Luna lacrima
音もなく踊る
君の声なき歌にあわせ
陽の光を知らず
月の光だけを知る
白い肌の君
その両の手に求めるは
今宵浮かぶ月から落ちる
一滴の雫
声なき歌に合わせ
踊り続ける私は
君の両目から流れる雫の行方を見届ける
今宵、君は手に入れられるのだろうか
声なき声で
音を奏でる君の
その白き手は
ぽたり……と落ちる
月からの雫
媚薬とも
万病に効く薬とも
歌い続けられる
その雫
彼は両の手に大切そうに受け
両の目から雫を落とした
踊り続ける私
冷たい目の私
共に喜べない私
君は赦してくれるだろうか
君は理解ってくれるだろうか
月を残したまま
夜空は泣き出す
泣けぬ私の代わりか
それとも……
夜空の涙が
月の雫に混じらぬよう
慌てて屋根の下へ駆ける君
慌てる理由のない私は
ゆるりと踊り続けよう
この頬を濡らすのが
夜空の涙だけになるまで




