28話 マイラムの家 1
本日3回目の投稿です。
朝起きて、俺は、マイラムを待っていた。
今日はマイラムの家へ行く事になっていた。例の剣をもらう代わりに、マイラムのレベルアップを手伝うという件である。
トントン!
とドアをノックする音が聞こえた。
「空いてるよ。どうぞ。」
と俺は言った。
「お邪魔します。こんにちわ、井中さんとサクミちゃん。」
とマイラムが入ってきた。
「おお、よく来た。じゃあ行こうか。」
と俺はいったら、サクミが出て来て、
「あ、この間のおねえ、じゃなくてお兄ちゃんだ。ごしゅじんさまどこに行くんですか?」
とサクミが言った。
「ちょっと剣を貰いに行くんだ。しっかり、留守番していてくれ。」
「はい。ごしゅじんさま。」
とサクミには、留守番を頼み俺たちは、マイラム家へ向かった。
◇
ガタン、ゴトン。
俺は馬車の中でマイラムと一緒にいる。マイラムは従者付きの馬車で来たのだ。
「マイラム、凄い豪華な馬車だな。もしかして、貴族なのか?」
「はい、私は、シュバルテイサリアムズ伯爵家の跡取りです。」
・・・・・そうか、やっぱりな。着てる服とか豪華そうだったし・・・・でも何で?勇者と共に危険な戦いに出てるんだ?
「貴族の跡取りが、勇者と一緒に戦いに行くのは危険なんじゃないか?跡取りにもしものことがあったらマズいと思う。」
「それはそうなのですけど。私は、その、女なので、この国では普通、女性は爵位を頂けません。その為、武勲を立てる必要があります。」
・・・・そういえば神様から聞いていたっけ、この異世界の神聖国家は、男性上位の国で女性は立場が低いという事を。
「わかった。そのためにレベルアップをしたいのだな。」
「はい。」
「女性でも、武勲を上げれば爵位を貰えるんなら、その男装はどうしてだ?」
「それは・・・男性の中に女性が混じっていると、この国では、女性にとって色々と都合が悪いからです。」
「どんな風に?」
「井中さんは、別の世界から来たので分かっていませんが、この国では男性の権利が強く、もし、女性が被害に会っても裁判では、男性の有利な方向に判決が下されます。」
「例えば?」
「例えば、・・・・・どんなに地位が高い女性でも婚約をしていない者は、その、せ、性的被害にあった場合、女性が男性を誘惑したことになってしまいます。」
と、マイラムは言いにくそうに、言葉を詰まらせながら言った。
・・・・・日本では、セクハラだのチカンだの忙しいが、この国では、男性の天下らしい。
「それじゃ、マイラムも婚約すればいいのではないのか?」
「・・・シュバルテイサリアムズ伯爵家には、男子が生まれなかったので、伯爵家を存続させるためには、婿を取るしかありません。しかし、権力争いで私の許嫁が暗殺されてから、婿に来て下さる者が居なくなりました。」
・・・・・許嫁が暗殺ね。もう経験済みかな?
「他に姉妹とかは居ないのか?婿を取ってくれる妹とか?」
「はい、姉は2人いましたが、もう嫁いで行きました。妹は病弱で・・・・。」
「その暗殺者の雇い主はどうなった?」
「捕まって死罪になっています。」
・・・・一応解決はしているみたいだな。なら、また婿を取ればいいのでは?
