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054 - 【Lv39 盗賊団の首領】

「ベリアっ!!」

「お疲れ様ですヤ…、イーサン。その方が捕虜の……女性の方だったんですか?」


なんだその疑惑の眼差しはっ。 何処かの天然男じゃあるまいし、狙ってなんかいませんよ!


洞窟から抜け出した途端、ランドに乗ったベリアがすぐさま傍に近付いてきた。

ソレを確認しつつ、洞窟の方に目をやる。


……うわぁ、岩が灼熱してる。

所々火を噴いているし、所々仄明るく岩が燃えている。

一体どれだけの熱量をぶつければ岩がとろけるのかと。


「ちょっと気合を入れてみました♪」


可愛らしく言っているが、その手に握られているのは件の霊弓、ホークアイ。

薄らと輝くその弓からは、洒落にならないレベルの魔力が放たれている。

……あ、アレか。それで爆撃したわけか。

その威力は、いうなれば嘗ての世界の航空搭載兵器、クラスター爆弾(大筒から小型爆弾を散布する、いわゆる“親子爆弾”というやつ)に匹敵するんではなかろうか。

しかも、それを連射するわけだから。


しかし残念ながら、コレだけの火力を受けて、洞窟自体はまだ存続しているようだ。

やはり地盤が良い場所にある影響だろうか。これだけの攻撃を喰らえば、幾らなんでも普通の洞窟なら崩れ落ちていると思うのだけれども。


……っと、隣でレイアさんがびっくりしている。

そういえば紹介がまだだった。


「レイアさん、此方俺の仲間のベリアです」

「こんばんは。よろしくお願いします」

「あ、ああ……宜しく頼む」


ちょっとキョドっていたようだが、ベリアと握手して何とか緊張は解けたようだった。

フードを被っているものの、ベリアはやっぱり美少女で、その威力は美女にも十分効果的だった様だ。

因みに、フードを被っているのは髪の毛とか容姿を出来るだけ隠すための処置だ。

俺ほどではないにしても、ベリアの白髪はかなり目立つ。……ま、この夜闇で大分は紛れると思うのだけれども。


「……っと、挨拶は後回しで。……とりあえず、埋めてしまおうか」

「ですね。此方でやりましょうか?」

「いや、援護で疲れたろう? 此処は俺が処理するよ」


「ちょっ、ちょっと待った!」


ベリアと話して、洞窟に向き直った途端、すぐ脇に立つレイアさんが慌てたように声を荒げた。


「なんです?」

「埋めるとはどういうことだ!? 連中……特に、あそこの首領には、裁判を以って罪を裁かなければ……」

「……。現状の戦力に、相手を捕獲するだけの余力はありません。魔力欠乏の貴女に、中・遠距離担当のベリア、俺にも相手を捕獲できるほどに命のやり取りを経験しているわけではないので」


まぁ、この世界に来てパワーアップ云々以前に嘘だが。

やろうと思えばあの程度の相手、両手両足を落してイモムシにすれば捕獲は出来る。

が、そんな面倒な事はしない。そんなことをしたところで結局は絞首刑(みのむし)になる、哀れなだけだ。

ゴミはゴミとしてちゃんと処分するべきだ。ソレを処分の過程で弄ぶ……殺しで遊ぶ趣味は無い。

苛めるのは好きだが。


「ならば国からの増援を……」

「ソレを待てば、リンネルの村が報復を受け、その間に連中は完全に姿を眩ますでしょうね」


自陣が割れて、相手の勢力が圧倒的であり、必ず相手が攻め込んでくると判っているのにその場に留まる、何ているのはよっぽど自信があるか、よっぽどの馬鹿かしかない。


よって、現時点をもってあそこを破壊する。


「――水よ集え、風よ集え。雷は悶えよ」


魔術について勉強してわかったことなのだが。

魔術の系統にも、其々名前みたいなものがあるらしい。


例えば、最初に習った誰でも一定は扱える魔術。これは扱いやすさを重視し、属性系の魔術を多く含むことから、属性魔術と呼ばれる。

次に俺が習得した、意志の力によって威力が増減する、案外不安定な魔術。此方は属性に拘らず、精神世界側(アストラルサイド)に対応する事も可能として、念威魔術と呼ばれる。要するに無属性の魔術がおおいわけだ。

