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最後の日が終わらない

掲載日:2026/01/20

※注意

本作は「タイムループ」「心理ホラー」「後悔と選択」をテーマにした物語です。

静かな日常が、ある“罪”をきっかけに崩れ始めます。

派手な戦闘ではなく、心の葛藤と選択が物語の核心です。

ゆっくりと不安が積み重なる物語が好きな方におすすめします。

第1話 最後の日の朝

私の状態は、まるで逃げ出すことすら許されない牢獄に閉じ込められているかのようだった。

意識が覚醒したその場所には、私自身と同じ姿をした死体が、血に濡れたまま地面に転がっていた。

そして影が、喉が裂けるほどの声で叫び続ける。

――まだ、罪の代価は払い終えていない。

その瞬間、私の手と鼻先から血が滴り落ちた。

それは私に思い出させるための合図だった。

おそらく、これは初めてではない。

地に伏しているそれらの身体は、私に似ているのではない。

それらはすべて、「私が死んだ回数」そのものだった。

――アラームの音。

目を覚ました私は、時計に視線を落とした。

大学へ向かう時間は、もうほとんど残されていなかった。

私の名はタイムル。

そして今日は、大学最後の日だった。

私は起き上がり、いつも通りにベッドを整え、洗面所へ向かう。

蛇口をひねり、歯を磨く。

泡を吐き出し、鏡を見たその瞬間――

背後に、夢の中で見たのと同じ「影」が立っていた。

初めてなら、恐怖で叫んでいただろう。

だが、もう何度見たか分からない。

それは何もしない。

脅すことすらなく、まるで石像のように、ただ静止している。

私はそれを無視し、大学の制服に着替え、家を出た。

鍵をかけ、大学へ向かう。

道の脇では、桜が咲き誇っていた。

それは、新しい学年が始まった証だった。

家から大学までは徒歩五分。

あまりにも近い距離だ。

普通の人間にとって、通学路とはいつも新しいものだ。

新しい車、新しい出来事、新しい風景。

だが、私の人生は停止していた。

同じ車、同じ風、同じ子どもたち。

すべてが、繰り返されている。

大学に到着すると、学生たちは皆、綺麗な服を身にまとっていた。

当然だ。今日は最後の日なのだから。

校内に入り、警備員に挨拶をする。

彼は微笑み、こう言った。

「また会えて嬉しいよ――もう一度。」

……もう一度?

