2-41 魔族が攻めて来た 1
次の日、武闘大会会場で愛美さんの試合を観戦しようと、俺と真美子は観客席に座っていた。
すると吹雪裕也が通り掛り、俺達を見て近寄ってきた。
無視して、観客席で座っていたんだけど、吹雪裕也は俺達の周りをウロウロした後、真美子の前に来た。
「あ、あの、昨日オレと会いませんでしたか?」
「え、いえ、人違いです。」
と真美子が答えたが、
「昨日の少女は、無事家に送り届けました。ケガも治したので両親は喜んでいましたよ。」
とニコッと笑いながら吹雪裕也は言った。
真美子はその内容に返事をしてしまった。
「それはよかったわ。あの後・・・・、げほん、げほん。」
やれやれ、その返事じゃもうバレたよな。
「やっぱり、そうでしたか、では隣の男性の方もあの時の方ですね。」
しかし、違うと言い張る。
「人違いだ。少年。」
「そうよ。人違いよ。」
「大丈夫です。誰にも言いませんから。オレは魂のオーラで人物を識別できる能力があります。」
なんだと、そんな便利な能力があるのか!
「え、そうなのね。」
「それは珍しいな。俺は何色だ。」
「女性の方がピンクで、男子の方が黒です。」
お、やっぱり。
「そうか、やっぱり、真美子はピンクなんだな。マスクもピンクで決まりだよ。」
「私のマスク、ピンクで決まりなの?」
今度ピンクのドレスも買ってあげよう。
「嘘です。オーラの色なんか見えません。ただ髪形と背格好が似てたもので、決め手はその剣です。その剣は市販品ではありませんから。」
「え?」
「な?」
そんな、ピンクはどうしたんだ。
そう言えば真美子、真偽眼使って無いのかよ。
「という事で、昨日の方達ですね。」
仕方がない。
「そ、そうよ。」
「ああ、そうだ。だから誰にも言わないでくれ。」
「言いませんよ。命の恩人なんですから。それに、以前小さな町の魔族狩りの時も会いましたから、その剣が記憶に残ってるんですよ。」
覇者の剣Ⅱか、確かにな。ついている宝石が高価そうだからな。
「それから、これ、あの少女の家族からです。貰ってください。」
と吹雪裕也はお金とお菓子を俺達に渡した。俺と真美子は小声で相談して返そうと思っていたら、
「それじゃ。試合があるので。」
と吹雪裕也は行ってしまった。
イケメンですがすがしい少年だな、青年かな?
昨日の少女とは上手くやったのかな?
お菓子を見ていたら、なんかちょっと”あーん”したくなった。
「真美子、そのお菓子、”あーん”してくれ。」
「何言ってるのよ、テツさん。前”あーん”やったらエスカレートして」
「大丈夫だ。そのお菓子なら一口だし固形物だからエスカレートしない。部屋でやったことは反省してる。」
「わかったわ。」
真美子はお菓子の包みを取って、
「はい、あーん。」
俺は真美子の指ごとお菓子にしゃぶりついた。
「やだ!指ごと食べないでよ。」
と真美子は手を引っ込めた。
俺はもぐもぐとお菓子を食べた。
「もぐもぐ、美味しい。」
◇
そして2日が過ぎ、今日は決勝戦。
昨日、愛美さんは奮戦したが、前年度優勝者ロックジャガーに敗れてしまった。
そして、今日は決勝戦。ロックジャガーLV1241対吹雪裕也LV718だ。
観客席には、俺と真美子、愛美さん、アンさん、ミミさんが並んで座っている。
「テツさん、どっちが勝つかしら?」
「そうだな。レベル的にはロックジャガーだが、吹雪裕也は何かの能力があるからな。」
「そうね。今までも、挌上のレベル相手に勝ち進んできたのよね。」
「あら、テツ様達は、あの吹雪裕也を随分と評価しているのですわね。」
「ええ、そうよ。だって、実際に勝ち進んでいるじゃない。愛美さんは、まだクラス転移でのわだかまりがあって、吹雪裕也にいい印象が無いからじゃないの?」
「まあ、そうですわね。」
しばらくして、ロックジャガーと吹雪裕也が入場して来た。
場内が歓声が響き渡った。
歓声が静まり、2人の紹介がアナウンスされ始めた時、
バアアアガアアンン!