その次、高位存在である精霊から力を借り受ける精霊魔法は、現在精霊を信仰する神殿の神官くらいしか使い手がいない。治癒魔術なんかも一応精霊の力を借りて施したりするらしい。

最後、黒魔術。これは精霊以外の、精神世界側の存在から力を借りる、という技。要するに悪魔とかから力を借りる、というものらしい。念威寄りらしいが、その威力は人間の限界を超えたもの故、高位の魔術師は大抵手を出しているとか。


因みに、俺が扱うのは上記の最初の二つのみ。

他者から力を借りている、なんて不安定な魔術は余り好かないし、暴走の可能性の高い魔術なんてとてもとても……。

更に言うと、この二つの差異を簡単に説明すると、int値上昇に対して、魔術の威力が上がるか、性能速度が上がるか、というもの。属性が速度で、念威が威力、という事。

もう一つ付け加えるなら、この分類は俺が読んだ魔導書の一冊に記されていた分類であり、場所や人によっては属性魔術を精霊魔術、精霊魔術を神霊魔術とよんでいたり、そもそも概念魔術が他魔術の派生ではなく立派な一系統だったり、と。つまり認識が統一されていないらしい。

まぁ、精霊魔術はそのうち覚えてみたいとは思いますが。


今回扱うのは、属性に特化した魔術を、念威魔術を持って外部操作し、カガクテキに魔術を混合させてみよう、という試みだ。

といっても、中学生の実験レベルなのだけれども。


水は電気(雷)により、水素Hと酸素Oに分解される。このとき、両者の混合気体はかなり可燃性の高い存在となっているわけで、それを風によって封じているわけだ。


「握」


圧縮して作り出した風の玉。持続時間は短いので、さっさと使用してしまわなければ。

次に扱うのは念威魔術。といっても、此方は属性を持たない分、他に与える影響が少ない。

利便性で言ってしまえば、俺の能力である闇のほうが性能は言いのだけれども、人目があるときには此方で代用するほか無い。

掌握した風の玉。それを、野球のピッチャー宜しく洞窟の入り口に向かって投げ込んだ。


………、3、2、1……


「集いし雷、撃ち抜けっ雷光!!」


下位、属性魔術『雷光』。

電撃の矢を作って放つだけの、紫電のような逐次発動する魔術に比べて、一詠唱に一威力のかなり単純な構成の魔術。

低位だけあって威力もそれ程はないが、しかし起動、射出速度に限ってはその他を圧倒する。


その雷光が、洞窟の奥で、小さな火花を上げた。

その瞬間、轟音が夜空に響き渡った。


外部からの爆撃が駄目なら、内部で爆発させてみてはどうか。

そう考えて、可燃性の気体を、洞窟なんていう密閉空間で爆発させてみたわけだ。

要するに高濃度可燃性の気体を撃ち込んで、それに電撃の火花で着火した、という、百円ライターみたいな仕掛けだ。


数秒待ったのは、可燃性の気体を吸引した相手の肺までしっかりと火を通すため。

呼吸によって水素と酸素を吸引した連中は、その肺の中に溜まった気体が発火して、内側から炎に炙られる……というか、文字通り爆死する。しかも自然現象ではそう上手く発生しないであろうこの現象は、魔術によってしっかりと誘導されているわけで。

