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漂流、そして神隠し

 ――――ザザーンザザーーン

「んんっ……。ここ、どこ?」


 地面が柔らかい、手で地面を掴んでみるとなんかさらさらしてる……? これって、砂浜かしら? ゆっくり起き上がって見てみると、水平線が私の目の前に広がっていた。海は青く澄んでいて日本ではあまり見れるような光景ではなかった。


「綺麗ねー」


 波はとても穏やかに向かってきたり戻ったりを繰り返し、気持ちのいい音を響かせている。ここは素晴らしい楽園なのかも知れない。


「……ん?」


 しばらく、ボーッと水平線を眺めていると何かが波と共に自分の方に流れてきた。


「これって……」


 最初は遠くてはっきりとは見えなかったが、砂浜へ流れ着いたものをゆっくり手に取って見ると焼け焦げていた。それは飛行機の横についているエンジンの一部だったであろうものが流れ着いた。

 この破片を見ていると、私は何か大事なことを忘れているような気がしてきた。


「そういえば、私……」


 

 ぼやけていた記憶がどんどんと鮮明に思い出されていく。慌てだす乗客たち、落ち着かせようと必死に説得をするキャビンアテンダント、そして――――大きな爆発音と炎が私の目の前に……。 


「突然エンジンが爆発して。飛行機が炎に包まれたんだよね……」


 でも、その後の記憶がない。漂流したにしても何かにつかまった記憶がない。奇跡でも起こったんだろうか。


「そういえば、他に人はいないのかしら?」


 私以外にも同じような人がいるかもしれない。心細さも少しまぎれるだろう。それに、この島に誰か住んでいるかもしれない。

 私はふらふらといるかわからない人を探すために砂浜を後にした。


 ◇


 満点の星空が空を埋め尽くす。

 結局、人は私以外誰もいなかった。


「はあ……。寒くなってきたわね」


 昼の暖かさとは逆に夜は寒く感じた。

 暖をとろうと思って、ポケットから昼間に拾ったジッポライターをゴソゴソと取り出す。


「ライターがあってもなぁ」

 

 このライター、昼間に探索していた時に見つけた物だったけれど、蓋がとても固くて私がどんなに力を入れても全く開く気配がなかった。

 開かなかったら何か別な方法を考えなくちゃ。今度は両手で勢いよく蓋を開けようとする。


「……え?」


 蓋はすんなりと開いた。むしろ、勢いをつけすぎてライターを落としてしまった。ライターを拾って集めた木の枝に火をつける。


「昼と違って何で簡単に開いたのかしら?」


 少し違和感があるけれど今日はとても眠い。私の意識はどんどん微睡みの世界へと誘われていった。


 ◇


 私が島に流れ着いてから何日が経っただろう。この島での生活にも慣れてきた。

 私は今日の水を確保するために川へ向かっていた。自分の拠点地からは徒歩で数分ぐらいだと思う。


「……あれ?」


 いつもの川についてみると謎のほら穴が見つかった。この場所にはよく来るけれど、大きなほら穴なんて見たことがなかった。


「……中に何かあるのかしら?」


 興味を持ってほら穴へと入っていくと、中はとてもひんやりとしていて広かった。

 しばらく歩いていると光が見えてきた。


「……え?」


 光の方へ駆け出してみると、あったのはゴォォォォォと大きな音がする滝だった。

 辺りを見回すと外へとつながる道らしきものがあった。多分滝の裏側に着いたみたいだ。

 どれぐらい大きいのだろうか、空を見上げてみてもまったく頂点が見えない。

 良く見上げてみてみると、何かが光っていた。


「何かしら?」


 滝の裏を抜けて、空を見上げてみると、沢山の光が現れては弾けていた。


「わあ、すごく綺麗」


下から見ると何かの形っぽくなっていた。大きな壁のような気もした。そして、対抗して緑色の光が青い光とぶつかりあって弾けた。光がぶつかり合って弾けた瞬間、キラキラとして、とても印象的だった。

しばらくすると、光が止み、よく見ると、小さなものが何かこっちに近づいてきている。


「こっちに来るスピード早くない……?」

 


小さなものはぐんぐんとスピードを上げて私へと向かってくる。段々と何なのかが分かってきた。それは大きな剣を肩に担ぎながら私の目の前に舞い降りた。


「……何者だ?」


 肩にある大きな剣に目が行く。そして近づいてきた人を一回見る。頭には動物の耳のようなものが頭についている。人間、なわけないか。

 

「黙ってばっかりじゃ分からないだろ。返答次第ではお前を斬る」


 剣の切先を私の方へ向けながらどっしりと構えだした。この犬っぽい人、本当に私を斬るつもりなの!?