「・・・事情は理解したが、武勲を上げて爵位を取れば解決するのか?また婿を取った方が楽なのでは?」
「それは、父が婿には暗殺されないような強い男でなくてはいけないと、それで、みなさん婿に来てくれなくなってしまいました。」
・・・・・父親も原因か。
「わかった。がんばって、爵位を取るようにレベルアップを手伝うよ。」
「はい。」
・・・・・・
ガタン、ゴトンと、馬車は進む。
◇
馬車はマイラムの家、シュバルテイサリアムズ伯爵家についた。
敷地と屋敷はとても大きく、屋敷の中に入るとメイドさんが20人以上並んで迎えてくれた。
すげえ!美人のメイドが一杯だ!1人俺にくれないかな。
とメイドさん達に見とれている俺の腕の裾をつまみマイラムは、
「さあ、武器の部屋に行きます。付いて来て下さい。」
と不機嫌そうに言った。
「ああ、分かった。行こう。」
と名残惜しいが、これから先いい剣が無いと、先日の熊の魔物みたいのが出たらアウトだからな。
と思いながらマイラムに付いていった。
・・・・・・・・
武器の部屋には、様々な武器が飾られていた。
「こりゃすげー!」
と俺は、部屋を見回した。
部屋には、様々な剣、大剣、長剣、短剣、槍、盾、トンファ、鎖鎌、・・・・・・・・・と色々な種類が置いてあった。
俺は、黄金に輝くオリハルコン製とおぼしき剣を手に取って、
「マイラム、この剣くれない?」
と言ってみた。
「え、・・・とごめんなさい。それは家宝なので、・・・・・こっちの剣から選んでください。」
と申し訳なさそうに、十数本の剣を取り出してきた。
まあそうだよな、家宝はダメだよな。
俺は、その十数本の剣を見たがどれがいいのか分からなかった。
「マイラム、この剣でお勧めなのは?」
「ええ、この満田ニュウム製のロングソードが切れ味も耐久性もいいです。」
「ほう!」
とその剣をとって、魔力込めて振ってみた。すごく魔力が通りやすかった。闘気も込めてみたが魔力ほどは通りは良くないもののいい感じだった。
試しに他の剣を同じように、魔力や闘気を込めてみたが、この中では満田ニュウム製のロングソードが一番いいようだった。
「試し切りをしていいか?」
「はい。それでは、中庭で。」
とマイラムに連れられて俺は中庭にいった。
中庭に行く途中に、美人の魔導士が立っていた。
「あ、サラサーミさんこんにちわ。」
「こんにちわ、マイラ。そちらが、あの井中様ですか?」
とその美人魔導士サラサーミさんが俺の名前を言った。
どうやら、俺の情報はもう知っているようだ。
「はいそうです。こちらが井中さんです。」
「初めまして、井中と言います。」
「初めまして、私はマイラの魔法家庭教師のサラサーミです。マイラから噂は聞いています。なんでも魔法を習いたいとか。」
お、マイラムのやつ、家庭教師に魔法教えてくれという話をもう伝えたんだな。
それにしても、美人だ!マントで体のラインが分からないのが残念だが。
「はい。是非魔法を教えて下さい。お願いします。」
「あら、男の方なのに、ずいぶんと礼儀正しいのね。」
とニッコリとサラサーミさんが笑ってくれた。
俺はその笑顔に見とれていたが、
「いで!」
マイラムが俺の腕をつねって言った。
「サラサーミさんは、結婚しているんだ、旦那さん持ちだよ。」
と釘を刺されてしまった。まあ、旦那に刺されたくないから忠告はありがたく聞いておくよ。
「それじゃ、あとでね。」
とサラサーミさんは行ってしまった。
しかし、マイラムに抓られたけど、これってやきもちか?まさかね。
「マイラム、サラサーミさんが、”マイラ”って呼んでたけど、愛称かな?」
「その、・・・マイラムっていうのは、男性に扮装したときに名乗っている名前で、本当は私は、”マイラ”って言います。」
なるほど、そうだよな、マイラじゃ男っぽくないからな。
「そうか、それじゃ俺はどう呼べばいい?」
「・・・マイラでお願いします。」
「わかった、マイラ。」
「はい。」
と呼んだら、マイラはすこし嬉しそうだった。やっぱり本当の名前の方がいいよな。
とその後、中庭に行き、マイラにゴーレムなど作ってもらって試し切りをした。
俺は満田ニュウム製のロングソードが気に入ったので、貰って帰る事にした。
「あの、井中さん、明日から私は、歌う勇者と格闘の勇者の付き人として、ダンジョンに向かいますが、井中さんはどちらへ。」
「”井中”じゃなくて、”哲次郎”と呼んでくれ。明日は、城の騎士の紹介で剣の道場に行く。そういえば、レベルアップはどうする?」
「また、空いている日をお伝えしますのでレベルアップはその時にお願いします。哲次郎さん。」
「分かった。」
「では、また連絡します。お送りしましょうか?」
「いや、大丈夫。」
「でも、城まで遠いですよ。」
そうだな、転移のことはまだ黙っておきたいし。
「じゃあ送ってもらうか。」
と俺は馬車で送ってもらい城に帰った。