一瞬、彼らもすべてを知っているのではないかと思った。

だが、その考えを振り払い、歩き出す。

そして、いつものように視線が向かう。

大学で一番高い屋上。

そこには、やはり影が立っていた。

私は苛立ちを抑えきれず、自分自身に問いかける。

――なぜ、この日は終わらないんだ。


第2話 繰り返される違和感


教室に入ると、ロウィン、ファーイク、そしてサラが談笑していた。

私が入室した瞬間、ファーイクがこちらに気づき、軽く挨拶の仕草をした。

私はロウィンの方へ視線を向けた。

いつもと同じ光景――のはずだった。

だが、その瞬間、私は思考の深淵に引きずり込まれた。

前回の死の記憶。

ロウィンの口元から、血に濡れた獣のような悪魔の腕が伸び出し、

何度も、何度も、彼の身体を内側から引き裂いて飛び出した。

そして次の瞬間、その腕は私の髪を掴み、喉ごと引きちぎった。

意識が現実へと戻った時、

私の頬には涙が伝っていた。

三人が一斉に声をかける。

「どうしたんだ、タイムル? 今日は嬉しい日だろ?」

「……なんでもない。」

するとロウィンが笑って言った。

「最後の日だし、写真撮ろうよ。」

私はいつものように怯えながらも、三人と一緒に校庭へ向かった。

だが、前回の死が起きるはずだった時間が過ぎ去った時、

胸の奥に、安堵が広がった。

問題は一つだけだった。

時間は確かに巻き戻っている。

この日は、明らかにループしている。

だが――

私の死に方だけが、毎回違う。

もしそうなら。

次こそ、回避できるかもしれない。

私は三人と別れ、学内の庭園を一人で歩き始めた。

するとロウィン、ファーイク、サラが追いついてきて言う。

「最後の日のスピーチがあるんだ。

 全員、メインホールに集まれって。

 校長先生が最後の挨拶をするらしい。」

四人でホールへ向かう途中、

道の脇に図書館があった。

その扉の前に立った瞬間、

――呼ばれている。

そう感じた。

「先に行ってて。すぐ追いつく。」

三人はホールへ向かい、私は図書館の扉を開いた。

中には、白い光が立っていた。

それは、まるで人の形をしているように見えた。

「……君は誰だ?」

問いかけても、光は答えない。

ただ、逃げるように奥へ進んでいく。

私は追った。

本棚と本棚の間を抜け、

その光は、私を“別の世界”へと導いた。

気づいた時、私は異界に立っていた。

巨大な建造物が、綿の山のように空中へ浮かび、

銀河は、まるで空そのものに飾り付けられた装飾のようだった。

周囲は崩壊し、

地面は草とガラスを混ぜ合わせたような質感を持ち、

重力は現実よりもわずかに弱い。

その白い光が、初めて口を開いた。

「……自由になりたいか?」

心臓が跳ね上がり、

呼吸が乱れ、瞳孔が収縮する。

それは、

三日間水を与えられなかった者が、

砂漠で水を差し出された時の感覚に似ていた。

「……なりたい。」

そう答えた瞬間、

世界が歪み、ぼやけ、黒に染まっていく。

闇が、こちらへ迫ってきた。

まるで、私そのものを喰らおうとするかのように。

私は必死に逃げた。

だが、それは速すぎた。

次の瞬間、

私は闇の中へと落ちていった。

――そして、目を覚ました。

そこは、同じ図書館だった。

何事もなかったかのように、私はホールへ向かう。

だが、頭の中には一つの問いだけが残っていた。

あれは、何者だったのか。

なぜ、私のことを知っている。

そして――

私は、本当に自由になれるのか。


第3話 罪の最初の認識

ホールの扉の前に、俺は立っていた。

子どもたちや人々の笑い声、喜びに満ちた空気、そして校長の媚びるような声が、耳の奥で反響していた。

扉を開けると、ロヴィン、ファイク、サラがこちらを見て手招きし、隣に座るよう促してきた。

俺は一歩踏み出し、三人のもとへ向かって腰を下ろした。

校長の力強いスピーチが始まる。

だが、聞こえてくる言葉は、何度も何度も耳にしてきたものと同じだった。

意識は現実から離れ、思考は内側へ沈んでいく。

――俺はいったい、どんな罪を犯したというんだ。

――なぜ、こんな恐ろしい罰を受け続けなければならない。

――そして、なぜすべてが繰り返される?

疲労が、身体だけでなく思考までも削り取っていた。

サラがこちらを見て問いかける。

「どうしたの?」

「……何でもない」

そう答えた瞬間、視界がわずかに狭まった。

それは単なる質問ではなかった。

――危険の合図だ。

もう時間だ。

俺は何度も死んできた。

だから分かる。

この先、何が起きてもおかしくない。

警戒しながら、スピーチの終わりを迎える。

ホールは拍手の音で満たされた。

そのとき、俺はふと校長の背後を見た。

――そこにいた。

鏡の中で見た、あの“影”が。

胸の奥が告げる。

死が、近い。

だが影は何もしない。

ただ、人形のように立ち尽くしているだけだった。

やがて、あの声が再び響く。

「まだ、罪の代償は払いきれていない」

影は、まるで蝋が溶けるように形を崩し始めた。

それは明確な警告だった。

――水に近づくな。

さもなくば、溺死が待っている。

俺は決めた。

もう二度と、水には近づかない。

それでも、頭の中には一つの疑問だけが渦巻いていた。

俺は、何をした?

なぜ、ここまでの罰を受ける?

俺は三人に言った。

「……庭に行こう」

彼らは驚いた表情を浮かべた。

今日は最後の日。

プールへ行くと、ずっと前から決めていたはずだった。

それでも俺は説得し、三人を庭へ連れて行った。

庭では、過ぎ去った日々を振り返りながら、他愛のない会話を交わした。

ふと腕時計を見る。

――時間が、止まっている。

校舎の時計に目を向けると、そちらは正常に動いていた。

どういうことだ……?