うーん、ハーグ陸戦条約にひっかかりそうだけど、まぁ、“戦争”じゃなくて鎮圧“活動”だし。

そもそも此処は異世界だし。


「………ん」


崩れ落ちる洞窟と、炎の立ち上る洞窟の入り口。

その光の中に、僅かに人の姿が見えたような気がした。


「大気の鉄槌」


上空に作り上げた空気の塊を地面に叩きつける。

何かが潜んでいるのだとすれば、大抵はこれで炙り出せる筈なのだが……。


「ぐあっ……っ!! 糞がぁ!!」


瞬間立ち上った高濃度の魔力。

これには覚えがある。最初から感じていた、ここのボスらしき存在。


しかも……うわ。

聞いた噂話通り、本当に黒い鎧を身にまとっている。

といっても俺の全身鎧とは違って、部分部分で肌が露出する軽鎧の類みたいだけれども。


「キサマァアアア!! よくも、よくも俺の作り上げた団をおおおお!!!!!」

「……ふん」


猛りと共に高まる魔力。なるほど、語るだけはあってそれなりの使い手ではあるみたいだ。

まぁ正直、興味も無ければ付き合う心算もない。

適当に練り上げた風の刃×27くらいを、適当な軌道を描かせて盗賊のボスに向けて撃ちはなった。


バシュッ!!


「……ん?」

「―――っ、は、効かんわっ!!」


男に命中した風の刃は、その途端はじけるような音を立てて掻き消えてしまう。

……対抗魔術? それとも何らかの魔術で相殺されたか。

まぁ、どちらにしろ、それなりに魔術を扱えるようではある。


「………………」

「ぐあ――っ」


水の塊をつくりだし、それを加速して打ち出す。

水の固まりは、再び盗賊のボスに襲い掛かるが、その身体を数メートル押し下げるだけで、それ以上のダメージは見られない。


「集う、集う、集う、星の欠片、大地の加護、風の炎、押しつぶせ、星の屑(スターダスト)!!」

「………………」


男の手に集う光。構成要素は火、光、土、風。四属性混合。エネルギーに質量を持たせた中級複合魔術。並の魔術師には真似できない程度には上位の魔術だけれども……。

その魔術は、決してこの身に届く事は無く。その光は、水を浴びた薪のような音を立てて消え去った。

放たれた魔術を完全に無視する。

闇の衣の防御性能に比べれば幾分墜ちるが、保有する抗魔力値だけでも、この程度の魔術では俺に傷を負わせる事など殆ど出来ない。

最低でも、上位魔族や、それに匹敵する存在の扱う魔術でもなければ、魔術を習得した現状の俺に、魔術で傷を負わす事なんて無理だ。


問題は、そんな低位の魔術師に、俺の魔術が防がれた、という事だ。

雑魚、と侮っていたのは認める。多少増長していたのも認める。

けれども、流石に。プライドなんて拘る心算はなかったのだけれども。……なんか悔しかったぞ。


練り上げた雷撃系中級魔術、雷鳴。

複雑軌道を描きながら飛んでいく雷を、盗賊のボスに向かって遠慮なくぶっ放した。


「くっ………がっがががががががががががっががががががががGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGA――――!!!?????」


