8話 林との再会 1
物語は、少し前の時間にさかのぼる。
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城の勇者召喚用魔法陣の周りに、五人の神官と騎士が十人ほどが立っていた。
召喚魔法陣が光りだす。
ブォン!
光の中から二人、男性と女性が姿を現した。
井中哲次郎と三田村真紀菜である。
二人はキョロキョロしていた。
一番豪華な服装をした神官が、二人の前に近づいてきた。
「あなた達が、神から遣わされた”勇者を助ける者”たちですか?」
「ええ、そうです。俺たちは神から遣わされたものです。」
と井中哲次郎は言った。
敵意が無いと受け取った神官は、
「こちらに来て下さい。色々話をします。」
と、二人を連れて行った。
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俺|(井中 哲次郎)は三田村真紀菜と一緒に、広めの会議室位の部屋に通された。
十人の騎士も一緒である。
「これからいろいろ聞くことと、話すことがあります。まず、名前を教えてください。私は大神官のファゼーラサスと言います。」
と正面に座っている豪華な服を着た神官が言った。
俺は、『ファゼーラサスか覚えににくい名前だな。大神官でいいや』と思いながら、
「俺は、井中哲次郎。こっちが三田村真紀菜です。」
と名乗った。大神官は更に聞いてきた。
「申し訳ありませんが、話せる分だけでよろしいので、勇者の手助けの内容を教えて下さい。」
何処まで話すかなと思ったが、
「勇者のレベルアップの手助けをします。ときには勇者と共に戦います。」
と簡単に言ってみた。
何故かというと、レベルアップの魔法と薬は、本来この世界では使用できない。
神様から勇者以外には話さないように、口止めされている。
また、”RVP”についても口止めされている。
また、三田村さんの仕事内容は勇者の手助けだけなので、”RVP”に関した記憶を神様が三田村さんから消している。
”RVP”はトップシークレットらしい。
だから余計なことはすべて話せないのだ。
「それは、頼もしいです。」
と大神官はニッコリ微笑んで言った。
どうやら、簡単な内容しか言って無いが、通じたようだ。
シンプルイズベストだ。
そして、大神官は続けて言った。
「わが国では、勇者たちを優遇して、物資や住居等を提供しています。あなた達には何を用意すればよろしいですか?」
「・・・こちらも勇者と同じものでいいです。」
と言ったら、三田村さんが割って話してきた。
「ねえ、それより、健吾居ない?カラクリの勇者なんだけど。」
「カラクリの勇者様ですか?少し前に召喚されて、まだ城にいるはずですよ。先日はレベルアップに励んでいました。」
「会わせてよ。」
「はい。王との謁見が終わりましたらご案内しましょう。」
『三田村さんは、林まっしぐらだな』と俺は呆れていた。
・・・・・
・・・・・
王との謁見が終わり、林健吾の部屋へ案内された。
三田村さんがドアを叩く。
ドン!ドン!ドン!
俺は、『そんなに叩かなくてもいいだろう』と思った。
数秒後、そのノックでドアが開いた。
「健吾!会いたかったわー!」
と三田村さんが部屋に飛び込んでいった。
遅れて俺は入ると、三田村さんが林に抱き付いていた。
俺は林と目が合ったので、
「よお!」
と片手を上げて挨拶をした。
林は驚いた顔をしていた。
「なんでお前達が居るんだ!」
と林は大きい声で言った。