ファイクが笑いながら言う。

「今日を境に、全部変わるさ」

俺は小さく呟いた。

「……違う」

「今、何か言った?」とサラ。

「いや、何でもない」

だが、ファイクを見ると、肩を強張らせ、視線を落としたまま動かない。

まるで、石像のように。

サラが彼を揺さぶる。

「どうしたの?」

少し間を置いて、彼は顔を上げた。

「……何でもない」

その瞬間、背筋を冷たいものが走った。

この声……昨日も聞いた。

ロヴィンが言う。

「みんな、庭で遊んでて楽しそうだね」

景色は、あまりにも“いつも通り”だった。

だが突然、激しい頭痛が襲ってくる。

石で頭を打ち割りたくなるほどの痛み。

耳鳴りとともに、異様な声が重なり始めた。

三人は俺の前に立っていた。

だが、その瞳に、感情はなかった。

周囲の音が次第に消えていく。

残ったのは、ただ一つの声だけ。

「罪を悔い改めよ。

さもなくば、報いを受けよ」

俺は叫んだ。

「どんな罪だ!?

教えてくれ! 分かれば、受け入れる!」

その直後、三人の身体が水のように崩れ始めた。

逃げようとした。

だが、足が地面へと沈み込んでいく。

頭の中には、ただ一つの問いだけ。

なぜ俺は、何の罪かも知らされない?

その瞬間――

地面から、一本の手が伸びた。

次の瞬間、

俺の身体は、真っ二つに引き裂かれていた。


第4話 鏡の中で微笑んだ影と、逃れられない“借り”


息を切らしながら目を覚ました。

だが今回は、声が喉の奥で押し潰されたように出なかった。

身体は粉々になるほど痛んでいた。

――しかし、この痛みは今までとは違う。

死から目覚めた瞬間、全身が悲鳴を上げていた。

死はいつも痕跡を残す。

だが「痛み」だけは、初めてだった。

勇気を振り絞って腕を見る。

血の通いを忘れたように、力が抜けていた。

腕には青黒い血管が浮かび上がり、

まるでインクを流し込まれたかのようだった。

足を引きずりながら洗面所へ向かう。

――鏡を見るべきか?

