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025 - カノンまで大体あと五日。

「それじゃ、この四人さんが今回の依頼を受注してくれた方々、という事で宜しいですか?」

「ああ。俺達四人で間違いない。ほら、受注書」


頷き、受注書を差し出す四人をみて、こちらも頷きを返す。

受注書の確認もしたし、意思の確認もした。


「それでは、出発しましょうか」


言いつつ馬車に乗り込む。

馬車自体は中古で買い付けたオンボロだ。

かなり安く、乗車人数は五人。御者台含めて六人だ。

馬車を引く馬は、本来二頭は要る筈なのだが、ランド一匹でも行けるらしく―ランドが行けると頷いた―ならばランドに任せてしまおうという事になった。

流石ドラゴン。頼りになるね。


「それじゃ、折角だし自己紹介でもしようか」


御者台でのんびりと空を見ていると、背後からそんな話し声が聞こえてきて。

なんとも和やかな。


「俺、戦士のアッシュ。宜しくな!!」

「私精霊神官のキア。宜しくね〜」


なんともお気楽……ハイテンションな声が背後から響いてきた。

この戦士と神官の二人、元々パーティーを組んでいるらしく、長くコンビで活動しているんだとか。


「ほらヘイス、次お前の番」

「……ヘイスだ」


短く、まさに名前だけ名乗る鎧の騎士さん。

因みに、戦士と騎士の明確な違い、っていうのは無いらしい。

一応誰かに仕えていたりするのが騎士、という風に区別されているらしいが。


「あたしゃミミル。アルケミストさ」


言う、モノクルを掛けた妖艶な女性。

なんとも変な組み合わせの一団だった。


「あ、私はベリアです。で、こっちが……」

「イーサンです。よろしく」


背中に突っつく感触を感じて、自己紹介をする。

まぁ何というか。二人とも偽名だったり愛称なのはご愛嬌だ。


「俺等、“砂漠の狼”ってギルドの仲間でさ、カノンの大会に参加しに行く途中なわけ」

「この任務もカノン行きだし、都合が良かったんだよ〜」


一応挨拶は済ませた。

後の会話はベリアに任せて、再び馬車正面へと向き直る。

正直、馬車の運転はランドに任せておけば十分なのだが、正直俺は人と会話する事がそれ程得意ではない。というか、喋っているだけで疲れてくるほうだ。


「へぇ、じゃぁベリアちゃんは弓を使うのかい」

「はい。独学で、ちゃんと修練したわけではないんですけど、魔術と組み合わせた特殊弓術を少し」

「それは珍しい。私も少々の魔術を齧り、剣と組み合わせて戦うが、しかし弓に魔術を合わせたというのは滅多に聞かないな」

「へー、凄いんだね〜ベリアちゃん〜」


背後から聞こえる笑い声。

どうやら、ベリアは他の面々と仲良くなれたようだ。


「……ガル?」

「ん? ああ、いや。俺相手だとどうしても会話が少なくなっちゃうからな」

「ガルルルル」

「苦手なんだよ、会話」


悪口罵詈雑言の類なら瞬時に浮かぶのだが。

何気ない日常会話、と言うのは何故か苦手なのだ。……根が悪質なのだろうか。


「ガルルル〜……」

「ま、その分お前と会話しておくさ」


言いつつ肩をすくめる。

気使いするランドに苦笑しつつ、のんびりと空を眺めるのだった。






しかし、と思う。

この世界、想像以上に面倒くさい。

いや、俺達は身体能力の上昇やら、特殊能力の開花なんてサービス付きだし、他の……この世界のネイティブに比べれば大分ましなのだろう。


けれども、だ。


「風の精霊よ、我等に加護を!!」

「おおおおおっ!!」

「はあああああっ!!!!!」

「えー……爆薬、は此処じゃ不味いか。酸……も、駄目かな? んじゃ、閃光薬で」


突如、錬金術師のミミルが投げた薬品が中空で発光した。

その光をまともに目にした空の魔物が隊列を乱し、一気に高度を落として。

其処を、アッシュとヘイスが次々と倒していく。


この世界、中々に難易度……というか、魔物が強い。

ナメて掛かると確実に……それこそ十把一絡の魔物にやられることだってありえる。

力押しで勝てなくも無いが、正しい対処方法を作っておく必要がありそうなのだ。


その点、この四人は中々に強い。

前衛は攻撃と防御のスイッチをしっかりこなしているし、精霊魔術の前衛補助、錬金術による敵陣撹乱は見事なものだ。


「アッシュとヘイス、一旦下がりなさい!」


ミミルの指示で二人は一気に馬車へと引き下がる。

その行動には何の疑問を感じた様子も無く、本当に仲間を信頼しているのだろう。


「キア。空を歩むもの(ファラウェイ)を」


言って、小さな木の実の筒のようなものを掲げる。

そこに精霊神官のキアが、何らかの風の魔術を掛け、ソレを確認したミミルはその筒を思い切り投げつけた。



ドオオオオオオオン!!!!!


常識外の速度で投げ飛ばされたその筒は、はるか遠く、大地すれすれを飛行していた魔物の前面に着弾し、その場で大爆発を起こした。

逃げる二人を追って一列になっていた魔物の群れは、見事に爆発に突っ込み、一気にその大半を削り取られていた。


「わぉ、凄」


それでも生き残った数匹の魔物に、今度はアッシュとヘイスが転進。一気に切りかかる。

それを危機と感じたか、魔物は一気に翼をはためかせ、空へ逃げようとして……。


「精霊よ、風の刃を我等が敵へ!!」


ドシュッ、ドシュッ!! という音が響き、キアの翳した手から透明の刃が射出された。

よくよく見れば大気が歪んでいる、その程度にしか目視できない刃は、次々と中空を飛ぶ魔物たちを両断していった。


気付けば魔物は一掃されて。

なんともまぁ、見事な連携だこと。


「はっはっは!! 良い運動になったぜ!!」

「精霊さん、ありがと〜」

「…………………」

「さてと、因みにこの戦闘で報酬が少し上乗せされたりとかはしませんか?」


なんとも面白い連中で。

苦笑しながら報酬を少し足す事を約束しつつ、戦闘で遅れてしまった時間を取り戻すべく、馬車をさっさと発進さたのだった。



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