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東地中海戦域②

帝国海軍第三艦隊の先遣部隊がアレキサンドリア軍港に入港したことは、その日のうちにドイツ軍にも連絡が入ったらしい。

それを証明するかのように帝国陸海軍基地航空隊との航空撃滅戦を展開している最中にドイツ軍偵察機が、アレキサンドリア上空に姿を現した。

機影から見てHe177の偵察機型と判断できた。

クレタ島の航空基地を起点に飛来した機体であった。

無論、すぐに警報のサイレンが鳴り渡り、近郊の基地からは、邀撃命令を受けたスピットファイアが飛び立った。

この時期、日英の航空隊は明確に自らの仕事を分けていた。

航空撃滅戦における攻撃は、英空軍の爆撃機と帝国陸海軍の戦闘機隊、爆撃隊が担当し、アレキサンドリア周辺での防空任務は英空軍の戦闘機隊が担っていた。

今回飛来したHe177も、邀撃を受けることは計算済みだったらしく、軍港上空を一、二回旋回すると、すぐに機首を北西へ向けた。

恐らくクレタ島の基地から、ベルリンへ向けて緊急報告が打電されているだろう。

日本の四戦艦の存在は、その独特な艦影から見ても、英国戦艦とは明確に異なる特徴が幾つもあるから誤魔化しようのないものであった。

この偵察情報を受けたドイツ本土では、総統ヒトラーが激怒していた。

腰の重いイタリアの尻を叩き、英海軍地中海艦隊に打撃を与え、イタリア海軍の戦力が集結しつつあるこの時期に帝国海軍第三艦隊の来援はヒトラーからすれば完全に寝耳に水な状態であった。

そして、一時的に自信を取り戻したイタリア王国海軍が、再び不安に駆られていることは、容易に想像がついた。

理由は幾つか挙げられるが、艦隊の頭上を守る航空支援をイタリア海軍航空隊単独では行えず、空軍に依存していることがその一つだ。

ただ事の真意は別として、イタリア王国海軍は、海戦で主力艦艇を喪失することを、海軍首脳部が露骨に嫌がった。

このことが、艦隊指揮官たちの作戦行動を極めて消極的にしたとも言える。

但しイタリア王国海軍から言わせれば、大海軍国家である日米英海軍の積極的かつ旺盛な攻撃性の方が異常であった。

日米英海軍首脳部は軒並み、主力艦の悉くが撃沈破されたとしても戦争に勝てればそれで良いと考えていたからだ。

これは戦力的にも劣るイタリア王国海軍では有り得ない考え方であった。

そんな状況だったため、イタリア王国海軍はより海軍戦力の集結と、確固たる空軍による上空支援が確約されるまでは当面東地中海戦域における作戦行動を控えたのであった。

このイタリア王国海軍の消極性が、後にイタリア王国海軍史上最悪の日と言われる、「第二次タラント空襲」を招いたと今日まで言われるのであった。


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