頭は何度も警告していた。

見る意味などない。

いつも同じ結末なのだから。

それでも、視線は鏡へ向いた。

その瞬間、全身の毛が逆立った。

違う。

これまで140回の死の中で、初めてのことだった。

鏡に映っていたのは、俺の顔ではない。

“影”だった。

そして――

それは笑っていた。

こちらを、真っ直ぐに。

今にも鏡から飛び出し、俺を引き裂きそうだった。

肉体的な恐怖はない。

死には慣れている。

だが、

その“存在感”と、

“笑み”だけは、異常だった。

振り返る。

何もいない。

だが再び鏡を見ると――

影は、すぐそこにいた。

耳元で囁かれる。

「まだ、借りは返されていない」

身体が凍りついた。

そうでなければ聞いていたはずだ。

何の借りなのか。

どんな罪の代償なのか。

影はそれだけ言い残し、消えた。

床に崩れ落ちる。

恐怖ではない。

ただ、疲れ切っていた。

それでも――

俺は諦めなかった。

震える手で制服を着ながら誓う。

このループから抜け出す。

それが無理でも、

死ぬ前に真実を掴む。

扉に鍵をかけ、

いつものように学校へ向かった。

今日の世界は、どこか歪んでいた。

風向きだけが変わり、

車の速度も、子供の笑い声も同じなのに――

周囲の音だけが、

異様に遠かった。

校門をくぐる。

警備員がいつも通り言う。

「また会えて嬉しいよ」

今日は聞いた。

「なぜ毎回、そう言うんですか?」

彼は言葉を濁した。

「いや……昨日も来ただろ?」

立ち去りながら振り返ると、

彼は災厄を免れた者のような表情をしていた。

教室に入る。

サラ、ファイク、ロウィン。

いつも通りの光景。

席に座り、俯く。

サラがノートを閉じた。

「ティムール、大丈夫?」

「……大丈夫だ」

だが、確信していた。

このループを知っているのは、

俺だけじゃない。

もし俺一人なら、

すべては完璧に繰り返されるはずだ。

――違う。

その時、

頭痛が走った。

知っている痛みだ。

それは告げていた。

死が、再び近づいている。


第5話同じ顔の群衆と、悪魔が差し出した取引

顔を上げた瞬間、世界が止まった。

教室にいた全員――生徒も、大人も、

そしてサラ、ファイク、ロウィンまでもが、

まるで石像のように動かなくなっていた。

だが、止まっていたのは身体だけだった。

彼らの顔が、歪み始めた。

別の誰かの顔に変わり、

また別の誰かの顔になり、

やがて――

全員が、同じ顔になった。

俺の顔に。

心臓が強く跳ね、

背中を冷たい汗が伝った。

恐怖に耐えきれず、俺は教室を飛び出した。

グラウンドへ向かって走り出した、その瞬間――

視界に入った光景に、足が止まった。

学校の建物全体から、血が流れ落ちていた。

壁が裂け、

天井から滴り、

まるで血の雨が降っているかのようだった。

息が詰まり、視界が揺れる。

反射的に教室へ引き返した。

だが、そこにあったのは――

さらに恐ろしい光景だった。

全員の顔が、完全に俺と同じになっていた。

逃げ場はない。

壁に背をつけ、震える唇で、

俺は一つの名前を口にした。

「……カイ」

次の瞬間、

血に染まった“俺”たちが、一斉にこちらへ飛びかかってきた。

――今日の餌は、俺だ。

本能だけで走った。

メインゲートへ。

だが――

門番が立ちはだかった。

その顔も、俺だった。

腕を掴まれた瞬間、

周囲から“俺”たちが殺到する。

肉を裂かれ、

骨に歯が食い込み、

意識が削られていく。

頭の中で、ひとつの疑問が回り続けた。

俺は、俺自身を食っているのか?

それとも――

俺の顔をした、別の何かに?

言葉にできない激痛の中、

誰かが俺の内臓を引きずり出した。

そこで、俺は死んだ。

目を開けると、また同じ朝だった。

だが、今度ははっきりしていた。

これは単なるタイムループじゃない。

誰かが、俺を**時間のタイムルーム**に閉じ込めている。

そして、その“誰か”は――

最初から、ずっと俺のそばにいた。

名前は、おそらく――

カイ。

だが、なぜ俺なんだ?

その疑問が浮かんだ瞬間、

ひとつの考えが頭をよぎった。

――学校へ行かなければ?

