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037 - ギルドVS

次の目的地は、多分だが大臣の部屋になる。

大臣の部屋へ行くには……一度地下から出て、城の中を通って反対側まで回らなければならない。


「……無理だろうな」


けれども。常識的に考えて、城を一般開放しているこの時期、幾ら闇を使ったところで、場内を発見されずに進むと言うのには無理があった。

で、あればだ。ルートを変更して、闘技場経由で行けば良いのではないだろうか。


決めて、一気に駆け出す。

地下牢の奥から、某騎士殿が背後から何か言っていた。灯が如何とか。

悲鳴の様だったが、きっぱりと無視する。俺は慈悲深くないのだ。






『さー、それでは続いて、ギルドVS第2幕を開催したいと思います!!』


闘技場に到着した途端、そんな声が響き渡った。

コレは間違いなく、司会の拡声魔術だろうが……ギルドVS?


そういえばそんなのもあったか。

俺が出場した序盤のは個人戦。ソレに対して、ギルドで行われる戦闘がギルドVS。そのまんまだな。

ギルドにつき最低4人から最高7人の出場が可能。

個人戦と違い、其々のメンバーの役割分担が重要となる、より戦略的思想が求められる戦いだとか。


移動しながら、フィールドへと視線を落す。

俺の予想が正しいなら、事が起こるのは最後……決勝戦か、表彰式の場だと思う。

折角だ。今は少し余裕を見て行動しておこうか。


『二回戦、赤コーナーより出ますのは、ギルド、山の鷹ァァァ!!!』

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!


言って、赤く塗装された通路を歩み出てくる一団。

……うわ、山賊みたいな大男マッチョの大群が6人。

その真ん中に美少女が一人と……何だあれは。新手のサーカスか何かか?


『ギルド山の鷹は、前大会で惜しくも準優勝を果たした、猛者ギルドです。驚くべきはその魅せる技の数々。その豪腕から繰り出される細技には驚嘆の一言しか無いーーーッ!!!』


なるほど。それで妙に空気が温まっているのか。

前回の大会で優秀な成績を見せた。今回もまた素晴らしい技を見せてくれるという、そんな期待か。


『続きまして青コーナー、只今冒険者ギルドの間で、着々と実力を伸す期待のギルドとして有名な奴ら、砂漠の狼ぃぃぃぃぃぃ!!!!!!』

ワアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!


何処かで聞いた事のあるギルド名だ。

そう思って視線を動かして。

……うわぁ。


剣士と戦士と騎士、僧侶にアルケミスト、さらには魔術師と。

多少、何か混ざっているような気がしないでもないが、間違いなく、馬車でご一緒した冒険者の面々だった。……いや、確かにあれで面子は全員だなんて一言も言ってなかったが。


しかし……あの魔術師と剣士。マルベラとディスタ……だよな?

あのウェストリーから出国する為の、最初の馬車で一緒だった連中だけど、あの四人と同じギルドだなんていうのはまるで知らなかった。これも縁か。


『それではギルド山の鷹VS砂漠の狼、レディィィィィ…………ファイッ!!!!』


司会の合図で戦場が動き出す。

まず注目したのは赤コーナー。あのマッチョ軍団+美女が繰り出す繊細な技、と言うのに興味を引かれて。


「……って、嘘っ!?」


マッチョ軍団は、どうみても肉弾戦が中心だろうと言う程にマッチョだった。

それこそ、暇な時間が有ればスクワットなり腹筋なりしてそうな外見だ。

……が、ソレを目にして正気を疑う。


フィールドのマッチョたちの陣地が、物凄い速度でカラフルに彩られていく。

何が起こったのかと慌てて、そういえばこのサングラスには魔力を色彩化して表示させる機能があったのだと思い出す。

残留魔力の検知用……だったか。普通に行使されている魔力もはっきりと見えるのな。

見えすぎる、というのも難物だな。とりあえずサングラスを外して、改めて肉眼で試合を観察する。


眼鏡ほどではないが、俺ならば、肉眼でもある程度は魔力を視認する事ができる。

感じる魔力は凄まじい。所謂マナを収集しているのだろうが、その速度が並ではなかった。

マナを練成し終えたその一団は、即座に自分達に魔術を掛けた。身体能力強化の魔術だろう。何度か見たことがあるが、持続力共に使い勝手の良い術だ。


ソレを終えた連中は、即座に散開し、バラバラになって各方面へと散らばっていった。

観客席の位置だからこそわかるのだが、ギルドVSのフィールドは、魔術によって様々な地形に変化させられている。現在のマップは丘陵地帯。微妙に見通しが悪く、奇襲なんかを警戒しなければならない地形だ。


