見えましたよ。普通だった!すごい普通だった!泣きたくなるぐらいに普通のパラメータだった!振り分けポイントが5ぐらいしかもらえなかったときの、すっごい普通の人間のパラメータだった!

 ねぇ?普通こういうのって、チートモードになれるんじゃないの?ちまたでよくある、異世界転生とか異世界迷い込みとかって、色々とチート属性ついてるよね?あたし、そういうの微塵も見当たらないんですけど。ものっそ普通のパラメータなんですけど。初級ダンジョンだろうが、ダガー一本で突撃かけたら、雑魚の攻撃二発ぐらいで瀕死になって、うっかりしたら死んじゃう、そういう普通のパラメータなんですけど!

 この世界の知識があるってぐらいしか、今のあたしに対する補正が見当たらないよ、先生!もしくは神様!昨夜は特に夜更かしもしないで、大人しくゲームを充電して眠ったあたしに対して、この仕打ちはひどいと思うのであります!

 むしろ、種族が悪魔とか竜族とか獣人とかになってて、魔法バリバリ使えるとか、腕力超強くて無双モードできるとか、そういうチート属性がついてるなら、開き直ってこの変な状況を楽しんだりもしますよ!でもね、普通なの。いつも通りの自分なの。そんな自分が、こんな、普通に魔物モンスター溢れる世界で、単位取得のためにダンジョン潜って敵倒したり、アイテム漁ってきたりするような、そんな世界で生きていけるわけがないと思うの!お願い神様、今すぐあたしを現実に引き戻してください!

 

「こら、そこ。いつまでいるつもりだ。さっさと校内見学に移動しなさい」


 一人で神様に文句つけてたら、頭をぺしんと叩かれた、振り返ったら、ナイスバディの女エルフの先生が、教科書丸めてあたしの頭をぽんぽんしてた。うい、マム。了解しました。大人しく、引率の先生にくっついて、すでに何回見たかわからないチュートリアルを受けに行って参ります。だからお願いします。麗しいおみ足に装着したナイフちらつかせるの、勘弁してくらさい。色々悲しくなっちゃうんで。

 とぼとぼと、生徒の群れに合流する。このままモブに埋もれて、モブらしく生きていこう。目立たず、騒がず、大人しく。んでもって、寝て、起きよう。きっと、そうしたら、あたしは明日には、自分の布団で目覚めているのだ。そうに違いない。というか、そうでないと困る。困るわ!


 ぼへーっとチュートリアルを聞くのもつまんないし、聞きながら整理しとこう。何度もやりこんだゲームだから、もう設定とか覚えちゃってるけどね。

 この世界の名前は、エルハード。

 あっちこっちにダンジョンが存在して、そこに潜り込んで一攫千金目指したり、魔物ぶっ倒したりする人種が、冒険者。んでもって、このルルイエ学園はその冒険者を育成する学校。学科という名の職業に就きながら、単位という名のクエストをクリアすることで卒業を目指す。昔からあるダンジョンRPGに学園モノ要素をぶち込んだ、見た目はライト中身はどっぷりなダンジョンRPGである。

 その見た目がライトなところにだまされてプレイしたユーザーが、難易度高すぎて挫折して、各種レビューでこき下ろしたせいで、一作目から踏んだり蹴ったりな言われようだった『突撃☆ダンジョン学園♪』シリーズ。この『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』になって、多少のシステムの緩和とか微調整とか、そろそろ周囲も見た目を裏切るハードコアなダンジョンRPGだと慣れてきたのかで、やっと評価が落ち着いた。個人的には、最初の頃から普通に面白かったんだけどな。

 キャラクター制作時に選べる種族は、人間、エルフ、ドワーフ、獣人、妖精、天使、悪魔、竜族の8つ。それぞれパラメータに得手不得手があるし、職業適性の高さとか諸々も存在する。種族専用ジョブとかも存在するしなー。どの種族にするかで結構悩むよね。好みで作ったらパーティー編成で泣きを見るとかあるし。

 あと、個人的に『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』から導入された、外見変更システム結構好き。いわゆるアバター作るみたいな感じなんだけどね。パーツの種類が結構多くて、自分好みのキャラを作れるのが楽しかったなー。特に、獣人は猫系から犬系、兎系、獅子系とか、かなりレパートリー増えて嬉しかった。おまけに、外見に合わせてパラメータもちょっと変わるしね。器用な猫、平均値な犬、素早い兎、パワー型な獅子、みたいな。天使も、堕天使作れるっていう厨二病をくすぐる設定増えたし。うんうん。

 それと、このゲームの最大の特徴は、職業の多さ。学科っていう名前になってるけど、まぁ、普通に職業って認識して良いよね。ジョブジョブ。テンプレートな戦士や武闘家、騎士に勇者、白黒赤灰の各種魔術師に、召喚師に錬金術師。竜騎士なんかもいちゃったり。バーサーカーとかもね。あと、ユニークな職業が多いんだよね。ヒーローとか、プリンス・プリンセスとか、執事にメイド、ドクターにジャーナリスト、アイドルとか、それって職業か?ダンジョン潜るのか?みたいなのごろごろしてる。そこが面白かったんだけど。

 性別と種族と学科で自分好みのキャラを作って、六人一組のパーティー組ませて、ダンジョンに潜ってクエストをクリアする。潜っては戻り、戻っては潜る。人によっては作業ゲーと言うかもしれないけれど、そういうのが好きな人はどっぷりハマる。それがダンジョンRPG。ちなみにあたしはどっぷりはまってましたよ。大好きだ。


 …で、ですよ。そんな大好きな大好きな、『突撃☆ダンジョン学園ふぁいなる♪』の世界ですが。何度も繰り返すようですが、あたしは別に、そこに入り込みたい訳ではない!外側から、コントローラー握って、画面の向こうから遊ぶのが楽しいのですよ、どぅーゆーあんだすたん??

 だからね?チュートリアル終えて、図書室で掲示板見て、初期クエストの依頼を受注した皆さん。暇ならパーティー組もうってあたしを誘わないでください。嫌です。断ります。結構です。もういっそ、留年確定でも結構なんで、あたしは部屋に引きこもりたいです。つか、引きこもる!

 もうしわけないが、チート属性を何一つ手にしていない今のあたしに、できることは何一つ存在しないのだ!つーわけで、寝る!今が朝だろうが、昼だろうが、さっさとダンジョンに行けと先生にせき立てられようが、モブたちにパーティー組まないかと誘われようが、全部、全部、知ったことじゃなーい!





 つーわけだから、お願いします、神様。朝になったらあたしを、現実世界に戻してください。へるぷみー。

ノリと勢いでぐわーっと読めるようなギャグを書きたいな、と思って書き始めてみました。のったりとマイペースに続けていけたらな、と思います。

元ネタってどっかで見たことあるあのゲーム?と思われた方は、是非お友達になりましょう。きっとあのゲームで間違いないです。

あ、未央は現実世界に戻れないです。戻ったら話し終わるんで←ひでぇ

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