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021 - 結晶

ゴブリンを退治し終えた俺達は、その遺骸から小さな結晶を回収して、再び町の中へと戻っていった。


結晶……ソル、と言うらしいコレは、魔物の体内で生成される特殊な鉱石なのだという。

この鉱石はエネルギーや鉱物と、様々な資源として活用できる万能素材なのだとか。


「純度によって価格は変動しますよ。俗に、強大な魔力を持っている魔物は、比例して純度の高いソルを持っているといわれています」

「へぇ、RPGみたいだな」

「あーるぴーじー?」

「なんでもない。でも、それじゃやっぱり魔力と何か関係があるのか?」

「いえ、その辺りの証明は今だ成されていないんです」


まぁ、今のところ重要なのは、そのソルが資産になると言う事だけだ。


この、魔物の体内で生成される結晶物は、ほぼ全ての国の換金屋で貨幣と交換してくれるのだそうだ。俺は“魔物退治”という依頼を受けるのは初めてのことだし、まぁその辺りの事は未だに未経験だったりする。


「それじゃ、ソルの換金に行きましょうか」


言って、ベリアに腕を引かれてソルの換金所へ行く。何というか雰囲気の悪そうな店だ。これはベリアに少し待っていて貰って、俺一人で言ったほうが良いだろう。


「ベリア。俺が行って換金してくるから、その間に何か果物でも買っておいで」

「え、でもお金……」

「小銭くらいならまだ幾らかある。それより、知らない人について行っちゃ駄目だぞ?」


……いやまぁ、知らない人って言うなら俺も駄目なんだろうが。

とりあえず、ベリアは近くの屋台を見に行ってしまった。この辺りの表通りなら、まだ治安も大丈夫だろう。


ベリアの背を見送って、俺も換金所へ入る。

ボロッちい屋根の、薄汚れた扉を開いて。内装もやっぱりボロッちかった。

何気に強面の面々が多くいたが、幸い俺(というかその装備)を見ると、大抵は向こうから視線をそらしてくれた。


「身分証明書」

「?」

「……ギルドカードで良いよ」


何を出したものかと迷っていると、受付のむっつりした老人がそんな助けを入れてくれる。

言われたとおりギルドカードを取り出し、ソレを見せてソルを換金してもらう。

ゴブリンから押収したソルは、結構な金額に成ったようで。案外重くなった袋を懐の闇へしまっておく。


「へぇ、まだランクが低いのによく稼いだね」

「心強い仲間もいるので」


言って、一つ会釈して換金所を後にする。

……何か、後ろからつけてくる気配が一つ二つ……三つ。

嗚呼嫌だ嫌だ。何処の世界に行っても、こういう人の努力を掠め取ろうとする連中は無くならないのだろうか。


なら俺が亡くしてしまおうかとも思うのだが、それだと後々のしこりになりかねない。

物騒な考えを収めて、路地裏の“闇”に紛れて一気にその場を離れた。






「ベリア」

「あれ? ヤマ……イーサンさん? 何時の間に。もう換金は終わったんですか?」

「ああ。お前は何を……フルーツか」


聞こうとして、視線を少し移して聞くまでも無いと悟った。

ベリアの視線は、俺が話しかけた後も未だに二つの果物に搾られていた。

オレンジ色のマンゴーっぽいのと、りんごのような果物の二つだ。


「………二つとも買って良いよ」

「え、で、でも……」


言うと、ベリアは戸惑ったように言葉を切る。

この子は。お姫様の癖に、なんでそんな所ばっかり細かいんだろう。

年収一千万の無職の癖に。


「1つは俺でもう1つはベリアの。半分ずつなら良いだろう?」


言って、ベリアに反論される前にベリアの視線の先にあった果物を一つずつ買う。


「あ、って、言う間もなく……」

「……うん、美味い。ほれ」


言って、少し齧った林檎モドキをベリアに渡してやる。

少し困ったような顔をしたベリアは、しかし俺がやったように皮ごとがぶりと齧り付いた。

シャクシャクと音を立てて林檎モドキ……林檎でいいや……を齧るベリア。幸せそうな顔を見ていると、なんだか癒される。基本的に小動物を観賞するような気分だ。

次いで、このマンゴーっぽいの。旅具として買っておいた調理用ナイフを使い、周りの皮の部分を適当に向いて、実の部分を少し齧る。

うん、中々にいける。


「ほんじゃこっちも」

「え、あの、私まだ……」

「たかが果物二つくらい大丈夫だって」


まだ少し食べ残っている林檎を持つ手に、更にマンゴーを押し付ける。

やっぱり少し困ったようなベリアだったが、俺が少し目で合図すると、その小さな口でマンゴーに齧り付いた。


「美味しい?」

「はい!」


ならばよかった。

まぁ、この後は色々やるつもりだし、ベリアには今のウチに休憩しておいて欲しい。

なにせ、ベリアの食事風景は物凄く絵になる。まるで小動物の食事風景なその光景は、俺のリラックスにも物凄く貢献している。


次の一手。ソレを考えると、色々面倒くさいのだが。

……まぁ、もう少しコレを見て癒されておこう。うん。



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