019 - ゴブリン退治
そんなわけでなんとかカラジュームへとたどり着いた。
たどり着いていの一番にギルドへ行き、適当な依頼を探す事になる。
なにせ、金が無い。今後のことなんか考えると、ベリアの装備を整えるのが先決で、そうすると宿に泊まる金さえなくなってしまう。
「……まぁ、仕方ありませんよね」
武器屋で見繕った中古の弓を買って、ベリア用の武器とする。
一応ベリアが見繕った品で、中古と言う割には保存状態もよく、まだまだ現役で活躍できる品だったとか。
俺の武器は基本的に拳なので、剣でも無理なのに、ましてや弓なんて何が良くて何が悪いのなんて判断できない。
弓と一緒に矢も何本か買い入れ(思い切り値引きさせた)、店主ににこやかに礼を言って(顔色が悪かったような気がする)、ベリアの手を引いて店を後にした。
「ヤマトさん鬼畜ですね……」
「意味が分かんないよ。あと、鎧を着ているときはイーサンでお願い」
言いつつ、ベリアの服装も何とかせねばなるまい。
ベリアが今来ているのは、彼女が最初から来ていたドレスだ。上から俺の防寒用に買ったローブを着せてはいるが、正直戦いに向いている服装とは死んでも言えない。
「次はベリアの服だな」
「えっ!?」
「……選んでも良いが、素早く決めなかった場合、俺が適当に選んだものを買うからな?」
女は何時でも衣服を買うことに時間を掛ける。
何でそんなに時間を掛けたがるのかは知らないが、此方の世界でもその法則は適用されるのだろう。到着した古着屋の周りには、多くのご婦人方が居て。
……あの中に入っていくのかぁ。正直だるい。
「ベリア。銅貨十枚あげるから、適当に身軽そうな服装を買っておいで」
「え……ヤマ……イーサンさんは?」
うるうるうる、と。
子犬のような瞳で此方を見上げてくるベリア。
俺は別に良い人と言うわけではない。フェミニストでもなければ、晃のようなお人よし、と言うわけでもない。
だが、だがだ。此処でもし、少女の望みを断るのだとしたら。
例えば無理難題を言っている、と言うわけでもなければ、俺にとって大きな被害を出すわけでもなく、簡単にかなえてやれる願いなのだ。
そんな少女の願いを、此処で拒否できるだろうか。
否、出来まい。(反語)
「……わかった。付いていくから」
「わーい!」
喜ばれてしまった。
で、丈夫そうなズボンと上着を買ったベリアを着替えさせ、脱いだドレスを俺の闇の中へと格納する。
「……何でドレスなんて仕舞っておくんですか?」
「何だその変人を見る目は。後々要るだろう? カノンにたどり着いた後、そんな格好じゃ王宮なりなんなりに入れないだろ?」
おぉ、と頷くベリアの頭に拳骨一つ入れ、そのままギルドへ。
丁度具合の良いことに、魔物退治で報酬が出る依頼がいくつかあった。
その中で一つ。ゴブリン退治、と言うのがあって。
「なぁ、ベリア。ゴブリンってどんな魔物?」
「小型の妖精種の魔物ですね。人型ですが小柄で、緑っぽい変なのです」
「変なの……ねぇ。それって強い?」
「群れの相手は大変ですけど、固体の能力はそれほどもありません」
少なくとも私の弓なら一撃です、とベリア。
「宜しい。なら、この依頼を受けようか。場所はこの町の郊外って言うし」
「即殺ですね!!」
キラキラした表情で言うベリア。
なんていうか、やっぱりこの子武人だ。