男が此方の雷に対して咄嗟に何かの魔術を放った。土属性の……確か、土壁。つまりは防護壁を創造する魔術だ。

まぁ、普通に考えてその選択は正しい。けれどもだ。先に水を使用していた事にも一応意味がある。

あらかじめ撒き散らされた水は、土の防御とか関係なく、雷の伝達経路となって盗賊の団長に落雷した。


例えるなら、風呂場でドライヤー感電死って感じか。


ピシャッ、という轟音と、発光する夜闇。

「……ガフッ……………」

「………おーおー、これは流石に死んだろう」


威力ゆえに中級を冠した魔術だ。

みれば、煙をプスプス上げる男はその身体をピクピク痙攣させてはいるが……。まぁ、電気だし。“目”で視ても、魔力……命の反応がほぼ無い。


「周囲に生命反応なし。引き上げるか」

「です」「ガウ」

「…………………………」


ついでにそのまま周囲を見回し、自分達以外の第三者がいない事を確認して。

一匹と一人が頷いて、一人が何かを言いたげにしていたが、何もいわれない限りは無視する事にした。

とりあえず、事はコレにて終了。そろそろ、かえって寝たかった。







「………やはり、アレは違う」


の、だけれども。

リンネルの村直前、不意にレイアさんがそんなことをのたまった。


「なんです?」

「あれだけの力があるのなら、あの男を捕らえる事だって出来たんじゃないのか!?」

「だからそれは無理だと……」

「嘘だっ!」


雛見ざ……少しネタが古い。じゃなくて。


「術の殺傷威力を抑えて、最後の雷撃……アレを低位のものにすれば、あの男を殺さずに捕まえる事も出来た筈だっ!!」

「……」

「なのにしなかった。何故だっ!!」


……、ああ、面倒くさい。

これ、この人。面倒な事に、どうやら晃と同系列の人間らしい。

ようするに、ドのつく善人。――俺の一番苦手なタイプ。


「あれが、敵だったからですよ」

「……は?」

「俺の敵ではありませんでしたが、俺が義理のある人間に敵対していたので。」


俺の言ったことが理解できなかったのだろう。

レイアはポカンとした顔で、こちらを見ていて。


「敵だというだけで、殺したのか」

「殺意を向けられたから、殺意を向け返した。それだけのことです」

「それでは動物ではないかっ!!」

「人間をそれ程高尚な存在だとは思えませんし……なにより、始末しなければもっと傷は広がりますよ」


あれを野放しにすれば、被害を喰うのはリンネルの村だ。

見たところ、リンネルの村は全体的に真面目に産業一筋な所だった。

そんな、努力したところが、不正に利益をむさぼられる。何の因果も無く、命を奪われる。


そんなことをする人間に、情をかけるいわれなんて欠片も感じない。


「だが然しっ!! それでは法は一体何のためにあるッ!!」


けれども。レイアさんのその言葉には、心の其処から信じられた“信念”のようなものが感じられて。

月明かりに照らされたその金色の女性に、不覚にも小さく息を呑んだ。

そして、ならば。意志をぶつけてくる相手には、ちゃんと意志を持って応えたかった。


「法を守らぬ相手に、法に護られる資格なんて無いと思いますよ」


……だから、俺も法には守ってもらえない、かも。


「しかしっ!!」

「どうしても、法を守りたいというなら、剣なんて握らず為政者にでもなるんですね。ああいう連中を取り締まる仕組みを。ああいう連中を生み出さない社会を。壊してから生み出す事は出来ても、壊す事で生まれるものなんて無いんですよ?」


言いながら、その彼女の手に握られる剣に視線を落す。


「法にそって公正な裁判を。その心は大いに結構。でもね、それを守らせたいなら、それを押し通す力を持つべきだ、と思いますよ。国も、人も、……貴女も」


言ってから、言外に「足手まといだ」と言った様な物だと気付いて。

……案の定、レイアさんは何かを堪える様にうつむいてしまった。

なんとも気まずい。晃とか居れば、(精神的な意味で)俺が敵で晃が味方という分り易い構図を作る事も出来るのだけれども。


ベリアさんは……って、随分先を行ってらっしゃる。

ランドとベリアめ、空気を読んだ心算かっ。お願い、戻ってきて!!