と大きな音がして大地が揺れた。
「爆発ね。何処から?」
「南の方だな。」
「そうね。南よ。」
「そうだにゃ。」
「どうするよ。」
「様子をみよう。」
私達と同様に観客、選手その他係員は驚き、少しづつ騒ぎ始めた。そして、
ウヲー!ウヲー!ウヲー!ウヲー!ウヲー!ウヲー!ウヲー!
と魔族来襲の警報が鳴り響いた。場内は騒ぎになり、避難する為に人々が出口に殺到し始めた。
「テツさん、さっきの警報って、魔族来襲の警報よね。」
「確かそうだな。愛美さん、状況の確認をお願い出来ませんか?」
「はい、テツ様、大会の係員の人に連絡を取ってみます。」
と愛美さんは魔法通信機で連絡を取り始めた。
そこに、アナウンスする人が全体に拡張音声魔法で声を伝えた。
「ただいま確認中です。皆さまはその場でお待ちください。」
と場内のパニックを防ぐための処置がなされた。
しばらくしてから、また拡張音声魔法で声が響いた。
「町の南門に魔族が襲撃に来ました。ここは、まだ安全なので、皆さま、落ち着いて避難してください。」
それから、避難誘導が始まった。
愛美さんが魔法通信機で係員と会話が終わり、その内容を話してきた。
「皆さん。魔族が来襲して城の兵達が交戦中だそうよ。とても強力な魔族で苦戦中みたいわ。」
「魔族は、どのくらいのレベルと数だ?」
「はい。テツ様、中級クラスが2、下級クラスが4、あと認識阻害で不明1ですわ。その中級魔族が結構強いみたいですわ。」
認識阻害で不明1が怪しいな。上級魔族かもしれない。
「そうか、その不明1で戦局が動くな。」
「はい、それで、この大会に参加している実力者に魔族撃退のために協力してほしいとの要望が出ていますわ。」
「愛美さんはどうするんだ?」
「はい、私達は、これから自国に連絡を入れてどうするか確認いたします。」
そうか、それだと愛美さん達は、魔族と戦わないで小国に帰還だな。安全だ。
ちょっと、様子を見てくるか。
「その大会実力者の集まりはどこだ?」
「え、テツさん行くの?」
「ちょっと、様子見だけだよ。真美子。」
「テツ様、大会実力者は大会運営の建物の中に集まることになっていますわ。」
「そうか、愛美さん、俺と真美子はそこに向かうよ。もし、連絡がある場合は魔法通信機でしてくれ。」
「わかりましたわ。」
俺と真美子は、大会運営の建物に向かった。
◇
建物の外には係りの人が立っていた。
俺と真美子は、大会出場者じゃないので中に入れずにウロウロしていた。
そこに、吹雪裕也が来た。
「あ、こんにちわ。お2人さん。」
「あ、吹雪裕也さん。」
真美子、自己紹介してないのに名前読んじゃダメだろ。鑑定魔法はあるけどマナーというものがある。
「あれ、オレ名前いってないけど、あ、そうか試合で名前バレバレだっけ。」
「吹雪裕也さんは魔族撃退に協力するの?」
「ええ、オレ勇者だから。」
ほう、この世界で勇者と誇らしげに言う奴、初めてみたよ。だけど、
「少年、えっと、吹雪裕也君だっけ、レベル的に、中級魔族と戦える強さじゃないが大丈夫なのか?」
「大丈夫です。隠してますけど能力があるので、中級魔族なら倒せます。実際にLV1200クラスの魔族は倒しました。それから、”裕也”と呼んでください。君づけも無しで、おじさん。」
ほう、吹雪裕也はLV718、それでもレベルを覆せる能力があるんだな。
「それは凄いな、裕也。俺は”テツ”だ、おじさんはやめてな。」
「わかりました。テツさん。ところでそちらの女性の方は?」
「あ、私は、真美子よ。」
「それでは、テツさん真美子さんは、参加者じゃないと思いますがどうしてここに?」
まあ危ない時の助っ人だが、気まぐれにしておくか。
「それは、気まぐれかな?なあ真美子。」
「ええ、そう気まぐれよ。」
「そう言う事にしておきます。では、オレと中に入りますか?俺と一緒なら入れると思います。」
お言葉に甘えるか。
「それじゃ、裕也、お言葉に甘えて一緒に入らせてもらっていいかな。」
「ええ、では、テツさんと真美子さん、一緒に。」
俺達は、裕也に付いて行き、建物の中に入っていった。