さて、視線を青コーナーへと戻す。

ギルド砂漠の狼の面々は、相手側のマナを感知したか、逆に集団でしっかりとした陣形を組んでいた。


瞬間、砂漠の狼の布陣に魔力が集結し始める。此方も、先程のマッチョに比べて比肩し得るほどの魔力収集だ。

続いて響く、ピーンという音。どうも、一般の観客には聞こえていないようだが……では今のは、何かしら魔術的な音だったのだろう。


砂漠の狼の面々は次いで移動を開始する。

丘陵の窪みを通り、徐々にフィールドの端の方へ。


「………ははぁ」


多分だが、今さっきのアレは、アクティブソナーのような魔術だったのではないだろうか。

アクティブソナー……つまり、自ら音を発し、その反響を察知する事で、前方の障害を察知する技術。……だったと思う。

蝙蝠とかが天然で持っているやつで、潜水艦とかにも使われているらしい。

俺の感覚器官はアレだが、そういうのに敏感に成っているのだろう。


で、そのソナーで相手の居所を探知した連中は、山の鷹の連中が散開している事を知り、フィールドの端の方向へと移動を開始したのだろう。

幾ら散開していようと、片面が端であるなら、少なくとも180度の方向から攻撃される事は無い。壁を背にする、というような意味合いだろう。

魔術を使ったのはマルベラ、戦術思考はミミル……といったところか。


然し。あのマッチョの突進に、集団で固まったままで大丈夫なのだろうか、とは思うが。


今度は山の鷹に視線を移す。

散開しているために此処からでは全てを把握する事はできないが、どうも連中は大分広域にわたって散開しているらしい。

その割、スタンドから見るとよく統制の取れた動きをしている。やはり何かしら魔術でのコミュニケーション手段を持っているのだろうか。念話とか。


山の鷹も、砂漠の狼が探知系魔術を使ったと把握したのか。魔術の波から逆に連中の位置を計算してか、先程魔術が行使された場所に向かって、男が一人探査に行った。

斥候役がその場を確認し、次いで周囲にマッチョと美女が寄る。その周囲を警戒していて……そのうちの一人と、砂漠の狼がついに戦闘を開始した。


前衛の三人がマッチョに斬り付ける。が、マッチョは元来の筋肉の鎧に加え、魔術的な加護もあってか、その剣を弾き飛ばしてしまう。


前衛が時間稼ぎをしている間に、後衛二人が其々の魔術をつむいだ。

キアが精霊魔術で大量の水を召喚し、それをマッチョに向けて放つ。マルベラはその水に向かって氷結系の魔術を放つ事で、マッチョの動きを何とか封じて。

瞬間、閃光がはじけた。


見覚えがある。アレは確か、ミミルが空飛ぶ魔物を一気に落した閃光弾だ。

破裂時に激しい光と喧しい音を撒き散らす、所謂スタングレネードのような物だが……成程。幾ら肉体を外部的に強化使用とも、根っこの感覚干渉には無意味……と。


スタンで気絶してしまったマッチョ。

その重い身体を、アッシュがズリズリと引きずり、そのままフィールドの外へと放り投げてしまった。山の鷹、一人脱落だ。


……面白い戦いをすると思う。が、問題はこの次だ。

マッチョ+美女連中は、連中間で情報を共有していた筈だ。とすれば、この閃光弾の情報も、断片的ではあろうが持ち得ている筈。


対して砂漠の狼は、直接攻撃面がいま少し攻撃力不足に感じる。

バランス的に考えれば丁度良いのだろうが、相手の突撃力に比べると、矢張り今一つなのだ。砂漠の狼が頑張るべきなのか、さすが山の鷹、前回の成績優秀ギルドとほめるべきか。


と、そんな風に試合を見ながら移動しているうちに、気付けば目的の扉へと辿り着いていた。

とりあえず、俺の目的は大臣の部屋の探索だ。

漸くたどり着いた闘技場の端。多少後ろ髪を引かれる思いはあったものの、場所を把握すべく、急ぎ足でその場を後にしたのだった。



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