028 - 寂しい日もある。
「……さて」
闇で掃討したワーム達から、闇の触手でソルを回収し、闇へとそのまま仕舞う。
正直、物凄く流れ作業だ。
冒険者ギルドで掃討依頼を大量に受注し、それを一気にこなす。
空中の敵は少し手間取るが、基本的に全て同じ。闇で突き刺して、潰してソルを回収する。
朝にベリアを城に届けてから、ずっとこんな事をして。
今現在は太陽から見て昼過ぎ。でも、溜まったソルの数は山一つ分くらいはある。
昼からずーっとそればかり。そのおかげで、闇の単純操作は勿論、複数同時、物理攻撃、精神面限定攻撃、対魔限定攻撃、近距離、遠距離その殆どを完全に扱えるようになっていた。ゲームで例えるなら、雑魚敵を掃討して闇のスキルランクがカンストしてしまった感じ。
剣術とか、全然修練してないんだけどなぁ……。
「…………はぁ」
なんだろうか。ベリアと別れて、寂しいんだろうか、俺。
ボーっとしている間に、規定数以上の魔物を狩ってる。
「いかんいかん。当分の生活費は稼いだし、もう十分だ」
呟いて、闇を抑える。全く。俺も修行が足りない。
森の入り口で待たせていたランドに乗って、再びカノンへ。
真っ先にギルドへ行き、ランドを預けると同時に受注書を渡す。依頼者が国の場合、規定数を狩る依頼なんかは、受注書に簡単なカウント魔術が掛けられているらしく、取り出したそれには既に任務完了のサインが入っていて。
「はい、確かに。それでは報酬は……銀貨二十三枚になります。このままでもよろしかったでしょうか?」
頷いて、それを懐へ。……そのまま闇の中へ沈める。
ギルドカードに任務達成ポイントが加算され、ランクがCに上がったりもしたが……まぁ、意味はあるのか無いのか。
近くのソル換金所へ行き、ソルを一括換金出来ないか相談してみる。
流石に山のようなソルを一気に換金するのは無理らしく、何箇所かで分散して換金する事に。
……まぁ、「此処が潰れる!」なんて言われちゃ。
で、国中にあるソル換金所を巡って、ソルを貨幣へと換金していく。
途中、何処かで俺の噂を聞いたか、何度かスリに懐を探られた。まぁ、現金は闇の中に仕舞っていたし、逆に財布を全部スッてやった。その分は全部駐在に届けた。OK。
そうして。全部のソルを換金し終えた頃には日が沈み、ソルの総額は金貨十枚分近くへと膨れ上がっていた。
といっても。正直金貨なんて価値が高すぎて使えないので、殆どを銀貨と銅貨で仕舞っておいた。
宿を取って、部屋に入って。
鎧を水と布で掃除し、鎧自体の持つ魔力を調整したり、簡単に身体を拭いたり。
何と無く無意識に体を動かし、その全てを淡々とこなしていく。
「………………やばいな」
なんだろう。物凄くつまらない。
……そうか、やっぱり寂しいみたいだな。
なんだかんだで、俺が一人で居たのはウェストリーから数日間……旅立ってすぐに、ベリアと出会ったおかげで、殆ど俺は独りで居なかった。
ランド……は、今現在ギルドの預かり所だし。
「……主殿」
「……ん? あぁ、リネア。お前がいたんだよな」
「忘れておったか。うつけめ」
右腕から、デフォルメされた小さなリネアが飛び出して。
俺の肩の上へ、ちょこんと着地して見せた。
「寂しいのか、主殿」
「んー、みたいだな。あんまり自覚は無いんだけど」
「……そうか」
言うとリネアは俺の肩の上にちょこんと腰掛けて。
「ならば主殿よ。少し気分転換に町へ出てみては如何かの」
「町に?」
「うむ。この国カノンは、何かと商業が発展していると聞く。ならば、主殿の興味を引く何かがあるやも知れぬ。気晴らしには、丁度良いのではないかの」
言われて、考えてみる。
まぁ、確かに。買い物は……それほど好きというわけでもないが、異世界の品物を眺めて散歩するというのは、確かに気晴らしにはよさそうだ。
「それじゃ……そうだな。折角だし、行ってみるか」
「うむ。妾もお供するゆえ、案ずるでないぞ、主殿」
ポンポン、と肩筋を小さな手で叩かれる。
そんなリネアに、思わずクスリと微笑んで。
……ああ、彼女は俺を気遣ってくれているんだろう。それがわかるから、嬉しくて、思わず微笑んでしまっていた。
掃除していた鎧を仕舞って、代わりに古着屋で買った街服を装備。準備は一瞬で整う。
「それでは、出発じゃ!!」
そんなリネアの掛け声に従って。
俺達は、夜のカノンへと脚を進めた。