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青春の後ろ姿

UPしていたと思ったらしていなかった。

姉と弟と春と『うる星やつら』感を出したくて書きました。

 お兄さんは起き上がると言いました。

「結婚してくれなきゃ逮捕しちゃうぞ」

そんなお兄さんの言葉が廊下で聞こえたお兄さんのお姉さんは言いました。

「お前がな」

何をされてこいとは言葉で言わなかったお姉さんの言葉は、お兄さんをギャフンといわせたようで、徐々に目を見開くお兄さんは真っ赤な顔をして口をパクパク動かしていました。そんなお兄さんを気にする様子もないお姉さんは階下へ降りていきました。

階下で会話が聞こえてきます。

「ミノルは?」

お兄さんの名前のようです。女性の声でした。母親でしょうか。それに対してお姉さんは答えます。

「愛の告白中」

「……何言ってるの?」

眉間にしわを寄せた母親と思しき女性の声が言います。

「サク。あんた時々よくわからないこと言うのよしなさい」

「ははは」

お姉さんの名前はサクのようです。

「花がサいて、ミノッたって名前の兄弟にする親がいうセリフとは思えないな」

「口答えを」

「”口答え”なんていう単語をわざと使って、そうじゃない私をそのように思わせるような形で陥れつつ、自らも演じて楽しもうたってそうはいかないよ。小春!」

「私の奥さんを名前呼びするのは止すんだ。マイ・ベイベー」

二人の女性の前に現れたのは、どうやらこの家の主人のようです。

「きしょいわ」

「流石にマイ・ベイベーはないわよ、マイ・ダーリン。」

「はっ」と言ってソファへと移動しているお姉さんをほかっておいて二人の世界に入り始めた夫婦に誰も止める者は居なかった。

ミノルと思しきお兄さんは思った。

学生時代の演劇部で男役をこなして女子生徒からプレゼントを貰ったことがあると言っていた母さんの息子なのに、何故モテないのかと。

 外でからすが鳴いた。

「カァー」

 すずめも鳴いた。

「チュンチュン」

 階下で小春も声をかけた。

「ミノルちゃんおごはんですよ」

「はぁ。ため息すら億劫になるような呼び方しないでくれる母さん」

大き目の声を張り上げた”ちゃん”付けされたミノルは、ため息をつくと半分開いていた扉を開けて階下へ降りていった。

「やっと降りてきた。おそいぞ、ミノル。俺が母さんをどう愛しているのか観察しておかなくてどうする。」

「俺たちは日頃の父さんを今まで見てきたので十分伝わっているから。気が付いて、いい加減に。そこのところよろしく」

「告白を練習している奴はもっと学ぶ姿勢をここでみせるものじゃないのか?」

「学びなさい」

「俺のハートよ勘違いするな。告白の姿を親から学ぶんじゃなくて姿勢や心意気を学べばいいんだ。そしてそれはもう十分に目にしている」

「あとはそうね。勇気ね。その場面に出くわしたときの勇気」

「母さん。息子も大切だけれど、俺のこと忘れてる」

「何言うの、マイ・ダーリン。行ってらっしゃい。……また直ぐに会えることを楽しみにしている、ぜ」

小春の右手が夫の顎に添えられて唇が触れるか触れないかという状態になった。しっかりミノルは見届けさせられていた。

今のを見なかったことにして、切り替えて朝食を食べに移動した。

「おう!」

元気になった主人は会社へ向かった。

「サクちゃん、これ分かる?」

主人を見送った小春は娘のサクに訊ねた。

「分かりたくないわ」

振り向きもしないで答えるサク。

「「うぜぇ」」

子供2人の息はピッタリだった。

ソファで今あった全てを見守っていたサクの友人である菊池という男はぼそりと言った。

「蛙の子は蛙」

「いつの間に?!」

息子さんは驚いた。

「さぁ」

驚く弟への気のない返事をするサクに菊池は頓着しなかった。

菊池を見るミノルを菊池はあえて笑顔で見返した。

「春ですね」

徐々に真っ赤になっていくミノルの顔。

それに気が付いたサクが笑った。

「はははははは」

「いやーいいですね。恋」

「や、やっぱり! もう、うるせー!」

テーブルにミノルの朝食の分を置いて、両手をついた小春はミノルの顔を覗き込んで、聞いた。

「で、どんな子なの?」

「どんなって、いいか・・・・・・ら」

ミノルはみそ汁のお椀と箸を持ち上げて顔を上げた。そして驚いて立ち上がった。

母の小春の顔の横にはお姉さんのサクとお姉さんの友人の菊池の顔もあった。

「あ、集まるな。姉さんも朝ご飯食べたのかよ!」

「そうだった」

さらりと席について母小春へと朝食を請求する。

「わかったから」

母小春も姉サクの分を用意し、菊池の分も用意する。

その様子を見ていたミノルは、数秒瞼を閉じた後、「時間時間」と呟いて、食事を再開しだした。

「まぁ、そうか」

サクが食べる合間に自分の推測を口にする。

「好きな相手がいないまま、セリフの練習をしていたか、そんなことを言ってしまう夢でも見ていたってことか」

サクの推理は当たっていた。

「ぐっ」

言葉に詰まる様子のミノルを見た、三人は頷いた。

「うんうん」

言いながら食事の続きに戻るサク。

「大丈夫だ。そんな類は俺にも覚えがある」

と菊池は言う。

「あいよ。それが青春。恋ってもんよ」

どこかの食堂の当主みたいな言い回しとなるべく低い声を出した小春。

「「ねー」」

菊池と小春が声を揃える。

「早くしないと遅刻するわよ」

サクが言う。

朝はまだ少し冷え込むこの季節。朝の陽を浴びて暖かくなっていく小春日和のことであった。

4人が笑っている。

「ミャ~」

「あらやだ。私ったらつい」

口元を手で隠して立ち上がる小春にサクはツッコんだ。

「いつものことだろ」

頷きながらサクに同意する菊池。

「毎回この時間に三毛ちゃんが鳴いてそれに気が付くっていうのがいつものことですからねぇ」

「お前も早く主張しろ」

ミノルが言い終わらないうちに、サクの右足が素早くテーブルの下で動いた。

「いだッ」

「お前が言うな」

「愛の告白して忙しかったですもんね」

「早く降りてこいってんだ」

「ッ」

パタパタとスリッパを鳴らす小春。

「はい、三毛ちゃん。朝ご飯よ」

「ミャ~」

とひと鳴きして食べ始めるのが我の流儀。

「賢い!」

「ミャー」

「かわいい」と菊池。

頷く2人の兄弟。

テーブルに戻ってきた小春はスタートの合図を送った。

「あらやだ。もうこんな時間。みんなもう出ないと遅刻しちゃうわよ」

席を立つ3人。

「ごちそうさまでしたは?」

「「「ごちそうさまでした」」」

「行って良し!」

今度は子供たちがバタバタと身支度を整えて玄関へと向かう番だ。

「さあさぁ」

靴を履く三人。

振り向く三人。

声を揃えて言った。

「「「行ってきます」」」

ーガチャリ

「行ってらっしゃい」

学校へと向かう三人。

道路を歩く後姿に、小春は呟いた。

「これぞ青春の後ろ姿」

書けてますかねぇ。

出来てるということで。

彼らで短編何本か書ければと思っています。

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