「………」

「………」


結局、レイアは黙り込んだままで、その状況のままリンネルの村へと辿り着いて。

ベリアとランドは先に宿に戻ってしまった様だ。

仕方が無いので、とりあえずレイアさんを近くの宿まで送って、其処で分かれることにした。因みに、俺が泊まっている宿とは少し離れた場所の、だ。


「――それじゃ、さよなら」

「………」


だんまり。

でもまぁ、仕方ないか。

信念、主張っていうのは相容れないからこそ、っていう物だし。

気まずいのは苦手なので、そそくさとその場を離れる事に……


「あのっ……」

「ん、?」

「あの……有難う。おかげで、命拾いをした。それだけは言わせてくれ」

「……いえ。人として当然の事をしただけですから」


どの口が言うか、とか内心自分の発言に突っ込みを入れつつ、レイアさんにそう言って踵を返す。

……俺って単純。アレだけ気まずかったのに、礼を一つ言われた程度で、少しだけ心が軽くなったような気がしていた。




    ※※※※    ※※※※※




ふと目を覚まして、其処が村の宿である、という事を思い出した。


「……、そうか。助けられたのだっけ」


眉間を摩りつつ、ベッドから起き上がり軽く身体を伸ばす。

朝の日課では有るが、こうして再び出来るとは。一時期、本当に此処までかと諦めかけたのが、つい昨日の事だとはとても思えなかった。


「……ん? アレは……」


窓の外をふと見れば、遥か彼方を馬車の行列が通り過ぎていくところが見えた。


そしてその列の何処かに、感じた事のある魔力が混じっているような気がして。


「……っ!!」


そんな筈は無いのだろうけど。

不意に鎧が一つ背後を振り返って、私の事を見返してきて。

その真っ黒な鎧は、苦笑のように肩を少しだけ竦め、片手を上げて再び前へと向き直った。

何故だろうか、その鎧こそ、昨晩私を助けてくれたあの理不尽な旅人なのだと、そう確信していた。


……行ってしまった。


「……全く」


これでは、如何やって恩を返せばいいのか。

あの男……イーサンとか言うのに論破されたままで、此方から言葉を返す事だってまだ出来ていないというのにっ!!


「……はぁ」


まぁ、この先にあるのはエネスク帝国しかない。そのうち其方の方向に向かって、探しに行けばいいか。

あんな、色々な意味で非常識の過ぎる連中だ。どうせ色々と足跡を残すだろうし、ソレを辿れば再会できる可能性も皆無ではない。

取り敢えずは、国に帰って……。


……コンコン


「レイアさん? お届け物が届いてるんですが〜」

「届け物?」

「鎧みたいですよぉ〜?」


扉の向こうから聞こえてきたノック。宿屋の若女将の言葉を聞いて、部屋を抜けて階下のロビーへと降り立つ。

見れば、確かに木箱に包まれてた、何かしらの荷物が其処に置かれていた。

宛名は……確かに、私宛。


その箱を開いて、絶句した。

それは、私があの洞窟の中においてきた筈の、私の鎧。

けれども、あの鎧は洞窟の中に……それにあの洞窟は、確かに崩れ落ちていた。それは、確かにこの目で見た。

でも、此処にあるのは確かに私の鎧で……。


無茶苦茶で理不尽。思い浮かぶのはそんな言葉。

昨日の事は、所々夢だったのだろうと思っていた。

私が助かったのは事実としても、だって何処の世の中に無属、六系統、回復まで修めたフリー(・・・)の魔術師が居るのか、と。

それ程の技量があれば、普通にどこかの国が召抱える。宮廷魔導師だって夢じゃない。

それどころか、彼は複数魔術を逐次詠唱しながら、その上で剣まで扱っていた。

あんなのをただの旅人だなんて、絶対に認められないのだけれども。


「……はぁ」


そこで、考えるのを一端止めた。

何よりも情報が不足している。こんな現状で彼が何者だったのか……思えば、本人も必要最低限以上の情報は何も語っていなかった。現状で分る事といえば彼――イーサンが、ある意味圧倒的な存在だ、という事くらい。


「……やめたっ!! とりあえず、国に帰るっ!!」


うじうじ考えるのは、私には向いていない。


「そうよ、ミレイア・E・カノン! 無駄に考えるよりは、できる事からっ!!」


とりあえず、国に帰る。

どうも不穏な噂というか、お父様やリアの様子がおかしい、なんていう噂を聞いて戻ってきたのだけれども。どうも、また何か情勢に変化が生じた、という話を聞いたのだ。


「長女としては、一応帰らないとね」


色々気になることはあるけれど。

それらは全部後回し。

唯一つ、あのイーサンとかいうのは、何時か必ず雌雄を決してやると心に決めて。

それだけ心に決めて、自分にできる事から手をつけていくのだった。

さしあたっては……。


――くぅぅっ……


「…………」


とりあえずは、朝ごはんから。


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