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042 - 急行。

大臣の部屋へと侵入し、そのまま大臣の封じられた姿見に向かって闇を放つ。

突然乱入した俺を見て、部屋の中にいた数人の兵士が騒ぎ出す。

何故こんなところにいるんだろうか? とりあえずその鼻っ面を殴って全員沈黙させる。

……よし。鏡の術式を把握した。

あの王女様に掛けられた呪いに比べれば、この鏡の術式のなんと易い事。


ピシリ、と音がして鏡が砕け散る。

その鏡の額の内側に、何時の間にか現れた大臣が立っていて。


倒れそうになる大臣に、慌てて手を差し伸べる。


「ご無事で?」

「あ、ああ。しかし、君は一体……」

「ソレは追々。とりあえずこれを」


言って、道具屋で売っていた小瓶に虹の雫をつめて渡す。


「これは……虹の雫!?」

「ストックはいくらかあるんで。瘴気汚染が激しいんで、とりあえず被っておいてください。……そろそろ時間的に余裕もなくなってきたことですし、急ぎます」


言いながら大臣を連れて、その部屋を後にする。

最優先で向かうべきは、王の居る上座だ。


「一体何が起こっているんだ…?」

「歩きながら、要点だけ説明しますよ。要するに、魔族側からの侵略ですね。今現在、王都は術式化され、隠蔽された瘴気に包まれています。貴方に化けた魔族も内部に侵入してますし、下手をすればこのまま国が潰れる、なんて事にも成りかねません」

「わ、私が捕らわれている間に……」

「王様も洗脳されているみたいで、今現在、偽者と入れ替わったのは王様だと思われているようです。騎士団もその線で動いているようですし、下手をすれば大会の表彰式でバッサリと……」

「そこまで……」

「末期です」


俺はのんびりとしているが、正直この国の状態は、後一突きすれば奈落に転がり落ちる、それほどに崖っぷちなのだ。


「で、此処から挽回するには少し演出を入れなければならないんで……」


言って、少し説明を入れる。

俺はこういうわざとらしい演出は好みではないのだけれども、けれど同時に演出の重要性も把握している心算だ。


「……少し、過剰ではないか? それに、その計画は舞台上に協力者が居なければ……」

「ソレは大丈夫です。事前にベリ……アベリア・ラブセット・ダリア・エネスクに協力を要請してあるので」

「……君は、エネスク帝国の者なのか?」

「いえ。アベリア姫の友人で、ただの傭兵です」


そこで話はおしまいとばかりに切り上げて。

一気に闇から剣を抜き放つ。


ガキィンッ、と響く金属音。

黒い刃先に、銀色の剣がぶつかっていて。


「な、何事だ!?」

「――成程。道理で」


そこにいたのは、鎧を着込んだ巡回の兵士だった。

胸元には確りと、この国の紋章が刻まれた。間違いなく、本物の鎧だった。


「な、貴様ら、どういうつもりだっ!!」

「大臣。無駄ですよ。多分、中身が入れ替わってますよ、こいつ等」

「なに!?」


バッサリ。剣を一閃する。

剣も鎧も問答無用で斬り捨てた途端、崩れ落ちた鎧の中から靄のような魔物があふれ出して。


剣を一閃。が、実体の無い魔物には物理攻撃は効果が無いらしい。

仕方無しに闇で一閃。霧の魔物は即座に消滅して。


「い、今のは……」

「出来れば内密に。俺の力は光と違って、人に余り好かれないので」

「………っ、いや、分った。今のは心の内に秘めておこう」

「――有難う御座います」


言って、そのまま更に歩みを進める。

今の魔物が如何いったものかは分らないが、最悪のパターンとして今の情報……大臣が出歩いている、という情報が伝わってしまった可能性も否めない。


「少し、急ぎますよ」

「うむ」


大臣の方も、事の重要性を把握してか、これといった疑問をはさむでもなく、即座に頷いて見せた。成程この人が経済を担って発展したというのも頷ける。聡明な人物だ。






暫く歩くと、漸くまともな巡回の兵士を見つけることが出来て。

良し良し。良い感じだ。


「大臣殿ですか。……そちらの方は?」

「私の客人だ。それより、何人か人員を回してもらえないか?」

「今私の手が空いているので……どうかしたのですか?」


大臣達の会話が進む。大臣の方も、アドリブで良い感じに話を進めてくれている。俺が態々口出しをしなくても、やるべきことは分っているのだろう。楽だ。


さて、大臣が兵士を集める理由というのは単純で。要するに、俺が舞台に上がっている間、舞台裏の大臣に攻撃されないよう護衛を集めているわけだ。


俺と大臣が同時に舞台に上がるよりも、後から大臣を登場させた方が演出的に効果が高い。

が、その間無防備になる大臣の防備を、どうやって固めるか、という所で、城の兵士に力を借りよう、という事に成ったのだ。

そんな感じで準備を進めて。

漸く、上座……バルコニー手前に辿り付いた時、不意に頭に誰かが喋りかけてきて。


(――急げ、主殿っ!!)


縁を用いた念話――!

焦ったようなリネアの声。彼女が焦っている以上、ソレは本当に急事なのだから。

その声を聞いて、俺は即座に、装備を鎧に切り替え、舞台の上へと飛び出していったのだった。




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