俺は家を飛び出し、

いつもの道とは逆方向へ歩き出した。

しばらく進むと、

周囲の景色が歪み始めた。

希望が胸に灯る。

もしかして、ループが壊れる――

だが、現実は甘くなかった。

地面が裂け、

赤く煮えたぎる溶岩が姿を現した。

俺は、その中へ落ちた。

意識を取り戻したとき、

目の前に“彼”が立っていた。

いつも鏡に映っていた影――

だが今は、はっきりと姿を持っている。

「私の名は、ルシファー」

低く、甘い声だった。

「契約しよう。

君を、この苦しみから解放してあげる」

代償は――

俺の魂。

すぐに分かった。

これは罠だ。

この地獄を作り、

逃げ場を奪い、

自ら差し出させるための――悪魔の常套手段。

俺が返事をしようとした、その瞬間。

『私のような過ちを犯すな、ティムール』

どこからか声が響いた。

気づくと、俺の手には一本の剣が握られていた。

『自分の喉を切れ』

一方で、ルシファーは囁く。

「契約しろ」

二つの声が重なり、

頭が割れそうになる。

俺は――決断した。

剣を振るった。

目を覚ますと、そこは家ではなかった。

俺の前に立っていたのは、

かつて図書館で出会った――

あの光の存在だった。

「悪魔は、夢の中では完全ではない」

彼女は静かに言った。

「だから、あなた自身の手で死なせた」

時間がない。

「自由になりたいなら、

“ひとつの罪”の許しを得なさい」

「……どの罪だ?」

「学校のデータベースで、

**『カイセン』**という名前を調べなさい」

「答えは、そこにある」

目覚ましの音が鳴り響く。

俺は――

自由への、かすかな希望を胸に、目を覚ました。


第6話 真実は、遅すぎた約束の中に


俺は急いで服を着替え、洗面所に入った。

だが、鏡の中に“あの影”はいなかった。

あの悪魔のような存在は、今回は姿を現さなかった。

――今日は、本当に解放される日なのかもしれない。

俺は家を飛び出し、鍵をかけ、大学へ向かった。

いつもなら周囲の些細な変化に目を向けていたが、今日は何も見ようとしなかった。

身体は痛んでいた。それでも、それ以上に胸が満たされていた。

なぜなら――今日は終わる日だからだ。

校門をくぐるとき、警備員の声も無視した。

教室には向かわず、俺は真っ直ぐ事務室へ向かった。

幸運なことに、事務員はいなかった。

俺には時間があった。

パソコンの前に座り、電源を入れ、学生データを検索し始める。

そして、ある名前が目に留まった。

――Kaisen。

ファイルを開いた瞬間、全身に鳥肌が立った。

心臓が激しく脈打つ。

「……サイム?」

涙が溢れた。

記憶が一気に蘇る。

サイムは、俺の親友だった。

一年生の頃から、いつも一緒だった。

――死んだはずの、親友。

突然、過去の光景が脳裏に浮かぶ。

一年前。

一年生最後の日。

俺とサイムは教室で本を片付けていた。

そこへ一人の教師が来て言った。

「サイム、ターミル。屋上に荷物を置いてきてくれ。」

俺たちは階段を上った。

途中で、サイムが立ち止まり、俺を呼び止めた。

異様なほど真剣な表情だった。

「ターミル……

もし俺が死んだら、約束してくれ。

すぐに誰かを呼ぶんだ。

一人で抱え込むな。」

俺は、うなずいた。

屋上に着いた、その瞬間――

サイムは、落ちた。

世界が止まった。

頭が真っ白になった。

俺は我を忘れて階段を駆け下りた。

言葉も、声も、失っていた。

「サイムが落ちた!」

校内は騒然となった。

俺は一人、部屋で泣いていた。

声も出せず、ただ震えて。

医者が言った。

「あと数分早ければ、助かった可能性があった。」

そのとき、サイムの言葉が胸に刺さった。

――なぜ、あんなことを言った?

現実に戻る。

画面には、カイセンのデータ。

俺は歯を食いしばった。

もし、あのとき誰かを呼んでいたら――

俺は教師のデータを確認した。

そして、理解してしまった。

その日――

あの教師は、休暇中だった。

「……じゃあ、あの日……」

次の瞬間。

背後から、冷たい金属が首に触れた。

一撃だった。

俺の首は、静かに宙を舞った。


第7話 罪を選び、自由を選んだ日


私は起き上がった。

今日は、どこかおかしなほどの幸福感があった。

胸の奥で騒ぎ立てるような、不思議な喜びだった。

なぜなら——

今日から、自由だったからだ。

今日は制服を着ずに外へ出た。

家に鍵をかけることもなく、

道中で誰かのガードに止められることもなかった。

なぜなら今日、ついに理解したからだ。

自分の過ちが何だったのか、

そして、なぜ自分がこのタイムループに囚われていたのかを。

私は大学へ向かっていた。

そのとき突然、

視線が、あの大学のテラスに引き寄せられた。

——サイムが死んだ、あのテラス。

そこに立っていたのは、

光で形作られた“人”。

……サイムだった。

彼の存在は光そのもののように輝いていた。

完全な人間でもなく、

完全な影でもない。

私は彼の方へ歩き出した。

心の中で、こう思った。

「今日は、彼に謝ろう。

今日こそ、自由になれるはずだ」

しかし——

大学の門の中へ一歩足を踏み入れた瞬間、

世界が変わった。

風も、

鳥も、

人間も、

壁も、

地面も、

生きているものも、

生きていないものも、

すべてが悪魔の姿へと変貌した。

全てが、私を追いかけてくる。

——殺すために。

私は全力で走った。

あらゆるものが、私のために罠を張っていた。

道は次々と塞がれていく。

そのとき突然、

サイムの声が響いた。

「僕のところへ来れば、自由になれる。

だが、悪魔に殺されれば、

今度こそ本当に死ぬ」

今日は、私の人生で最も重要な日だった。

再び、

生と死の選択が迫られていた。

私は走った。

奴らも、私を追って走った。

私は大学の建物へ飛び込み、

釘の打ち込まれた木の板を掴んだ。

目の前に現れるものすべてを、

叩き続けた。

突然、

一本の釘が私の目に突き刺さった。

致命的な損傷ではなかったが、

血が止めどなく流れ出した。

それでも——

私は止まらなかった。

走り続けた。

……走り続けた。

そして、ついにテラスへ辿り着いた。

扉を開けると——

そこに、

自由が立っていた。

光のように輝く、

サイムの身体。

私は一歩、前へ踏み出した。

その瞬間——

悪魔自身が姿を現した。

奴は容赦なく、私を殴り続けた。

何度も、何度も。

それでも私は、

這いずりながら前へ進んだ。

悪魔は私の背中に乗り、

髪を引き裂いた。

血が流れ落ちた。

胸の上に座り、嘲笑う。

「取引しろと言っただろう?

