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サンタクロースの悩み

作者: 真田誠

皆さんサンタクロースと聞くと何を思い浮かべるだろう。

え?サンタクロースは存在しないって?

そんな夢のないことは言うものではない。この世界にはサンタクロースは存在する。

さて、話を元に戻そう。皆さんのサンタクロース像といえば……。


赤い衣装に赤い帽子。

りっぱな白い髭。

真っ赤なお鼻のトナカイさん。

そして一番大切なのはクリスマス・イブに子供たちにプレゼントを届ける。


地域や時代ごとでサンタクロースのイメージは少し違うがこんなところではないだろうか。

今回のお話は、ほとんど子供たちは考えたことないであろうサンタクロースの仕事を紹介しよう。

サンタクロースは1人もしくは数人程度しかいないと思われているが実際は違う。この世界のサンタクロースは現代の社会のシステムを取り組みながら分業で行っている。

その中でも私はサンタクロース全体を取りまとめる総括部の長として仕事を行っている。

総括の仕事は様々あり、財源の管理、プレゼント購入費の予算執行承認、プレゼント製作工場の全体把握やシフト調整、運送部隊であるトナカイたちの健康管理、そして一番人目につく運送部隊サンタクロースの教育及び採用についてである。

ほかにも細々とした仕事はあるが主にはこのような感じである。


サンタクロースの仕事はクリスマス・イブが大一番の仕事ではあるが、実は1月から仕事が始まる。

夢を壊すようで申し訳ないが、サンタクロースも無給で仕事をしている場合ではない。それにタダでプレゼントを作れる訳ではない。

実は世界中のプレゼントを配布した子供たちの国ごとの比率を計算し、翌年度の予算を計算して各国に予算要求をしている。これは世界でも認められているが、夢を壊してしまうとのことから内緒にされている。

そのため前年の実績に伴い、今年のクリスマス・イブの予算が各国から配布されるわけではあるが、そう簡単に物事が進む訳ではない。

総括部は各部署で円滑に仕事が行えるように予算を配布するわけであるが、これが中々上手くいかない。

1月に各部署の大まかな予算を決めて配布を順次行っていくのだが、サンタクロースも世界情勢に伴った影響を受ける。例えば物価の高騰やプレゼント製作のための設備の燃料費高騰、その他にもトナカイたちの食料費などなど……。


6月頃になると予算が足りなそうだと少しずつ報告を受ける。プレゼント製作が本格化してくる8月以降になると一気に予算が減る。そうなると財務部が悲鳴を上げ出す。

私はどこかコストカットが出来ないか各部署に確認をするとともに、予算確保に走り出す。10月のハロウィーンを過ぎると街中は徐々にクリスマスソングが流れ出し、プレゼントの話を始める。

私はこのタイミングで『実は……』と各国に追加予算をお願いする。勿論簡単にはいかないし、お叱りを受ける場合もある。

しかし、各国の責任者もサンタクロースのプレゼントを楽しみに子供時代を過ごしていた人々だ。最後は渋々ではあるが財源の融通をしてくれる。

私としてはこのやり方はいつかは破綻すると思っている。世界情勢に左右されるとはいえ、もう少し上手に予算管理をする必要があると感じている。


問題は予算管理だけではない。プレゼント製作設備も古い物が多く、燃料も電気も消費する設備が多い。また、故障も多々発生する。今は修理しながら運転している設備もある。そのため新品に変えたいところではあるが、だからといって簡単に買い換えとはいかない。

プレゼント製作設備自体を作る職人たちも高齢化して人財不足であり、製作費用が高騰している。このような事情から簡単に新品を入れるとの判断もできない。


人材不足は職人だけはなくサンタクロースたちもそうだ。ベテランサンタクロースが増えてきており、年間フルで仕事をするのが厳しいサンタクロースもいる。そのため、繁忙期の12月前にスポット的に仕事に入ってもらいながら仕事を維持している。


ここまでの説明でどれだけサンタクロースの仕事が現代問題と近い状況になっているか理解していただけたであろうか。

サンタクロースも仕事を辞めるのは簡単である。しかし、ここで働いているサンタクロース全員が先人たちのサンタクロースに人生を変えてもらったサンタクロースばかりだ。

だからみんな文句を言いながらも毎年のクリスマス・イブにむけて一生懸命働いている。


この仕事をしていて報われたと思う瞬間はクリスマスの朝の子供たちの喜び、その後のお手紙を貰った時である。

だから今年のクリスマス・イブもサンタクロースたちは空に飛んでいく。

みんなが聞いたことがある『メリークリスマス』と言いながら。

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