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031 - 参戦。

三人そろって、レンガの敷かれた街中を歩く。

まぁ、傍から見れば二人で歩いているように見えなくも無いが。


「リネアさん、クレープ食べましょうか!」

「うむ。……我はあの柑橘類のが好みなのじゃが」

「あ、良いですね。それじゃ私はキャラメルのを……ちょっと交換してくれます?」

「うむ。此方から頼みたいぐらいじゃ」


何だろう、この二人。何時の間にこんなに仲良くなってたんだろうか。

目の前を歩く二人を見つめて、そんな感想を思ったり。


町へと繰り出していった二人。その喫茶店のような店で軽い食事を終えた俺は、適当な路地に入り、その中で装備を手早く換装する。

真っ黒な鎧から、茶色っぽいコートに着替え、サングラスを掛ける。

これで、いかにも旅人風な俺の出来上がり。


そうして街中の探索に出かけた俺は、何時の間にか二人と合流していて。

いや、何時の間にか、と言うのは正確ではない。


遡る事三十分ほど前。

不意に街中に出来た人ごみに興味を引かれて、そちらへと歩いていった。

商店の並ぶ通りだ。何か面白いものでもあるのかと期待したのだが……。


「てめぇ、ふざけるんじゃねーぞ!!」

「巫山戯ているのはあなたでしょう。商売代? そんなもの、この土地の管理人でもない貴方に、何故払わなくてはいけないのですか」

「ナマ言ってんじゃねーぞゴルァ!!」

「やれやれ。この下郎、そもそも我等と言葉を交わすほどの品性を有しておらぬようじゃのう。こやつの相手をしても仕方あるまい。ん? 妾が何を言うておるかわかっておらぬ様じゃのう。ならば言葉を砕いてやろうか? 御主の様な馬鹿なぞ、相手するだけ時間の無駄じゃ、と妾は我が友に告げておるのじゃ」


ベリアさん、リネアさん、貴方ら何してるんですか。

見れば対立しているのは、ベリアとリネアの少女二人対いかつい顔のオッサン方。

聞けば、どうもショバ代を求めに来て暴れていた彼等と、品物を見ていた彼女達が意見対立したのだろう。

普通の人間なら逃げる。でも、まぁ、ベリアって勇ましいしなぁ。外見に似合わず。

で、そんなベリアのノリにリネアも乗って……嗚呼、容易に想像できる。


で、見ている間に少女と厳ついオッサンたちは戦闘に入って……そのまま叩き潰されるオッサンたち。

そりゃそうだろう。姫様と言っても、最も個々の戦闘能力の高い国の姫様だ。

顔だけで商売しているヤの字の人ではとても相手にはならない。


ワーと上がる歓声。逃げるように走り去るヤの字……っていうか、チンピラの人々。放置しておくと、後々報復活動とか来そうだなぁ。ああいう連中って陰湿だし。

俺はその後を追って、手早くヤの字の人たちの事務所を壊滅させて、再び人混みの中へ。ちょっと酸素濃度を数倍にして中毒にした後、マッチ程度の火を起こしただけです。ええ、それだけです。後のことは知らん。


「あ、ヤ……イーサンさん!!」

「主殿か。如何した」

「ん、ちょっとお前らが見えたんでね」


言いつつ、こいつ等を放置しておくと色々と危ないと判断して、結局三人で街の中を見て回る事に。

そうして、今へと至るわけだ。


「みかんも美味しいですね」

「カラメルも、中々美味いのう」


言いつつ、二人はぱくぱくとクレープやらお菓子やらを腹に収めていく。

如何でも良いのだけれども、リネアのあのデフォルメされた身体の何処に、あの量の食料が入っているのだろう。あいつ、朝も昼も食ってたんだけど。


まぁ、それは良いとして。


「然し、屋台多いな。やっぱり大会の影響か?」

「みたいですね。やっぱり経済効果とかあるんでしょうかねぇ」

「美味い物を喰えるのじゃ。大会万々歳と言ったところじゃの」


ねー、と頷きあうベリアとリネア。

やっぱり仲良くなってる二人。まぁ、仲良き事は良い事かな。

……何故だろう。偶に二人から獲物を狙う猛禽類みたいな視線を感じるのだけど。


「に、しても」


視線を街中へと向ける。

人が多ければトラブルも増える。さっきも揉めていたが、なんだかまたトラブル発生みたいだ。しかも今度は冒険者同士じゃないだろうか。

ああいうのには出来るだけ係わり合いにならないほうが良い。

まして、被害者が居るようなトラブルではなく、どっちも悪いような……例えばオッサン同士の殴り合いとか……なんて、絶対関わりあいたくない。


「その大会ってのは、そんなにいいものなのか?」

「クリムゾン金貨一枚が優勝報酬ですよ」

「クリムゾン金貨?」


なんだ、その舌の長い恐竜モドキの国に散らばってそうな貨幣は。


「うむ。クリムゾン金貨というのはな、その名の通り真紅の貨幣で、貨幣としての価値もあり、同時に素材としての価値も高いという、万国共通で高く取り扱われる代物じゃ」

「ふーん」


赤い金属ねぇ。銅でも混ざってるんだろうか。


「折角だし、出てみませんか?」

「……大会?」

「主殿ならば簡単に優勝出来そうな気もするのじゃがの」


言われて、二人はきらきらした目で此方を見上げてくる。

いや、言われても俺は目立つ事は出来るだけ避けなければならないんだけれども。


「あー、うん。いや、でも……」


キラキラキラキラキラキラキラキラ………

だからそんな眼で見られても……。


そもそも、此処で目立っては、折角ウェストリーで姿をくらましたのが無駄になってしまう。なにせ、ウェストリーの連中もこちらに来るみたいだし………って。


「……なぁ、ベリア。大会に参加するって事は、城の中に入れたりするのか?」

「え? はい、流石に奥は無理みたいですけど、下の区画は出入りできる筈ですよ?」


この国、暫く感じている地味に隠蔽された気配。

魔の気配は、やっぱり国の中心……王城から漂ってきている。

晃も来る事だし、これはやっぱり事前に手を打っておくべきか。


「……んじゃ、参加してみようかな」


まぁ、なんでもなければ適当なところで負ければ良いだけの話しだし、鎧を着ておけば早々正体がばれる事もあるまい。


面倒臭そうだなぁ、なんて肩をすくめて。

背後で「やったー」なんて喜んでいる二人を尻目に、面倒だったりこそばゆかったりするいろいろな感情を籠めて、小さくため息をついたのだった。



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