だが、お前は聞かなかった。

本当に思ったのか?

俺が作ったタイムループから、

抜け出せると?」

私は叫んだ。

「お前の……ループ?」

悪魔は笑った。

「最初から、お前は俺のループの中にいた。

サイム?

あれは、ただの駒にすぎない」

その瞬間、すべてを理解した。

影 = 悪魔

光 = サイム

ループ = 悪魔の牢獄

私は最後の質問を投げかけた。

「サイムは、どうやって死んだ?

そして、なぜ俺はループに囚われた?」

悪魔は答えた。

「サイムは良い少年だった。

だが、父親が末期癌になった。

医者は全員、見放した。

俺はそこに目をつけ、

彼と魂の契約を結んだ。

父親を治す代わりに、

“借り”を背負わせた。

死に最も近い者は、

俺のタイムループに囚われる。

俺が彼に死を命じたとき、

そこにいたのは、お前だけだった。

借りは——お前に移った」

ようやく、自分の過ちが分かった。

私には、二つの道があった。

沈黙の罪の代償として、

悪魔と取引するか。

それとも——

サイムに謝るか。

そのとき悟った。

これこそが、悪魔の最大の武器なのだ。

人間を、

自らの魂を売るところまで追い込むこと。

サイムが顔を上げ、言った。

「ティムール、

君は僕の一番の親友だった。

僕のような過ちを、

君にはしてほしくない」

私は傷だらけのまま、泣き崩れた。

「サイム……

許してくれ……」

サイムも、涙を流した。

悪魔が叫ぶ。

「さあ、死ぬ準備をしろ!」

その瞬間——

サイムは怒りに満ちた視線で悪魔を見た。

次の瞬間、

悪魔の喉は、ひとりでに切り裂かれ、

地面へと転がり落ちた。

タイムループは、崩壊した。

私は、

サイムが死んだ、あの場所に倒れた。

目を開けると、

ファイク、サラ、ローハンが目の前にいた。

私は、微笑んでいた。

——自由になったのだ。

その日、私は一つの教訓を得た。

悪魔は、人を直接殺さない。

人を、

自ら魂を売る地点まで導くだけだ。

そして、真の自由とは——

罪を認めること。

沈黙することではない。

病院に入院してから一週間後、

一人の少年が病院の中で私のもとを訪れた。

年齢はおよそ十七歳。

身長は約五フィート五インチ。

胸板が厚く、やや太めの体格。

肌の色は小麦色と白の混ざったような色合いで、

頬は薔薇色。

髪は側面が黒く、

上部——ふわりとした部分は、

自然なゴールドと赤が混ざり合っていた。

彼は私に近づき、ウルドゥー語で尋ねた。

「調子はどうだ?」

私は答えた。

「ウルドゥー語は分からない」

すると彼は翻訳機を呼び、

それを通して言った。

「私の名は、ロード・ムルタザ。

君がタイムループの中にいたことは知っている」

私は、それを聞いて凍りついた。

彼は続けた。

「君のすべての物語を聞かせてほしい」

——そして私は、

自分のすべての物語を語った。

........................................................................

筆者からのメモ:


何かご質問がありましたら、コメント欄でお知らせください。第8章の特別編では、物語の中ですべてのご質問にお答えします。これは私の最初のプロジェクトであり、将来アニメ化されたら映画になるという意図で書きました。これは私がまだ初心者だったため、最初のプロジェクトであり、さらに 150 章の物語を書く予定です。


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語は「沈黙もまた罪になり得る」という想いから生まれました。


人は時に、選ばなかった選択によって縛られます。

その鎖を断ち切れるのは、後悔ではなく“向き合う勇気”だけです。


本作はペンネーム「Lord Murtaza」として執

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