15話 あーん
それから、銃の勇者と不死身の勇者のパーティは、無事城に着いた。
城に帰ると、従者の人が俺に話しかけてきた。
「井中様、本日の井中様の取り分は、後日換金してお持ちしますが、本日取った魔物の素材で必要な物がありましたら言ってください。」
と言われたが、まだこの世界に来て二日しか経ってない。
俺は、よく分からないので換金だけ頼ことにする。
「えーと、換金だけ頼めればいい。それで、後で届けてくれるのはいつですか?」
「三日後になります。」
「分かった、頼みます。」
と、いくら従者相手だからと言っても、余り偉そうに言うのは、気が引けてきたので途中から少し丁寧に答えた。
そういえば、金の単位も知らないんだよな。
従者がもって来た時にでも聞くか。
俺は部屋に帰った。
◇◆◇◆◇◆
「お帰りなさいませ、ごしゅじんさま。」
部屋に入ると、犬耳メイド幼女のサクミが待っていた。
頭とかなでなでしたい衝動に駆られるが、グリーンドラゴンを倒したせいで血なまぐさい。
湯あみをする事にした。
「湯あみをするから着替えを準備してくれ。」
「はい、ごしゅじんさま。」
サクミは体を洗ってくれると言ったので、背中だけ洗ってもらう事にした。
俺の背中を洗っているサクミに聞いてみた。
「この世界の住人って、魔法はどうやって覚えるの?」
「魔法ですか?犬耳じゅうじんは、たいてい両親からおそわります。人ぞくですと、書物を読んだり魔法の先生からおそわるようです。」
「書物と先生か。サクミは魔法はどんなのが使えるんだ?」
「湯をわかすひ魔法とみずを出すみず魔法、それと、”ウォーターアロー”がつかえます。」
「それは凄いな。俺を”ウォーターアロー”で攻撃しないでくれよ。」
と冗談で言ったつもりが、
「そんなことしません。それに奴隷には、奴隷紋で制限が付けられています。特定の人には攻撃できません。」
とムキになって言ってきた。
「ごめんごめん。冗談だよ。」
「冗談だったんですか?もう。」
とサクミはふくれっ面をする。
さっぱりした俺は、紅茶を飲むことにした。
「サクミ、紅茶飲みたいから用意して。」
「はい。でも、もうすぐ夕食なので、夕食といっしょにおもちしますか?」
「まかせるよ。」
・・・・・
サクミが夕食を取りに行っている間に、装備と剣術、魔法について考えてみる。
装備は明日城で聞いてみるか、勇者用の鎧が余ってるだろうから。
剣術はどうするかな。どこかで習えないかな。武術なら心得があるんだが、武器で切ったり殴ったりしてくる相手だと素手はきついな。今日戦ってみて、やはり剣で切ることを覚えた方が楽だと思ったよ。
魔法はどうするかな。書物とか読めば出来るかな?俺が使える魔法は、回復系は最上級まで全てできる。あと水を出す湯を沸かすなどの生活魔法。攻撃魔法は以下の通り、
攻撃魔法:ファイアボール、エアカッター、ウォータアロー、ストーンウォール
あと、補助魔法としてライト、サイレント、ストーンウォールも使える。
俺の攻撃魔法ショボいな。全体的に、ほんとにサポート系だな。
と考えていると、サクミが夕食と紅茶をもって来た。
今日はサクミの分も持って来たらしい。よく見ると、片方のサクミの分と思われる夕食はずいぶん貧相だった。
「今日は、昨日ごしゅじんさまが、いっしょに食べるようにいっていたので、持ってきましたが、いっしょに食べていいですか?」
「ああ、いいよ。」
「はい。」
嬉しそうな顔をして、サクミはテーブルに夕食を並べた。
俺は、サクミを隣に座らせた。
なんで隣かって?
そりゃ”あーん”をしてもらう為だ。
メイドに”あーん”なんて素晴らしいじゃないか、帰れないかもしれないんだから楽しまなくちゃね。
でも、もう少し大人でグラマーな子だったら、もっとハッピーだったんだけどな。
まあ、大人でグラマーな可愛いメイドさんだと、”勇者レベルアップの仕事”なんて忘れてこの世界に定住しそうで怖いが。
「サクミ、食べさせてくれないか?」
「え、はい。」
とサクミは、フォークとナイフでぎこちなく肉を切り始める。
そして、切った肉をフォークにさし、
「ごしゅじんさま、どうぞ」
と俺の口の前にもって来た。
「違う、”あーん”だ。」
「え、はい”あーん”。」
その言葉に満足した俺は、肉を口に咥えて食べた。
美味い、昨日と味はたいして変わらないが、実に美味かった。
「今度は俺が”あーん”してやるから、サクミはきちんと食べるんだぞ!」
「はい。」
と今度は俺が肉を切って、フォークでサクミの口の前に持って行った。
「それ、ごしゅじんさまの分ですが、・・」
「いいから”あーん”。」
サクミは口を開けて食べた。
サクミは美味しそうにもぐもぐしている。
幸せそうだ。
本当は、もっとこう口から肉時汁が垂れて、色っぽい顔でもしてくれるかと思ったが、なんかペットに餌づけしている感じだ。
まあ、楽しいからいいか。
その日は、サクミと一緒に夕食を取ったのであった。
10話 ”LVアップの加護魔法薬”の供給本数変更