「え、えぇっと、ひょ、漂流者?」


 信じてくれるかどうかわからない。けれど正直なことを伝えないと斬られそうな雰囲気だった。

 その人は私の言葉を聞いてきっとにらんだ顔つきから突然呆れた表情に変わった。


「漂流? 幻想郷には、海なんてないですよ? それで、一体どこから漂流したんです?」

「う、海が無いなんて有りえないですよ!? だって、私は本当に、漂流して島に住んでたんですから!」


 どうやら私が着いた場所は幻想郷っていう場所だった。

 けれど、海はないって言われたけれどありえない。なら、あの島は? それに私はいったいどこにいたの?


「なら、着いてきてくださいよ! 私は滝の裏に有ったほら穴から来ましたから!!」

「ほら穴? あそこは何もないはずですよ?」


私がどんどんと滝の裏へと進んでいくと、そこには私が通った道は無くなっていて、ただの行き止まりになっていた。


「だから言ったじゃないですか。ここのほら穴からどこか別の出口に繋がっていることはないって」

「う、嘘よ!? じゃあ私はどうやって?」


 どうやって島からここへやってきたのだろう。もしかしたら本当はここにいたの? 


「慌てるなというのは酷ですが、まずは落ち着きなさい。多分、あなたは神隠しにでもあったのでしょう」

「か、神隠し?」


 私が神隠しに? それって、元気だった人が突然いなくなってしまう事よね。なら、あの島にいた時は?


「おーい! 犬っ子、どうした? 急に下に降りてここに来るなんて。隠していた骨でも取りに行ったのか?」


 突然、外から大きな呼び声が聞こえてきた。

「黙れ! 私は犬じゃなくて白狼天狗だ! それと、私がこんなところに骨を隠す訳がないだろ。 ……弾幕ごっこは私が負けただろう? ならばさっさと行け、この人外白黒」


 犬っぽい人がムッとした顔をして穴の外へ出て行った後すぐに大きな声が聞こえてきた。

 骨は、あるんだ……。本当に犬みたいだなーって思いながら後を追って滝の外へ出てみると、


「全く持って失礼な奴だぜ。私は人外じゃなくて普通の魔法使いだ」


 と、ムッとしながら言い返していた。

 魔法使い? 魔法使いって老婆でぐつぐつ煮込んだ鍋をかき回してる人よね? ってことは、この金髪の人、私より少し下か同じぐらいだけど……。


「あの……」

「ん? 見かけない顔だな? こんな危ない山で良く生き延びてたな」


 魔女さんは私に気づくと驚いた顔をしていた。


「魔女さんって、その見た目でおばあさん……なんです?」


「え?」

「は?」


 魔女さんと犬っぽい人は私を見て口をポカンと開けてしばらく固まりだした。


「お、おばあ……さん、おばあさん……プククッ」


 犬っぽい人が体を震わせながら笑い出した。

「な!? 確かにいない訳ではないけど……。お前の魔女のイメージとは違うからな! 私は例外だ!!」


 あ、例外なんだ。「私はまだピチピチの少女だぜ……」と、言いながら帽子を深くかぶった。その言葉づかいも古いと思うんだけど。あ、また犬が噴き出しそうになったから、顔下に向けた。


「ご、ごめんなさい……。魔女なんて見たことが無かったから」

「なんだ、魔女を見たことが無いなんて、お前、外の世界の人間だったか」


 魔女さんは私の言葉を聞くと、納得がいったようだった。外の世界って何だろう……?


「……ふぅ、久々にここまで笑ってしまいました。ところで、魔法の使いすぎでお体の調子は大丈夫ですか? 白黒人外魔女っ娘おばあ様」

 犬っぽい人も落ち着いたみたいだったけれど、すごく意地の悪い笑みを浮かべている。


「……ワンコロ天狗、お前はまた私にボコボコにされたいようだな」

「寝言は寝てから行ってください。さっき勝てたのは偶然ですからね!  ま、せいぜい無理はしないでお体には気を付けてくださいね?」

「フンッ、負け犬天狗の遠吠えはうるさくて叶わねぇな」

 

 魔女さんはその言葉だけ言い残すとすぐに上空へと行ってしまった。

 犬っぽい人は口元が引くついたまま魔女さんの後を追った。

お互いが上空に着くとしばらく何か言い合っていたと思ったら、さっき私が見た光の弾をお互いが出し合っていた。

 結局、外の世界とか、幻想郷についてとか、神隠しについてとか聞きそびれちゃったけど……。あの二人、大丈夫かな? 

 二人が降りてきたらまた聞けばいっか。

 久々に自分がここに戻れるとは思ってませんでした。

 お久しぶりです。さだっちです。さて、今回も相変わらずの幻想入り作品です!

 煽りあいって面白いですね……w

 感想お待ちしております!

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