第十話 決断(前編)
裏路地から出たあとに、とりあえずさっきの先輩さんが出てくるのを待っていた。
女の子は近くの座れる場所を探し、座らせ落ち着かせていた。
(まさかこんな大事になるなんてなぁ。)
ただナンパから女の子を助けただけなのに不良に追い回されるわ、殴られるわ、しまいには特活まで来るわで大騒ぎだ。
「あの・・・」
「ん?」
落ち着いたのか女の子が話しかけてきた。
「あ、あの!さっきは助けて下さってありがとうございます。」
と大袈裟に何度も頭を下げてきた。
「いや、そんなにしなくても良いですよ。」
「いえ、でも・・・」
「頭下げられるの好きじゃないんで。」
女の子は少し迷った後、頭を上げた
(頭下げられるのって謝らせてるみたいでイヤなんだよなぁ。)
「でも本当にありがとうございました。」
再び頭を下げられた。
(もういいや・・・)
諦めたおれorz。
「じゃあもう大丈夫だね?」
「はい。」
「じゃあお先に失礼させてもらうよ。」
「はい・・・ってええっ!!」
驚く女の子。
「何でですか!?」
「おれ事情聴取って苦手だから、戻ってくる前に帰っちゃおうと思って。」
「そんな理由!?」
「まあ、そんな訳でお先に。」
と言って後ろを向き走って行く。
「せ、せめて名前だけでもっ!」
「大瀬良 錬って名前だ。じゃあなー!」
そして俺は走り去っていく。
■□■□■
あの後俺は買い物を済まし、家に帰り飯や風呂を済ましてベッドで横になって今日のことを振り返っていた。
(朝寝坊し、不良のケンカして助けた少女{能力者}とバトり結果遅刻して、けど能力判定のおかげで助かっ
て、放課後特活に呼び出しくらい勧誘され、理事長に確認しに行き、帰りにまた不良とケンカして、美少女と
逃げ回り、特活に助けてもらい家に帰ってきた。)
すげぇ一日だったなぁっと思った。
(こんなにすごい毎日だったらいつか過労で倒れるな。)
そしてもっとも驚きなのは、無能力の俺が特活部に勧誘されたことだ。
最初は色々困惑したものの、俺の中では答えは決まっている。
俺の答えは『ノー』、だ。
いくら仁さんの頼みでも俺みたい無能力者が特活部に入部したら、他生徒からの文句は殺到するだろう。
そんなことで迷惑はかけたくないし、第一俺自身あんまり入りたくない。
たしかにそうゆう意気込みで入る奴は素晴らしいと思う、けど俺の場合はそんなに入りたいって訳でもない。
そんな奴が入ったら試験に落ちた奴に失礼だと思う。
なので俺が入部を断ったらそれで済む話だ。
だから俺の答えは『ノー』、だ。
(大体何で俺なんだよ?)
仁さんの言ってることは漠然としすぎて良く分からなかった。
(まあ、断るんだからなんでもいっか、それよりも帰りに会った女の子どっかで見たことあるような・・・)
思い出してみれば金髪のロングヘアーを首の辺りで縛ってあり、目はカラーコンタクトだろう緑色の目をしていて、顔は綺麗なんだけどまだ幼さが残る美少女だった。
(せめて名前だけでも聞いとけば良かった。)
すこし後悔し、すぐにまあいいやと開き直り寝てしまった。
■□■□■ sile月光 優那
「理事長は無能力者の彼を特活部に勧誘させたのかなぜ教えてくれないのですか?」
『今は言うべきときじゃないから、かな。』
電話先の威厳ある声の主はこの学校の理事長である
「わかりました。ではそのときがきたら襲えてくれるんですね?」
『もちろん。』
「そのときを心待ちにしています。それでは。」
と言い電話を切る。
あいかわらず彼を特活部に入れたい理由がわからない、と彼女は思った。
けれどハッキリしたことが一つ分かった。
いや、、前々から思っていたが確信した。
(理事長は私に教える気が無い)