002 - 召還されて。
それはトンネルだ。
現と虚/表と裏/空と大地/光と影/セカイとセカイを繋げる。
流れる闇を見つめて、何故か襲われる懐かしさ。
見たことなんて無いのに、見覚えを感じる違和感。
履き違えこそ正しいと訴える直感の誤差。
違和感に次ぐ違和感が訴える何か。
最後の一瞬、何かが見えた。
「うわっ!?」
声を上げて着地する。
少し上空から振り落とされた俺は、そのまま地面へと着地して。
「のわっ!?」
同じく着地しようとした晃は、そのまま地面に尻から着地してしまった。
痛そうに尻をさする晃を尻目に、……といっても立ち位置的には晃の方が前なのだが……此方は此方で周囲を確認して。
―――物凄く泣きたくなった。
四方を囲む人、人、人。
その全てが、……薄暗闇の中ではあるが……日本人離れした容姿を持っていて。
しかも、全員が全員ローブのような服だったり、矢鱈派手な衣装に身を包んでいたり。
要するに、現代離れした衣装に身を包んでいて。
何かざわついている様ではあったが、その視線は間違いなく俺たちに集中していて。
なんぞこれ―――!!
「あたた……此処何処だ?」
「ようこそ勇者様。私は巫女、アリア・ウェストリーです」
あー、OK把握。
……いやいやいやいやいや、把握しちゃ駄目でしょうが俺!!
「小崎 大和です。」
「俺は二階堂 晃だ」
周囲を囲う一団。その中から一人、白いローブを見に纏った、年の頃17……つまり、俺達と同じくらいの年頃の少女が進み出て、そんな事を言ってきた。
「?? で、勇者? って如何いう事だ?」
嗚呼、何て暢気なのか。
晃は立ち上がり、その巫女さんの前へと歩み寄って。
「…………ポッ」
その晃の顔を正面から見た巫女さんは、その頬を赤く火照らせた。
なんて奴だ。いきなりフラグ立てやがった。やっぱり美形は絶滅すれば良いと思う。
しかし、伊達に巫女なんて名乗っているわけではないのだろう。
俺から見れば驚異的なスピードで我を取り戻した巫女さんは、そのままハイと頷いて。
「わが国は近年魔物の脅威にさらされており……」
以下略。
其処から続くのは、なんともテンプレートな異世界召還勇者な感じなので割愛する。
いわく、異世界から勇者を召還して、魔王を倒してくれ、とか。
「質問があるのですが」
「何なりと」
一通り語り終えた巫女さんに、声をかける。
「一つ。此処には俺と晃の二人が居るが、そのどちらが勇者なんだ?」
「その……それは私にも分らなくて……勇者が二人同時に召還される、なんていうことは滅多になくて……」
オーケー把握。間違いなく俺は巻き込まれた。
「じゃ、次に。俺達の世界にはその魔物云々とかいうのは存在しなかったんですが、そんな俺達に一体どうやって魔物を退治しろと?」
「はい。異世界から来られた方々は、何かしらの異能を発現させたり、また身体能力の上昇、大きな魔力を持ったりするといわれています」
これもテンプレ。
まぁ、此処まではいい。
「最後に。俺達はもとの世界に帰れるのか?」
「それは……………」
はぁ、とため息を吐く。
いやいや、なんとなく予感はしてたんだけどね。
言い辛そうにする巫女さんにうなずきを返して、俺は一歩背後へと下がる。
「いきなりこんな状況で……よくそんな色々と質問が浮かぶな?」
少し呆れたような表情で言う晃。
……いやいやいや、こんな状況だからこそ冷静に情報を集める必要があるというか、一体誰のためにそんな情報を集めたと思っているのか。
「詳しい話は後ほどするとして、お二方共にお疲れでしょう。お部屋を用意しますので、どうか今日のところはそちらでお休みください」
巫女さんが言うと、即座に何人かの鎧を着た……兵士? が、俺達の周りに集まってくる。
何かVIPの護送というよりは捕まった犯罪者みたいな気分だったが。
とりあえず、俺達はその薄暗い部屋を出て。
……成程、此処は祭壇だったのか、と。
振り返ってその部屋の概要を把握するのだった。