アレクサンドリア防空戦②
アレクサンドリアに向かっていた独空軍編隊は、日英航空隊から激しい迎撃を受け、損害を受けていた。
「無事な機体はどのくらいだ?」
He177に搭乗している編隊指揮官は、通信士に尋ねた。
「我々本隊は無事ですが、先頭にいたHe111とJU88の混成編隊は殆ど落とされた模様です」
「やはり旧型だとキツイな・・・・・・兎に角残った編隊を合流させろ。ここ迄来れば敵の戦闘機隊も味方からの地上砲火の中では戦えまい」
指揮官はそう言うと、残った先頭編隊を合流させ、アレクサンドリアを焼き払うべく進撃を続けた。
この先にあるのは、高射砲しかないため、彼等は高度を上げつつ接近していた。
この時代の高射砲による対空砲火の命中率は、現代に比べると殆ど当たらないのが全員の認識であった。
しかしアレクサンドリアに展開していた帝国陸軍高射砲大隊は、それを解決するある装備を持って来ていた。
その洗礼を独空軍は受けようとしていた。
「我が軍の迎撃を受けていた敵編隊は、急速接近中」
「イ101号砲台より通信、『敵編隊射程内に入りつつあり』」
「電波防空監視隊より、全高射砲レーダーの統制下に入ったとの事」
「各砲座射撃準備良し!」
「各砲座撃ち方始め!」
アレクサンドリアに展開していた、帝国陸軍高射砲大隊の各砲座から、一斉に射撃が開始された瞬間であった。
「何だ、この対空砲火は!?イングランド航空戦でもこんな対空砲火を受けたことはないぞ!」
「し、司令、編隊各機から被弾する機体が相次いでいます!」
「全機高度を更に上げろ!後方にいる編隊は、シチリア島に帰還させろ!残念だが我々が生きて帰ることは不可能なようだ・・・・・・」
この時独空軍編隊を迎え撃ったのは、戊式75mm野戦高射砲、一式88mm高射砲、二式12.7cm高射砲による物であった。
これらの高射砲群は、電子式高射算定具とレーダーを組み込んだ射撃管制装置による統制を受け、命中率を飛躍的に上げていた。
この電子式高射算定具は、1925年にユダヤ人物理学者ユリウス・エドガー・リリエンフェルトが発明した物を、1930年代に日本理化学研究所が彼を招聘し、莫大な予算をかけ量産に漕ぎ着けたトランジスタを組み込んでいた。
また射撃管制装置も、トランジスタ式の検波、論理回路、岡部式水冷分割陽極型マグネトロン及びパラボナアンテナから構成されるマイクロ波(UHF帯)レーダーを組み込まれていた。
結果的に、費用が高くなったが航空機が地上で撃破されるのに比べたらマシだと判断され、大量生産がされている。
後に海軍でも、各艦艇に小型化された射撃管制装置や算定具を装備している。
戦争後期には、トランジスタを組み込んだ近接信管を開発され、枢軸国空軍の航空機の駆逐に貢献している。




